共通テスト新科目 長い文&多くの資料「これは大変」
2025年からの大学入学共通テストの出題教科・科目の再編に伴い、初めて出題される「情報」「歴史総合」「地理総合」「公共」のサンプル問題が公表された。22年度の高1生(今の中2生)から順に実施される新学習指導要領に基づく内容で、今年1月に初めて実施された共通テストの各教科と同様に、複数の資料や会話文などを読ませたうえで解答させるものが目立った。 各科目で大問が2~3ずつ公表されたが、問題のページ数は歴史総合が17ページ、情報と地理総合が各18ページ、公共が26ページに上り、限られた時間内に多くの資料や文章を読みこなす必要がある。 歴史総合は、現在必修科目の世界史と選択科目の日本史を統合し、近現代史を重点的に学ぶ。サンプル問題では、東西冷戦時代初期の欧州や日本の状況を示す資料や会話文をもとに「自由」の解釈を問う問題や、オスマン帝国憲法と大日本帝国憲法、清でつくられた憲法原案の共通点や違いなどを問う問題があった。 選択科目だった地理は、22年度からは必修の地理総合となる。自然災害に対する備えと復興のあり方についての問題や、地域調査で得た景観写真や地図などの資料から「平成の大合併」の成果や課題を考える問題が出た。 公共では、合意形成のあり方について問う問題で、結論が一つではなく、正答が3パターンある出題もあった。 情報は、プログラミングやデータ活用を学ぶ「情報Ⅰ」が出題範囲となる。東日本大震災から10年の通信インフラの変遷や、比例代表選挙での議席獲得や議席配分のアルゴリズムのほか、散布図などを用いたサッカーチームのデータ分析など、高校生に身近なテーマも取り上げられた。(伊藤和行、三島あずさ、阿部朋美) 暗記は通用する? 高校の教員は サンプル問題を、各科目の教員らはどう見るのか。 「暗記中心の授業を変えてほしいという作問者の強いメッセージを感じた」。文科省の指定を受け、一足先に歴史総合の研究を進めている神戸大付属中等教育学校の矢景裕子教諭は、歴史総合についてそう話す。 サンプル問題の題材は2題とも歴史総合の授業だ。冷戦とは何だったか、自由とは何か、国民国家はどのように形成されるかといったテーマで、いずれも抽象度が高い。「用語を覚えるだけでなく、概念を理解して初めて答えられる」と矢景教諭。写真やグラフなどの資料が第1問で8点、第2問で7点あり、これらも読み込む必要がある。 「歴史を考える力は一部のエリート向けとの見方が現場にはあるが、本来どの子にも必要なもの。ふだんの授業で身につく。多くの高校生が受ける共通テストで出題される意味は大きい」 地理総合は、二つ目の大問で防災学習を取り上げた。水害時の避難について家族で話し合う場面が紹介され、状況によって適切な方法を判断できるかが問われた。同校の高木優教諭は「授業で学ぶだけでなく、地形や家族構成から最適な避難方法を実際に考えたり、家庭に持ち帰って話し合ったりするなど、学習を広げることが求められると感じた」と話す。 地理総合は、選択科目だった地理AやBと違い、必修となる。過去のセンター試験や共通テストの地理Bでは、大問全体で防災について問う問題はなかったといい、高木教諭は「全高校生が自分の命を守る学習ができたらいい、というメッセージでは」と分析する。 また、三つ目の大問は、地域調査についての出題だった。高木教諭は「フィールドワークの実践が解きやすさにつながる」とみる。コロナ禍でフィールドワークの時間を確保するのは難しい場合もあるが、ICT(情報通信技術)機器などを活用すれば対応可能だという。 試される「考える力」…