在日コリアンの生徒が通う東京朝鮮中高級学校の美術部員たちの姿を描いた連載「いま子どもたちは 等身大のキャンバス」を、3回掲載しました。連載で書き尽くせなかったことや、読者から寄せられた反響の一部を紹介します。(宮崎亮) いま子どもたちは:等身大のキャンバス【番外編】 10月下旬、初めての取材で学校を訪れた。美術室のドアをあけると、女子生徒が後ろに手を組んで立っている。それを囲み、5人の生徒たちが画用紙に向かって鉛筆を走らせていた。 拡大するクロッキーに取り組む東京朝鮮中高級学校の美術部員たち=2020年10月27日、東京都北区、宮崎亮撮影 やがて画用紙を床に置き、互いに講評する。校外では日本語を話す生徒たちも校内では朝鮮語が基本。しかし、こうした時間や雑談のとき、会話が盛り上がると日本語も混じる。 例えば日本語で取材に応じてくれた高級部3年の宋泰碩(ソン・テソ)さん(18)が、照れながら周りの後輩に言った。「ナァ(私)はこういう人間インミダ(です)なあ」。朝鮮語と日本語のミックス、いわば「在日語」だ。 拡大する各自が描いたクロッキーを互いに講評する東京朝鮮中高級学校の美術部員たち。写真奥中央は顧問の崔誠圭先生=2020年10月27日、東京都北区、宮崎亮撮影 部員の中高生9人の話を一人ずつ時間をかけて聞いた。作品の発想の面白さもさることながら、自らについて語る言葉の豊かさと的確さに驚かされた。 展示ごとに来場者にプレゼンを繰り返してきたのも理由の一つだろうが、それだけではないと感じた。 生徒たちは幼い頃から在日という自らのアイデンティティーと向き合ってきた。高級部1年の金秀龍(キン・スリョン)さん(16)はこう語った。「朝鮮人としての誇りを持って生きていこうとは強く思ってます。でもそれは自分の人生の舞台設定というだけで、自分は自分という人間として生まれた。これからも自分は自分として歩みたいです」 連載で描きたかったのは総体としての「朝鮮学校生」「在日」ではなく、生徒一人ひとりの物語だ。どんな漫画やアニメが好きで、何に悩み、どんな進路を考えているか。もちろんルーツのことも尋ねた。尹太吉(ユン・テギル)校長(62)も「美化したりせず、生徒たちのありのままの姿を書いてください」と声をかけてくれた。 投書「親しみ持つ人増えた」「知人が朝鮮学校に誤解」 【動画】「等身大のキャンバス」東京朝鮮中級学校美術部=宮崎亮撮影 多くの読者が朝日新聞や学校に、連載記事への感想を寄せてくれた。 週に1回、韓国語教室に通う女性(62)の朝日新聞への投書には「ヘイトスピーチの報道がある一方、韓国に親しみを持ち言葉を学ぶ若者・年配者が増えていると思います」「この親しみを持つ大勢の人たちがヘイト問題を粉砕する原動力になるのでは」とあった。…
3 ans Il y a