基地・工場・スタジアム 大規模工事現場を空から見ると

 賛否両論が渦巻く基地や駐屯地、世界で不足する半導体の製造工場、スタジアムを中心にした都市の再開発――。九州各地で進む大規模工事の現場を本社ヘリから撮影した。 鮮やかな青い海に浮かぶ鹿児島県西之表市の馬毛島(まげしま)。大型ロケット打ち上げで知られる種子島の12キロ西に位置し、面積は福岡ペイペイドーム118個分にあたる817ヘクタール。1月、米軍機訓練移転に伴う自衛隊基地建設工事が始まった。森林の大規模な伐採現場や多数の大型重機、仮設桟橋が3カ所確認できた。整備後は、陸海空自衛隊の訓練・活動、米空母艦載機着陸訓練(FCLP)などが想定されている。勤務する自衛隊員は、150~200人程度を見込んでいるという。 佐賀市の佐賀空港西側では6月、約34・1ヘクタールの造成工事が始まった。陸上自衛隊オスプレイ配備のための新駐屯地建設だ。計画では、木更津駐屯地(千葉県)からオスプレイ17機(現在14機暫定配備中)を移駐させ、目達原(めたばる)駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)のヘリコプター約50機も移す予定だ。 熊本県菊陽町では、半導体の受託生産で世界最大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の工場建設が進む。2024年末までの生産開始を目指す。金融機関の九州フィナンシャルグループは、22年からの10年間で「熊本県内への経済波及効果は約6兆8500億円。関連企業約90社が進出し、1万人を超す雇用が見込まれる」と試算を発表している。 長崎市では、サッカーJ2「V・ファーレン長崎」の新本拠地が24年秋の完成を予定している。通販大手ジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)が計画する「長崎スタジアムシティ」は、約7・5ヘクタールの三菱重工業造船所工場跡に総事業費800億~900億円を投じてつくる大型複合施設。サッカースタジアムを中心にアリーナ・オフィス・商業施設・ホテルなどの周辺施設からなる。JR長崎駅から徒歩約10分の立地で、市中心部のにぎわいを創出することになりそうだ。(日吉健吾)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

包帯だらけの姿で亡くなった娘 ひき逃げ死亡事件解決、遺族の10年

 千葉市花見川区で2013年11月に発生した死亡ひき逃げ事件で、千葉県警は公訴時効が約1カ月後に迫った28日、自動車運転過失致死の疑いで、容疑者の男を逮捕した。 「捕まったよ」――。事件で、一人娘だった長女の舘下敬子さん(当時47)を亡くした父の明彦さん(88)は、逮捕の一報を敬子さんの遺影の前で手を合わせ、報告した。今も、遺骨は納骨していない。 10年前の11月5日。敬子さんはいつも通り、午前7時過ぎに会社へ出勤するため、原付きバイクに乗って家を出た。日ごろは家族に帰宅時間を伝えていたが、支度に追われ、その日に限って明彦さんと妻に何も言わなかった。親子で十分に話ができなかった。 その夜、敬子さんは午後8時を過ぎても帰らなかった。携帯電話にかけても応答はない。夫婦で気をもんでいると、午後10時過ぎに病院から電話があった。「起きろ、起きろ」 娘の腕を握りしめて呼びかけたが 「娘さんが交通事故に遭って…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

北の主峰旭岳、初冠雪はいつ?135年の記録から見えた地球の変化

 「北海道の屋根」といわれる大雪山系。例年なら主峰旭岳(2291メートル)が初冠雪を迎える時期だが、まだ紅葉も見ごろになっていない。「異変」は夏の猛暑の影響なのか、それとも……。インターネットでは公開されていない135年に及ぶ観測記録を取り寄せた。 旭川地方気象台が旭岳の初冠雪の観測を始めたのは1888(明治21)年。初冠雪は夏以降、初めて山頂や中腹が雪で白く覆われた日のことで、旭川地方気象台からの目視観測が条件だ。気象条件が悪くて目視での観測ができなかった3回の「欠測」を除き、昨年まで132回観測できた。135年で初冠雪の時期は変わった? この観測記録をグラフにして…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

旅するはなちゃんのランドセル 「奇跡的」と添えた娘待つ母の思い

 「行ってきます」と家を出て行った娘の声が忘れられないまま、12年半が過ぎた。手元に残るのは赤いランドセルだけ。今も行方を捜し続ける両親にとって、本人を思い起こす唯一の品だ。それでも「旅」に出すことを決めた。どうしても伝えたい思いを添えて――。 展示室のガラスケースに、赤い布製のランドセルが広げられている。一部すり切れたところがあるものの、色は鮮やかなまま。泥水につかったからだろうか。一緒に収められているノートや教科書の表紙は波打ち、少し茶ばんでいる。 そばにある音読の宿題カードには3月10日の分まで花丸がついている。空欄のままの22日には、日付に赤く太い丸印。「やっと10歳になれる」と待ちわびていた誕生日だった。「お兄ちゃんと同じがいい」 持ち主は、宮城県石巻市にあった旧大川小学校4年の鈴木巴那(はな)さん。入学前、「お兄ちゃんと同じものがいい」と選んだランドセルだ。 筆入れやノートを入れる順番…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

校庭の芝生化、再び機運は高まるか かつてはサッカーきっかけに拡大

データで読む東京都の教育⑩ フランスで開催中のラグビーW杯では、選手たちが青々とした芝生の上で躍動しています。日本では1970年代以降、校庭の芝生化の動きがたびたび起きましたが、東京では現在も続いています。日本芝草学会の理事で、日本大学生物資源科学部講師の藤崎健一郎さん(造園緑地学)に、校庭芝生化の利点や課題を聞きました。   ◇ 国民が環境問題を意識するようになった1970年代、文部省(当時)が学校の緑化促進事業を始め、東京都も公立小中高校の校庭面積の半分を芝生化する計画を進めました。しかし、都では計画開始から少し経ったころ、「芝生の養生のために校庭を使えない」という高校生の新聞投書の影響もあり中断されました。 その後、しばらく低迷していましたが、93年のJリーグ開幕や2002年のサッカーW杯日韓大会の頃から、芝生が再び注目されるようになりました。文部科学省が「屋外教育環境整備事業」を進め、再び校庭の芝生化が広がり始めました。 東京では07年に「緑の東京10年プロジェクト」が始まり、校庭の芝生化が拡大。芝生化事業は現在も続いています。 課題はあります。地域住民や…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

良い就職、地位、虚栄心…縛られた親が生む教育虐待 「叱る依存」も

 佐賀県鳥栖市の住宅で夫婦が殺害された事件で殺人罪に問われ、佐賀地裁の裁判員裁判で懲役24年の判決を受けた元九州大生の長男(19)は、小学生のころから教育を巡り、叱責(しっせき)や暴力といった「教育虐待」を受け続け、復讐(ふくしゅう)心から殺意を抱くようになったことが公判で明らかになった。虐待の背景には何があるのか、教育虐待という言葉を学会で初めて発表した一般社団法人ジェイス代表理事で臨床心理士の武田信子さん(61)に聞いた。 ――「教育虐待」とは。 「親による『子どもの心身が耐えられる限界を超えた教育の強制』を特に狭義の教育虐待と呼び、教育ネグレクトと合わせて、広義の教育虐待と呼びます。教育を名目に、子どもが耐えられない傷を心身に与える、親によるひどい扱いのことです。今回の事件は、子どもが追い詰められて心身ともに限度を超えてしまい、自分がやられるか相手をやるか、どちらかになってしまった。教育虐待と言えます」 ――教育虐待はなぜ起きるのでしょうか。 「価値観と将来への不安が背…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

神宮外苑再開発、年内の高木伐採は断念 事業者、イコモスには反論

 多数の樹木伐採が批判されている明治神宮外苑地区(東京都)の再開発について、事業者側が29日、高さ3メートル以上の木の伐採が年明け以降となる見通しを示した。当初は9月中にも開始予定だったが、より具体的な樹木保全策を伐採開始前に示すよう都に求められ、時期が後ろ倒しとなった。 再開発に関わる4事業者のうち、代表施行者の三井不動産が明らかにした。事業者側は再開発の環境影響評価書に「伐採を可能な限り回避し、保存や移植を検討」としていたが、具体策がないとして都が今月、伐採開始前の提示を求めていた。 同社によると、伐採や移植の本数見直しを検討し、具体策を示すのが年末から年明けとなる見込み。都の環境影響評価審議会に変更を報告した後で伐採を始める。再開発全体の日程への影響は「検討中」という。 再開発は、神宮球場や秩父宮ラグビー場を建て替えたり、超高層ビル2棟を新築したりするもの。837本を植樹する一方、高さ3メートル以上の木700本以上を伐採する計画に対し、環境破壊や景観悪化などを懸念する声が強まっている。 一方、同社は29日、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関「イコモス」が再開発撤回を求めた文書に対し、「事実からかけ離れており、誤解を生みかねない」と反論する見解を示した。イコモスが再開発を「都市の森を完全に破壊する」とした点に対し、「『森』と称される場所はわずか」「移植や新たな植樹で樹林を復元する」という趣旨を主張するなどしている。(伊藤あずさ)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

コールセンター業務費を過大請求、近ツー支店元社員が起訴内容認める

 静岡県掛川市と焼津市から受託した新型コロナウイルスワクチン接種のコールセンター業務委託費を過大請求したとして、詐欺罪に問われた近畿日本ツーリスト静岡支店の元社員大久保功被告(58)の初公判が29日、大阪地裁であった。大久保被告は「間違いございません」と起訴内容を認め、弁護側も争わない姿勢を示した。 検察側の冒頭陳述などによると、同支店は2021年3月~23年3月、両市のコールセンター業務の委託を受けた。大久保被告はオペレーターの稼働人数を実際より多く申告したほか、業務の一部を行わなかったのに、行ったと虚偽の報告をし、両市から業務委託費計約2億2400万円をだまし取ったとされる。うち約5280万円が過大請求分だったという。 検察側は同社では「顧客に水増し請求する不正が横行していた」と指摘。大久保被告は過大請求による売り上げ増が評価され、給与が増額したと主張した。 事件を巡っては、同社の親会社のKNT―CTホールディングスは20日、調査を続けた結果、同様の虚偽申告が最大37自治体に行われた疑いがあり、過大請求額は最大で計約7億円に上ると発表した。(堀之内健史)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

佐伯啓思さんが考える災害への備え 「覚悟あるあきらめ」こそ必要

佐伯啓思の異論のススメ・スペシャル この9月1日は関東大震災から100年であった。この日、私はちょうど岩手県の三陸海岸のある小さな町にいた。津波にのみ込まれ一瞬で消失した町だった。あれから12年半がたつ。防潮堤ができ、広い道路が整備され、きれいな宅地も広がっている。だが残念なことにそこに住んでいる人はほとんどいない。だだっ広い空間の中に道の駅だけがたたずんでいる。 その場所だけみれば、新興住宅地の計画が始動しているのかと思ってしまいそうだ。しかし、12年前のあの悲劇を思えば、いささか複雑な心境になる。復興とは何なのかと思ってしまう。 私のように関西在住の者は、人々が戻り、町が少しずつ昔の様子を取り戻すことが復興だとつい気楽に考えてしまう。だが、すべてを失った当事者からすれば、何が復興なのであろうか。復興はむろん復古ではない。この場所を捨ててやり直すという決断もあるだろう。正解など何もないのだろう。 いうまでもなく、日本は世界でもまれな地震大国である。今後、南海、東海、それに首都圏で大地が鳴動する可能性はきわめて高い。とりわけ首都圏大地震が襲いかかれば、想像を絶する事態になる。しかし、30年以内の首都圏大地震の確率70%などといいながら、政府の対策も形だけのものにしかみえず、われわれも、巨大地震の接近をできるだけ頭から追い払おうとしている。 確かに、行政的にも個人的にもやれる対策はしれており、みもふたもない言い方をすれば、「きたらきたで仕方ないではないか」ということになるのであろう。首都機能の移転、人口過密地区の人口分散、ビルの建て替え、巨大な防潮堤の建設など、本気でやるべきことはいくらでもあるが、それだけの財政的余裕もなく、法的整備も困難だとなれば、それぞれが、自分で身を守る方策を考えておくほかない。確かに、「きたら仕方ない」という割り切りも、それこそ仕方ないのかとも思う。 この「シカタナイ」が、ある覚悟を伴ったあきらめなのか、それとも単なる思考停止の口実なのかとなると、実はよくわからない。 そこでどうせ「シカタナイ」…この記事は有料記事です。残り2869文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

神宮外苑再開発、「森」巡り応酬 イコモスのアラートに事業者が反論

 明治神宮外苑地区(東京都)の再開発撤回を求める国際機関の主張に対し、事業者側が29日、「事実とかけ離れている」などと反論する見解を示した。国際機関が「貴重な都市の森」と位置づけたのに対し、事業者側は「『森』はわずか」と主張。立場の違いが鮮明となった。 再開発は、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を変えて建て替え、超高層ビル2棟も新築する計画。837本を植樹する一方、700本以上の高木の伐採を予定しており、環境破壊などと批判が広がっている。 再開発撤回を求めているのは、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関のイコモス(国際記念物遺跡会議)。今月7日、危機的状況にある文化遺産を守る目的で発出する「ヘリテージアラート」を出した。神宮外苑を「世界の都市公園の歴史の中でも傑出した例」と評価し、「過去100年にわたって形成され、育まれてきた都市の森を完全に破壊することにつながる」と指摘した。 一方、事業者側は29日に示した見解で、「神宮内苑の大きな森と異なり、外苑の計画エリアで一部の方々から『森』と称される場所は建国記念文庫の敷地のみ」と指摘。面積は再開発計画全体の約1・7%で、その樹木の多くを保存・移植すると説明した。イコモスのアラートの内容について「一方的に発信されている」とした。イコモス側の代替案「実現性は限りなく低い」 イコモスが影響を危惧するイ…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル