家族にも言えない秘密を抱えて生きる私 一度は捨てたコーランを手に

 休日。カバンの奥底に1枚のスカーフをこっそりと入れて家を出る。 少しだけ早足で向かう先は、駅やコンビニのトイレだ。人目を忍んで個室にこもり、鍵を閉める。 スカーフを頭に巻き付ける。恐る恐る扉を開け、少しだけ晴れ晴れとした気持ちで、トイレを後にする。 さあ、今日はどこに出かけようか。雑踏の中なら目立つことはないだろう。 でも、スカーフを巻かない日も、心の中では常に身にまとっているのだ。 近畿地方に住む女性は、そんな生活を続けてもう3年以上経つ。 一緒に暮らす両親に隠している秘密がある。その秘密を伝えられる日は、いつになったら来るのだろう。ひっそりと手にしたコーラン 中学1年のころだった。世界史の資料集で、聖地のカーバ神殿をはじめとするイスラムの文化が紹介されていた。 世界三大宗教の一つ、イスラム教。世界の人口の4分の1はムスリム(イスラム教徒)と言われています。日本でも年々増え、研究者は「婚姻に伴うもののほか、自ら入信する日本人も増加しているようだ」と話します。日本で生まれ育ち、ムスリムとして生きることを選んだ日本人を取材しました。 女性は髪の毛を隠す布「ヒジャブ」を身につけ、男性は全身を白い布に包まれている。 「かっこいい」 直感的に思った。 そんなムスリムのファッションや中東の文化、建物への憧れからイスラム教に興味を持ち始めた。 お小遣いをためて、日本語版のコーランを買った。コーランはイスラム教の聖典だ。独学でアラビア語も勉強した。 でも、家族に知られてはいけ…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「お客さんが師匠」世界2位のピザ職人、ナポリで教わった上達の極意

 あなたの師匠は僕じゃなくお客さんだ――。岐阜市河渡のイタリア料理店「ピッツェリア・スパーダ」のオーナーシェフ白木健さん(44)は、ナポリでの修業時代にかけられた言葉を今も覚えている。コロナ禍で売り上げは減った。それでもピザを焼かせてもらえることに感謝し、売り上げの一部を福祉施設に届ける。 岐阜市出身の白木さんは大阪の大学へ進学し、商社への就職が内定していた。しかし、大学4年の夏休み、兄が働いていた岐阜市のイタリア料理店で、フライパンを振るシェフの立ち姿にあこがれた。 飲食店で働いた経験はなかったが、その店で2カ月ほどアルバイトをした。「もともと就職には迷いがあった」という白木さんは、内定先に辞退の連絡を入れて、料理人の道へ。岐阜市内のカフェやイタリア料理店で働きながら、独立に必要な資金と技術を磨いた。挑戦10年、やっと表彰台に 27歳で隣の岐阜県本巣市に…この記事は有料記事です。残り828文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

マスク無し生活へ、笑顔レッスン 5類移行で関心高まる

 新型コロナウイルスの感染症法上の分類の「5類」への引き下げを前に、東京・赤羽で7日、笑顔レッスンが開かれた。参加者はそれぞれ手鏡をのぞき込み、口角を上げてつくった自身の笑顔を確認していた。 「マスク生活で笑顔をつくる機会が減り、コンプレックスを抱える人が増えた。表情筋を動かし、ほぐすことが良い笑顔をつくるコツ」と、講師を務めた笑顔トレーナーの川野恵子さん(49)。 昨年末から個人レッスンの依頼が目立ち始め、5類移行の報道が増えた今年2月以降は前年比4・5倍の依頼があったという。 川野さんは「笑顔は相手への…この記事は有料記事です。残り306文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「バスが遅い」 乗客から苦情受けても「40キロルール」徹底の理由

有料記事板倉大地 榎本瑞希2023年5月8日 7時00分 「朝の時間は貴重なんだよ!」 通勤客らで混雑する北九州市の路線バス。ある運転手は、降車する客からこんな言葉を投げつけられた。 料金を支払うIC読み取り機に、わざと大きな音を立ててカードをたたき付ける客もいた。 こんなことが目立つようになったのは、2021年夏ごろからという。乗客がいら立つ理由を、運転手はこう考えている。 「バスをゆっくり走らせ過ぎているからだ」 「西鉄バス北九州」は、北九州市内で44の一般路線を運行する。21年夏に起きた死亡事故をきっかけに、バスを「ゆっくり」走らせる社内ルールを定めた。「たとえ制限速度が40キロ超の道路でも、原則40キロ以下で走行する」というものだ。 社内ルールとして、バスの運行速度を一律に定めているのは、全国でも珍しい。東京都営バスや近鉄バスといった大手バス事業者も「聞いたことがない」という。 北九州市内のバス路線はもと…この記事は有料記事です。残り822文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

転倒女性助け、つながる心と一歩 サッカー鈴鹿PGの若手選手2人

 サッカー日本フットボールリーグ(JFL)の鈴鹿ポイントゲッターズ(PG)の若手選手2人が、三重県鈴鹿市内の路上で転倒してけがをした高齢者を助けた。それから、お礼の手紙が届くなど交流が続いている。昨季は不祥事が相次いだクラブだが、「信頼を取り戻す小さな一歩になれば」と関係者はいう。 鈴鹿市内で3月28日の午前中にあったクラブの練習後、今季加入したDF石川竣祐(しゅんすけ)選手(22)とMF小野寺亮太選手(23)は、車で帰宅する途中、市内の旧跡・加和良神社の近くを通りかかった。 そのとき、人が木の根につまずいて転び、顔を地面に打つのが見えた。救急車を呼ぶべきか――。車を止め、2人は慌てて「大丈夫ですか」と駆け寄った。転んだのは鈴鹿市江島本町に住む吉村早苗さん(70)。2人は吉村さんの友人らに頼まれ、約3・5キロ離れた吉村さんの自宅まで車で送り届けた。吉村さんは、あごと右腕にけがをした。 別れ際、名前をたずねる吉村さんに、2人は「鈴鹿PGの選手です」と自己紹介した。翌週、吉村さんはクラブの事務所を訪れ、お礼の手紙とお菓子を届けた。手紙には「感謝しています。ポイントゲッターズ頑張ってください。応援します」と書かれていた。 思いがけない形でサポーターになってくれた――。石川選手は「大学時代はコロナ禍でずっと無観客だったので、地元の人と直接ふれ合えたのがうれしい」と振り返る。 鈴鹿PGは、元日本代表FWで常に脚光を浴びる存在だった三浦知良選手(56)が今季開幕前に退団。今季は平均年齢25歳と若返ったチームで臨み、リーグ戦は3勝2敗2分けで、15チーム中5位(第7節終了時点)。小野寺選手は「ボールを支配して主導権を握る、目標の『JFLで一番面白いサッカー』に近づいている」と手応えを語る。 クラブでは、ピッチ外での信頼回復も急務になっている。昨季は八百長未遂や監督の暴力行為など不祥事が相次いで発覚。クラブ側の資金で市内に建設をめざしていたスタジアム計画も頓挫した。 信頼回復の途上で起きた選手による救助劇。2月に就任した渡辺淳社長は「こうした交流を通して一日でも早く信頼を取り戻し、地域とともに歩むクラブに生まれ変われれば」と話す。 4月下旬、石川、小野寺の両選手が、吉村さんの家族が経営する電器店を訪ねると、すっかり元気になった吉村さんがいた。そして、店内にはチームのポスターが貼られていた。 「もっと若い子だったら助けたかいがあったのにね」と吉村さんから冗談を言われ、はにかんだ2人。 石川選手は「ファンと選手の距離が近い鈴鹿でプレーできてよかった」。小野寺選手は「より多くの人に試合に来てもらい、喜びや悔しさなど様々な感情を共有したい」と話していた。(松原央)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

家事・育児、父の6割「もっとやりたい」けど… 参加阻む事情は?

 家事・育児を「もっとやってほしい」母親は7割超で、もっと「参加したい」父親も6割超――。そんな現状が、東京都の調査で判明した。一見、望みは一致しているように見える。では、父親の育児参加を阻むものは何なのか。別の質問への回答から、様々な事情が浮かんできた。 都は4月末、子育て状況や生活実態を調べる2022年度の基礎調査「東京の子供と家庭」の結果(速報)を公表した。1984年度から5年ごとに実施しており、今回は子どもがいる6千世帯1万800人が対象。3013世帯5202人から回答を得た。 現状の家事・育児分担は、父母ともに「父2:母8」と答えた割合が最高だった。ただ、理想の分担を尋ねると、父の41・4%、母の35・8%が「自分5:配偶者5」と答えた。 家事・育児について、母の71・5%は「配偶者にもっとやってほしい」、父の63・2%が「もっとやりたい」と回答した。 父に「どうすればもっと参加できるか」(複数回答可)を尋ねると、「勤務時間を短縮できれば」が61・4%で最も高かった。母に「どうすればもっと参加してもらえるか」(同)聞くと、「配偶者自身の意識が変われば」との回答が52・0%で最高だった。「配偶者の勤務時間が短縮できれば」は46・3%。母側が父に、「意識の変化」も求めていることがうかがえる。 また、「子育てのために勤務…この記事は有料記事です。残り425文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

港区が「子育て送迎ルート」 子乗せ自転車用レーンや案内サイン設置

 東京都港区は、区内の幼稚園や保育園に通じる道路を「子育て送迎ルート」と名付け、自転車やベビーカーが安全に通行できるよう整備に取りかかる。車道上に自転車の走行ゾーンなどを明示するとともに、子どもの送迎に利用される道路だということを知らせる独自の案内サインを設置する。こうした取り組みは23区で初めてという。 自転車の利用について、港区は区内を快適に行き来できるよう、2013年に「自転車利用環境整備方針」を策定。国道や都道に加え、区道の総延長約50キロメートルを「自転車ネットワーク」とし、自転車専用通行帯を整備したり、走行場所を明示する「自転車ナビマーク」を設けたりしてきた。 今回、改めて区が「子育て送迎ルート」として整備するのは、幼稚園や保育園などの子育て施設に通じる道路のうち、幅が狭いなどの理由で、自転車ネットワークから外れている道路。45カ所、計約12キロメートルが対象となる。 整備では、自転車は車道の左…この記事は有料記事です。残り286文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

消印は1977年、15歳だった私の3千円がもたらした思わぬ宝物

 「銀曜日のおとぎばなし」「小麦畑の三等星」などの漫画作品で知られる萩岩睦美さん(61)。 16歳だった1978年に集英社の漫画雑誌「りぼん」でデビューし、今年で画業45周年を迎える。 昨年末に大掃除をしていた時、色あせた茶色の現金書留封筒を発見した。 王貞治さんのサインなどと一緒に宝物箱に入れていたのに、いつの間にかなくなっていた封筒。 普段は開けない戸棚の奥、レターセットなどを入れたプラスチックのカゴの中にあった。 どうやら、結婚して実家から引っ越した際に紛れ込み、そのままになっていたようだ。 「えーっ、こんなとこに? なくしてなくてよかった!」 消印は1977年。数十年ぶりに親友と出会ったような喜びを感じた。 中に入っていたのは、伊藤博文の千円札3枚と明細書。 差出人は「東京都千代田区一…この記事は有料記事です。残り2184文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

10年後、桜の下で 元野球少年がタイムカプセルで見つけたものは

【動画】10年前のタイムカプセルを開封した元野球少年たち=矢木隆晴撮影 まだソメイヨシノの花がつぼみだった3月中旬。かつて野球少年だった青年たちが「じいちゃんの桜」と呼ばれる、1本の桜の木の周りに集まった。 10年前、ある野球チームの小学生たちは自分あてのメッセージを書いて、その木の下にタイムカプセルを埋めた。10年後、大きくなったら桜の下で再会して、みんなでそれを開けようと約束した。 そして、約束の日はやってきたが、そこに「じいちゃん」の姿はなかった。     ◇ 大阪府南部に位置する日本最古のため池といわれる狭山池(大阪狭山市)。周囲には遊歩道が整備され、春にはユキヤナギや桜が見事に花を咲かせる。府立狭山池博物館が隣接し、歴史を伝えるとともに、地域の憩いの場となっている。(桜ものがたり2018)「じいちゃんの桜 再会待つタイムカプセル」私は2018年3月にこの桜について「じいちゃんの桜 再会待つタイムカプセル」として記事を書きました。10年後に開封するとなると今年にあたるのではと、冬ごろから気になっていました。するとある日、携帯電話に着信。じいちゃんの妻、悦子さんからでした。「お久しぶりです。3月にタイムカプセルを開封します」。私は狭山池を再訪することにしました。 「よし、いい球」「うまくな…この記事は有料記事です。残り2066文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

空の写真を毎日投稿、気象庁の「雲研究者」 事故遺族の思いも込めて

 「雲や気象を楽しむことが、防災につながる」 荒木健太郎さん(38)は、「雲研究者」を名乗り、気象庁気象研究所の主任研究官として、雲や気象の研究を続けながら、防災意識を高める活動に力を入れてきた。 茨城県牛久市出身。著書の児童書「すごすぎる天気の図鑑」シリーズ(KADOKAWA)は、累計40万部を突破。2019年公開の映画「天気の子」では、雲の形や雨粒の動きなどの気象を監修した。 「でも、小さいころから空を…この記事は有料記事です。残り954文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 Source : 社会 - 朝日新聞デジタル