高層住宅の窓やベランダから子どもが転落する事故が相次いでいます。痛ましい事故を防ぐためにはどうしたらいいのでしょうか。子どもの事故予防に関する情報発信を続けるNPO法人「Safe Kids Japan(セーフキッズジャパン)」の理事で、ベランダの安全対策の研究に取り組む大野美喜子さんに話を聞きました。おおの・みきこ AI(人工知能)を用いた傷害予防教育プログラムの研究などに携わる。子どもの事故予防に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan」理事としても活動。転落、春と秋に多発――幼い子どもが窓やベランダなどから転落して亡くなる事故が相次いでいます。 毎年、春や秋にはこうした事故が多くなる傾向があります。気候もよく、窓をあけて換気をする家庭が増えるのも一因でしょう。 東京消防庁の統計(稲城市、島しょ地区を除く)でも、毎年5月がもっとも転落の事例が多く、次いで10月に多くなる傾向がみられます。 一方で、転落事故の件数そのものについては、経年でみても大きな差がないことがわかります。東京消防庁管内で、2017~21年に住宅などの窓やベランダからの転落で救急搬送された5歳以下の子どもは62人ですが、年ごとの差はあまり大きくありません。 これは、いままでの転落対策では事故が防げないことも意味しています。事故が起こるたびに報道されますが、また事故が繰り返されてしまうのではないか、と感じています。 「対策」として出されるメッセージにも、課題が大きいのです。記事の後半では、1970年代のニューヨークで始まった、高層階からの子どもの転落事故防止のため、動き出した社会の仕組みについてを紹介しています。変わるのは、保護者だけじゃない――課題になっているのは、具体的にどのような部分でしょうか。 事故予防のためには、保護者への啓発などの「教育」、事故の起きにくい仕組みを作る「環境改善」、予防の取り組みを義務づける「法制化」と、三つの観点が必要になってきます。 ただ、いま「対策」とされているものの多くは、教育の観点から、保護者の行動変容に頼るものがほとんどです。 「目を離さないように」 「ベランダにものを置かないように」 「鍵を二重に」と、全てが保護者の責任なのです。 もちろん、子どもを見守る責任が保護者にあることはいうまでもありません。 しかし、保護者へ対策を呼びかけるだけでは、事故を防ぎ切れていない事実をどう見るか。そう考えたとき、別のアプローチが必要になってくるはずです。 保護者にばかり対策を求めるようでは、これまでと変わらないのです。意識と行動、どうつなげる?――保護者以外に向けた対策として、取り得る行動はあるのでしょうか。 例えば、補助錠の存在について考えてみましょう。事故予防のためには「必要だ」と感じている人が大半だと思います。 ただ、「必要だ」と思うことと、「実際に対策をすること」は別物です。 「明日、対策をしよう」と思っている間に、事故につながってしまうケースもゼロではありません。保護者任せにせず、行政や不動産業者による「もうひと押し」があると、だいぶ違う、と思います。 補助錠を配ったり、新築時に補助錠の設置を選べるようにしたり。新築の住宅を建築する際、鍵の高さそのものを高い位置にすることもできるでしょう。環境づくりで変えられることは多いはずです。 実際、米ニューヨークで半世紀ほど前、子どもの転落問題が社会問題化し、行政が動いたケースが知られています。――どのようなものでしょうか。 1970年代、ニューヨークで窓から子どもが落下する事故が相次ぎ、「Children can’t fly」(子どもは、空を飛べない)というプログラムが始まりました。 メディアが危険性を発信して…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル
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