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「絵は人生の救いの神」戦中に弾圧された男性、100歳の記念展

本田大次郎2021年11月3日 14時30分 海辺で朽ちる廃船、陽光浴びるヨーロッパの街並み――。今月100歳を迎える北海道旭川市の菱谷良一さんの作品展が2日、旭川市民文化会館で始まった。会場の一角で見る人に強く問いかけるのは「赤い帽子の自画像」。戦中の思想弾圧事件「生活図画事件」で投獄され、保釈後に描かれた作品だ。理不尽な逮捕から80年。「でも、絵は人生の救いの神だった」 菱谷さんは、1941(昭和16)年、旭川師範学校(現・北海道教育大旭川校)の学生だった時、身に覚えのない治安維持法違反容疑で逮捕された。所属する美術部は生活のありのままの姿を描く「生活図画」に取り組んでおり、それが共産主義思想と強引に結びつけられた。1年3カ月間、投獄され、42年の12月末に保釈。直後に描いたのが「赤い帽子の自画像」だった。 「不当な逮捕への怒りがあった。帽子は妹のもの。共産主義を意味する『アカ』の色の帽子をかぶり、精いっぱいの皮肉を込めた」 戦後は日々の生活に追われ、絵筆から遠ざかった。しかし定年後、妻に誘われ、公民館の絵画教室に通うようになると、「焼けぼっくいに火がついた」。自宅にアトリエをつくり、絵に没頭した。最初にひかれたのは、廃船や廃屋。「滅び行くものに、愛着があった」。旅行も好きで、海外へ出かけては、各地の風景も描くようになった。 絵を通して、人とのつながりも増えていった。「百歳記念作品展」は、そんなつながりのある人たちが実行委員会を作って、開催してくれた。会場にある約80点の多くは、自宅倉庫で長らく眠っていた作品。久々に囲まれ「『おやじ、まだもう少し頑張れ』って、絵に言われているような気がする」と笑う。 「絵を描いたことがきっかけで投獄されたが、絵を描くことは私の生きがい。人生の救いの神だった」。会場を訪れる知人たちに、とびっきりの笑顔をみせていた。 「百歳記念作品展」は7日まで。(本田大次郎)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

貨物船とさんご漁の漁船が衝突、乗組員1人が死亡 高知・室戸岬沖

2021年11月3日 10時56分 3日午前5時50分ごろ、高知県室戸市の室戸岬沖の南約10キロの海上で、セメントを運搬する貨物船「碧南丸(へきなんまる)」(1989トン、乗組員11人)から「漁船と衝突した。付近が暗く詳細がわからない」と118番通報があった。高知海上保安部によると、漁船は転覆し、1人が死亡した。 同保安部によると、衝突したのは地元のさんご漁の漁船「神龍丸(しんりゅうまる)」(4・9トン、乗組員2人)。近くの漁船などが神龍丸の2人を救助し、2人は病院に搬送された。船内に取り残されていた1人は死亡し、転覆した船底上にいたもう1人は意識はあるという。貨物船の乗組員にはけがはないという。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

青い池、ライトアップ始まる 幻想的な光景が浮かぶ 北海道美瑛町

井上潜2021年11月3日 11時00分 北海道美瑛町の「青い池」でライトアップが始まった。淡い青色の水面に美しい光景が浮かび上がり、訪れた人たちを楽しませている。 近くを流れる美瑛川に堤防を築く工事の際、水がたまってできたという青い池。アルミニウム成分などを含む上流の川の水が混ざり合うことで、光を反射して青く見えるとされる。 ライトアップは1日から始まった。大型の照明で角度や光の強さを変えながら池を照らすと、立ち枯れのシラカバや、わずかに葉を残した広葉樹などが青い水面に浮かび、幻想的な世界が広がる。来年4月30日まで(午後9時終了)。(井上潜)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「鉄板張り」の福山城、一足先にせんべいで 地元の女子中学生が考案

佐藤英法2021年11月3日 11時00分 広島県福山市の福山城にちなんだ「鉄板張りせんべい」(税込み780円)を地元の中学3年生、中島美晴(みはる)さん(14)が考えた。父親の基晴(もとはる)さん(54)が営む福山市内の物産会社などで11月から販売を始めた。 福山城は江戸時代初期の1622年に建てられた。天守の北側のみが黒っぽい鉄板張りという全国でも珍しい構造だった。この天守は太平洋戦争末期の1945年8月8日の福山空襲で焼失した。 現在の天守は戦後の66年に鉄骨鉄筋コンクリート造りで再建された。福山市は2022年の築城400年に向け、天守北側を往年の鉄板張りに復元する工事などを進めている。 美晴さんは中学2年のとき、総合学習の授業で「福山城築城400年記念事業」について発表した。「私自身がどういう形でかかわれるか、考えていこうと思う」とクラスメートの前で話した。 今年春ごろ、天守に張られていたとみられる鉄板が、保管していた市民から市に寄贈された。そのニュースを知った美晴さんは鉄の硬さから、せんべいを連想したという。市が天守の改修費の寄付を募っていたことから、「お城のためにせんべいを商品化して売り上げの一部を寄付しよう」と考えた。父の基晴さんにも相談した。 専門店と一緒に半年ほどかけて試作を重ね、落花生入りの小麦粉でつくった「鉄板張りせんべい」が完成した。縦約20センチ、横約10センチの2枚入りだ。地元産のノリを使って鉄板のように黒く仕上げている。 福山城は来年3月までに天守外観などの改修を終える予定だ。美晴さんは「鉄板張り工事のことを多くの人に知ってもらいたい。400個は売ります。おいしさは鉄板です」。 「ぬまくま夢工房」(084・922・4870)でインターネット通販もしている。(佐藤英法)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

夫婦同姓「合憲」の4人に厳しい目 最高裁裁判官の国民審査

 10月31日に行われた国民審査で、最高裁裁判官をやめさせるべきだとした「罷免(ひめん)票」は、夫婦別姓を認めない民法規定を合憲とした4人の裁判官に多く集まった。その傾向は都市部ほど強かった。選択的夫婦別姓の導入を求める市民団体がSNSで罷免を呼びかけたことなどが背景にあるとみられる。 国民審査はやめさせたい裁判官に×印を付け、有効票の半数を超えると解職される仕組み。今回対象となった11人のうち、罷免率が7%を超えたのは深山(みやま)卓也氏(67)、林道晴氏(64)、岡村和美氏(63)、長嶺安政氏(67)の4人で、罷免票数は約415万~449万票。いずれも6月の最高裁決定で夫婦同姓を「合憲」と判断していた。 人口500万人以上の9都道府県の結果を朝日新聞が集計したところ、4人の罷免率だけが8%を上回った。人口の多い都市部では4人の罷免率が高い傾向がうかがえ、東京都の結果に限ると4人とも10%を超えて、最も高かった林氏は11・70%だった。裁判官ごとの罷免率の差、史上2番目の大きさ 罷免率の高い人と低い人の差も顕著だった。全国集計で罷免率が最も高い深山氏の7・85%に対し、最も低い安浪亮介氏(64)は5・97%。約1・88ポイント(約108万票)の差があり、戦後の審査で最も差が大きかった72年の3・75ポイントに次ぐ2番目だった。72年審査では、沖縄返還をめぐる外交官時代の保守的な発言が問題になった下田武三氏の罷免運動が起き、下田氏の罷免率は史上最も高い15・17%になった。 今回の傾向について、「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の事務局長を務める井田奈穂さん(46)は「6月の合憲判断を受けて『私たちの手で司法を変えよう』と4人の罷免を求める声がツイッターなどで広まった。その結果ではないか」と指摘。「裁判官は審査の結果にハッと思い、自らの仕事ぶりを振り返ってほしい。少数者の権利を守る存在であってほしい」と求めた。(阿部峻介)【裁判官11人の罷免率(有効票に占める×印の割合)】名前/出身 ①全体での罷免率 ②9都道府県での罷免率 ③東京都での罷免率●深山卓也(67)/裁判官出身 ①7.85% ②9.03% ③11.68%岡正晶(65)/弁護士出身 ①6.24% ②7.04% ③8.63%宇賀克也(66)/学者出身 ①6.88% ②7.70% ③9.08%堺徹(63)/検察官出身 ①6.24% ②6.99% ③8.51%●林道晴(64)/裁判官出身 ①7.72% ②8.93% ③11.70%●岡村和美(63)/行政官出身 ①7.29% ②8.42% ③10.99%三浦守(65)/検察官出身 ①6.71% ②7.52% ③9.02%草野耕一(66)/弁護士出身 ①6.73% ②7.58% ③9.19%渡辺恵理子(62)/弁護士出身 ①6.11% ②6.87% ③8.31%安浪亮介(64)/裁判官出身 ①5.97% ②6.74% ③8.31%●長嶺安政(67)/行政官出身 ①7.27% ②8.43% ③11.02%※告示順、敬称略。名前の前に●がある4人は夫婦同姓を「合憲」とした裁判官※9都道府県は人口500万人以上の自治体(北海道、埼玉、東京、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

0歳が英会話…ギフテッドと呼ばれる子どもたち、驚異の才能と課題

 「0歳10カ月で日本語と英語で会話できる」「小学生で分子や電子、核融合に興味」……。「ギフテッド」と呼ばれる特異な才能がある子どもの支援を検討する文部科学省の有識者会議が1日あり、当事者や保護者らへのアンケート結果が公表された。980件の事例が寄せられ、多様な才能が紹介される一方、学校になじめず不登校になるなどの報告もあった。 アンケートは有識者会議が8~9月に行い、当事者や保護者、教員、支援団体職員ら808人が答えた。 才能では、「小2で中学数学を終了する勢いで、大学レベルにも理解を示す」「3歳で数十曲の歌詞とメロディーを覚えて歌い、小学生で上級レベルの曲をバイオリンで弾く」など、特定分野に秀でた事例が紹介された。また「5歳で地球温暖化を理解し海面上昇におびえる。6歳でイスラエルとパレスチナの対立はなぜかと思い歴史を学んでいる」「宇宙や鉱物などの図鑑を細部まで読み内容を覚えた」など、特定の事柄に強い関心をもつ事例も挙げられた。 才能がある一方で、学校生活で悩みやトラブルを抱える子どもが多いことも分かった。ある当事者は「教科書の内容をすべて理解したが、自分のレベルに合わせた勉強が許されず、叱られ、授業中は暇をもてあました」との声を寄せた。ほかにも「発言すると授業の雰囲気を壊すので分からないふりをしなければならない」「習っていない解法を回答すると×にされることが嫌だった」などが挙げられた。 学校や教育委員会、国に期待する支援については、保護者から「先生にギフテッドの特性を学ぶ時間を取っていただきたい」など、教員の理解を求める意見が多かった。 有識者会議では、委員からは「多くの子どもに困難が見られ、保護者からも支援は痛切に求められている」などと、才能を伸ばす支援だけでなく、学校での困難を解消する方法も考える必要があるとの意見が出た。会議は調査結果をふまえて支援策を検討する。(伊藤和行)ギフテッドの特異な才能、経験した困難事例(アンケートから)【特異な才能】…この記事は会員記事です。残り464文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

電車の扉とホームドア、「ずれても開扉を」 京王線の事件受け国交省

磯部征紀、小川崇2021年11月3日 8時10分 京王線の電車内で乗客17人が重軽傷を負った事件を受けて、国土交通省は2日、異常が発生して緊急停車した駅でホームドアと電車のドアがずれた場合、両方のドアを開けて避難誘導することを基本とするよう鉄道会社に指示した。 JRや私鉄など32社の安全責任者が参加する会議で各社の意見を踏まえて決定した。今後、再発防止対策や開扉に関する具体的な運用方針を作成するよう求めている。 このほか国交省は、車内の非常通報装置の使用について、危険が差し迫っている場合は乗客との通話は困難だと指摘。複数の装置が押された場合などは、通話なしでも緊急事態と認識して周辺の他の電車の停止を行うことも指示した。 今回の事件では、事件発生後、車内の非常通報装置が複数箇所で押された。乗務員と通話できるタイプだったが乗客からの応答はなく、乗務員はこの段階では状況を把握できなかった。 電車はその後、国領駅に緊急停止する際、所定の停止位置に止まれず、電車のドアとホームドアの位置がずれた。車掌は乗客転落の危険を考慮して双方のドアを開けず、乗客が窓から避難する事態になった。 京王電鉄の担当者は会議後、「ドアを開けなかった判断は結果的に正しかったが、もっと正しい答えはあると思う。より乗客が安全に避難できるよう規定を見直したい」と述べた。(磯部征紀、小川崇)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

小池百合子都知事が退院 週内は自宅静養、その後2週間はテレワーク

2021年11月2日 18時09分 東京都は2日、「過度の疲労」により入院していた小池百合子知事(69)が退院したと発表した。医師の判断により、今週は自宅で静養を続け、その後2週間程度はテレワークをしながら公務に復帰するという。 小池知事は10月27日に入院すると発表し、約1週間入院した。小池知事は6月下旬にも約1週間、過労により入院した。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

放火容疑で19歳を再逮捕、現場にライター用オイル缶 甲府2人死亡

 甲府市で住宅が全焼して夫妻の遺体が見つかった事件で、市内の少年(19)=傷害容疑で逮捕=について、山梨県警は2日、現住建造物等放火容疑で再逮捕し、発表した。容疑を認めているという。現場でライター用のオイル缶が見つかったことから、県警は計画的な事件とみている。 発表によると、少年は10月12日午前3時50分ごろ、甲府市の会社員井上盛司さん(当時55)方に火を付け、2階建て住宅を全焼させた疑いがある。焼け跡からは激しく焼けたライター用のオイル缶が複数見つかり、ライターのオイルとみられる成分が検出されているという。 捜査関係者によると、焼け跡から見つかった井上さんと妻章恵さん(同50)の遺体には、刃物によるとみられる多数の傷が確認されており、少年は殺害についても関与を認め、「後悔している」などと話しているという。 少年は「1階の部屋のガラス…この記事は会員記事です。残り501文字無料会員になると月5本までお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

サケ釣りのゴムボートから3人が海中転落 1人が死亡 北海道網走沖

神村正史2021年11月2日 19時00分 2日午前10時15分ごろ、北海道網走市の二ツ岩付近の海岸で釣りをしていた男性から「ゴムボートから男3人が海に落ちて漂流している」と北海道警網走署に通報があった。1人は自力で岸まで泳ぎ着き、残る2人は網走海上保安署から連絡を受けた漁船などが約1時間後に救助し、救急搬送されたが、1人が死亡した。 網走海保によると、亡くなったのは札幌市の会社員武者寛之さん(53)。3人は札幌市などからサケ釣りに来ていた。3人は、船外機付きゴムボート(3・8メートル)を二ツ岩の浜に下ろし、そこから南東約3キロの網走港帽子岩付近に行って釣りをし、戻る途中に二ツ岩の沖約100メートルで波を受けてボートが転覆、海に投げ出されたとみられる。 3人ともライフジャケットを着ていたが、事故当時、波の高さが1メートルほどあり、南寄りの5メートルの風が吹いていた。自力で泳ぎ着いた男性は朝日新聞の取材に「午前6時ごろにボートを出した時は風も波もなかった。風が強まってきたので戻り始めたが、あと少しというところで、白波を受けて転覆した。海中は非常に寒かった」と話した。 帽子岩付近は道内有数のサケ釣りポイント。小さなボートで釣りをする人が多く、網走海保は「海中転落の通報はこれまでにもある。気象状況をしっかり見極めることが大切だ。天気が変わるような時は、釣りをやめたり、ボートを出さないという判断をしたりして欲しい」と注意を呼びかけている。(神村正史)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル