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90万人どう避難? 原発差し止め判決、投げかけた難題

 仮に原発で深刻な事故が起きたら、90万人余りをどう避難させるのか――。東海第二原発の運転差し止めを命じた18日の水戸地裁判決は、原発の安全対策は認めたものの、周辺住民の避難計画が不十分だと指摘した。原発を運転する側だけでなく、近隣自治体にも大きな問いが投げかけられた。  「避難計画の実効性に問題があるということで(再稼働を)止めた、歴史的判決だ」。判決後に水戸市内であった会見で、原告弁護団の河合弘之弁護士は力をこめた。弁護団は「全国の原発にも影響を与える可能性がある」と期待する。  判決は、原発事故が多くの住民に深刻な被害を与えかねないことなどから「他の科学技術による事故とは質的に異なる」と指摘。原発の施設の安全対策だけでなく、放射性物質が外に出てしまう場合の避難などを準備しなければならないのに、その対策が不十分だと判断した。  茨城県は2015年3月に「広域避難計画」を策定した。これに基づき、さらに具体的な計画を30キロ圏内の14市町村がつくる手はずだ。しかし、ほとんどの市町村が17、18年度中の策定を目指したものの、現時点で策定済みなのは常陸太田(ひたちおおた)市や笠間市など5市町にとどまっている。  難航している理由の一つが避難の手段だ。住民は原則、自家用車で避難するが、高齢者など自力で移動できない人はバス移動などの手段を確保することになっている。県は2万人がバスで避難すると想定し、バス400~500台が必要と見込む。しかし台数を確保できる見通しは立たず、今も「調整中」という。 「課題を挙げればきりがない」  判決は「深刻な渋滞を招き、短… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちらSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

東海第二差し止め判決 識者、「過去の訴訟と背景同じ」

 日本原電東海第二原発(茨城県)の運転差し止めを命じた18日の水戸地裁判決は、避難計画の不備を理由に再稼働を認めない判断を示した。原発をめぐる訴訟が相次ぐ現状を、識者はどうみているか。  日本原子力学会社会・環境部会の佐田務・副部会長は判決について「避難計画は対象となる人口が多い東海第二では極めて重要な論点だが、背景にある構造は同じだ」とみる。「原発との付き合い方があいまいなまま、なし崩し的に原発が運用されていることへの社会の不満がある」  日本原子力文化財団の世論調査では、東京電力福島第一原発事故後、原子力に対して「安全」や「信頼できる」というイメージを持つ人は3%未満、「必要」は20%前後だ。「危険」や「不安」は5~7割を占める。国や電力会社が原発を推進する一方で、世論調査では慎重な意見も根強い。  佐田さんは「多様な価値観を調整する仕組みがないままでは、政策決定にかかわるにはデモと裁判しかなく、こうした訴訟は今後も続くだろう」と話す。  現状を「原発事故の教訓と政府… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちらSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

「しんどい時はケツまくらんと」 桂雀々映画も独演会も

 「ケツまくらんとしゃーない時はあるんです」。コロナ下で何もかもが一変した今の時代の切り抜け方を、そう語る。腹をくくった人間は強いのだと。  公演は中止になり、寄席も閉じるなど予期せぬことが続いた。「でも、一生っていうトンネルはない。どっかで抜けるはずや」。そう言い切れるのは、桂雀々という芸名をもらうまで、いろんなことがあったから。 母も父も家出して独りに  大阪に住んでいた11歳の時、オカンが家出した。中学生になると、今度はおやじが蒸発する。両親との暮らしは、もともと借金まみれで安定していなかった。賭博の胴元をするなど博打三昧(ばくちざんまい)の父は、家の水槽でピラニアの養殖を始めて失敗。無理心中を図った末のことだった。 記事の後半では、家出した母が約30年ぶりにふらりと帰ってくる話を語ります。  「孤児」になり、食堂の皿洗いや新聞配達、小間使などして働きまくった。居直るしかないと覚悟を決めたのは、独りぼっちになった家に借金の取り立て屋が押しかけてきた時のこと。金を返せと迫るパンチパーマのおっさんに、逆に金をくれとせがんだ。身の上話とおっさんの好きな落語の話で機嫌を取り、5千円をもらった。その後、本当に落語家になってしまうのだから、人生は分からない。  苦難も幸運も、両方を血や肉にして今がある。上京して10年になるが、若いころのドン底時代は、今も芸の肥やしだ。「いろんな他人さんと絡み合いながら生きてきた。酒乱の人にも助けられたし、大阪は濃くてパワフルな人間の街。ネタの宝庫です」  近ごろ出演した映画も、そんな地元で生き抜くサバイバーたちの登場する話だ。  3月12日の大阪アジアン映画祭で上映された「Come and Go」(リム・カーワイ監督、158分)。沖縄、徳島、ベトナム、ミャンマー――。夢や金を求め、多くの人がいろんな場所から行き交う大阪を描く。雀々は、便利屋の「レンタルおじさん」として自分を売る初老の男を哀歓豊かに演じた。 人生は行きつ戻りつ  題名には「行ったり来たり」という意味が込められている。沈んでは昇る太陽のように、人生あきらめなければ明日は来るで。仕事がなくても貧乏してても。「お金お金の小市民の話なんですけど、おもろい。商人(あきんど)の街らしくて」。台本はなく、「創作落語をするように」自分の持ち味を出して即興で演じた。  自身にとっての「カム・アンド・ゴー」は、オカンという。 ◆独演会は大阪・新歌舞伎座で3月27日正午と午後4時半。昼の部で「不動坊」、夜は「仔猫」などを披露する。問い合わせは予約センター(06・7730・2222)。  30年ほど家出をしていたが、… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちらSource…

「もやもやボックス」がクラスを変えた 動き出した仲間

いま子どもたちは:学校でともに成長【中】  昨年11月、記者が取材で通っていた新潟市立浜浦小学校の5年2組に車座ができた。学活の時間だ。こんな話し合いが始まった。  授業に入る時におしゃべりをやめるには?  友達の注意をどう聞く?  「オンオフの切り替えができてない」「自分のことしか考えてない」。一人一人の発言を、担任教諭の山下信孝先生(47)が黒板に書いていく。授業の終わりには子どもから「相手のことをしっかり考えよう」と提案があった。  話し合いのきっかけは「注意したら言い返された」という中身の投書だった。夏休み明けに一部の子たちが思いつき、紙を折って作った「もやもやボックス」に入っていた。  発案者の一人、ユリナさん(11)は、自分も含めクラスが時々騒がしくなることや、一人だけの子がいることが気になっていた。「そういうのが続くと、自分もいやになる」。面と向かって言いにくいことも伝え合ってクラスを良くしたいと、周りの子と考えた。 「もやもやボックス」話し合う契機に  ユリナさんは活発で物おじしない性格だ。昼休みはいつも体育館で友達と鬼ごっこや縄跳びをして遊んでいる。楽しいことに夢中で、4年生まではクラスのことまであまり考えてこなかった。  変わってきたのは5年生になっ… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちらSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

伊方原発差し止めを取り消し 10月末にも運転再開へ

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めた昨年1月の広島高裁の仮処分決定を不服として四電が申し立てた異議審で、同高裁(横溝邦彦裁判長)は18日、異議を認め、仮処分を取り消す決定をした。  3号機はテロ対策施設の整備などで停止中。仮処分が取り消されると直ちに法的拘束力がなくなるため、四電は、10月末にも運転を再開したい考えだ。  仮処分を申し立てていたのは、伊方原発から約50キロ圏内にある瀬戸内海の島の住民3人。  異議審の主な争点は、四電が想定した地震規模と、火山のリスク評価が適切かどうかだった。  地震について、住民側は原発近くに国内最大規模の活断層「中央構造線断層帯」に関連する活断層が存在する可能性が高いとし、四電の調査を不十分だと主張。2016年の再稼働を認めた原子力規制委員会の判断を「過誤ないし欠落があった」とした。  これに対し、四電側は調査の結果「活断層はない」と反論し、地震規模の設定は適切で、原子力規制委の判断にも誤りはないと主張した。  火山については、原発への火山の影響の評価方法をまとめた国の「火山ガイド」の合理性や、原発から約130キロ離れた阿蘇山(熊本県)でどの程度の噴火を想定すべきかが焦点になった。  住民側は、現在の火山学の水準では噴火の時期や規模の正確な予測は困難だとして、噴火の規模は「過去最大」で考えるべきだと主張。火山ガイドは噴火の中長期的な予測が可能であることを前提にしている点で不合理だと強調した。  これに対し、四電は現在の阿蘇山は大規模な噴火が起こるような状態ではないと主張し、火山ガイドは火山学的な根拠があり、不合理ではないと反論した。  昨年1月の広島高裁決定は、地震規模の評価について四電の調査が不十分としたうえ、規制委の判断も「過誤・欠落がある」とした。火山評価についても、四電の想定は過小だと指摘し、差し止めの仮処分を決定した。  本訴にあたる差し止めをめぐる訴訟は、住民側が17年12月に山口地裁岩国支部に提訴し、現在係争中。(西晃奈) Source : 社会 -…

ホームレス襲撃死論告 検察側が懲役8年と6年を求刑

 岐阜市内で昨年3月、路上生活をしていた男性(当時81)が襲われて死亡した事件で、傷害致死の罪に問われた元少年2人(ともに20歳)の裁判員裁判が18日、岐阜地裁(出口博章裁判長)であった。検察側は「高齢の弱者を追い詰め、重大な結果を招いた」などとして、2人に懲役8年と同6年を求刑した。判決は25日に言い渡される予定。  起訴状などによると、2人は無職の元少年(20)=傷害致死の非行内容で少年院送致=と共謀し、昨年3月25日未明、長良川にかかる河渡(ごうど)橋の下で生活していた渡辺哲哉さんを襲撃。約1キロにわたって石を投げながら追いかけ、土の塊を投げつけた際、渡辺さんを転倒させ、脳挫傷などにより死亡させたとされる。  被告2人のうち、検察側が「犯行を主導し土の塊を投げた」として懲役8年を求めた1人について、弁護側は「同4年6カ月が相当」と主張。「従属的だったが、投石の合図をした」などと検察側が指摘したもう1人に対しては、執行猶予付きの判決を求めた。(松山紫乃、伊藤智章) Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

柏崎刈羽原発のテロ対策「最悪」評価 東電社長が会見へ

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で不正侵入が長期間検知できなくなっていた問題で、東電は18日、安全確保への影響が大きいとした原子力規制委員会の暫定評価に異議がないと表明した。テロ対策の不備が極めて深刻だったことを認めた形で、4段階で最悪の「赤」の評価が確定した。小早川智明社長が午後7時から記者会見し、一連の経緯などを説明する。  東電によると、柏崎刈羽原発では昨年3月以降、計15カ所で不審者の侵入検知装置が故障し、10カ所では30日以上検知できない状態だった。規制委は16日、テロリストの侵入など重大な事態につながりかねなかったとして、赤、黄、白、緑の4段階で最悪の「赤」の暫定評価を示し、異議があれば1週間以内に表明するよう東電に求めていた。東電は18日、「意見陳述の要望はない」などと規制委に文書で提出した。  規制委は今後、第三者による検証結果などを半年以内に報告するよう求めるとともに、延べ約2千時間の追加検査で根本原因などを調べる。17日には、東電が再稼働をめざす7号機に核燃料を搬入するのに必要な手続きを当分の間保留することを決めている。(桑原紀彦) Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

見舞いの送迎に昼食、わいた情 戻らぬ老後資金5千万円

 家庭用磁気商品のオーナー(販売預託)商法で約1万人から約2100億円を集めたとされる「ジャパンライフ」。破産手続きが進むなか、東京地裁で18日、出資法違反(預かり金の禁止)の罪で起訴された元同社幹部の公判が始まった。被害者はやり切れない思いを抱え、その行方に注目している。  「誘い文句につられ、老後の生活資金を奪われてしまった」。大阪府内の女性(78)は悔いる。投資した約6500万円のうち、約5千万円が戻っていないという。代理人弁護士が口座の出入金をチェックし、破産管財人にも確認しておおまかな被害額を特定した。  女性は地方公務員だった。定年退職の前、友人宅に呼ばれ、ジャパンライフの役員を紹介されたのが投資のきっかけになった。  大阪市内の店舗で毎月のように… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちらSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

「急な緩和」避けたい4知事 解除後も慎重行動呼びかけ

 東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏4都県に出されていた新型コロナウイルスの緊急事態宣言の解除が決まった。2度の延長を経て宣言期間は約2カ月半に及んだが、感染を封じ込めることはできず、再拡大(リバウンド)への懸念が強まる中での解除となる。4都県の知事たちは、何を呼びかけたのか。  4都県の知事は18日にテレビ会議を開き、宣言解除後の22日以降、飲食店などに要請している営業時間の短縮を4都県全域を対象に、午後8時から同9時に緩和することを決めた。22日から31日までを「段階的緩和期間」とし、酒類の提供は午前11時~午後8時とする。宣言下では1日あたり6万円だった協力金は、解除後は1日あたり4万円となる。不要不急の外出自粛要請も継続する。4月以降も時短や外出自粛の要請を続けるかは、今後の感染状況や医療提供体制などを見た上で、改めて決める。  4都県知事はこの日、共同メッセージとして、「外出時は3密回避」「飲食は、換気が良くアクリル板のある店で、家族か少人数で短時間」などと呼びかけた。  「宣言の解除は、リバウンド対策の徹底に向けた新たなスタート」。東京都の小池百合子知事は、18日夜の緊急会見でそう強調した。卒業旅行や彼岸の帰省も自粛を求め、会食相手は「家族かいつも近くにいる4人まで。短時間、会話の際はマスク着用。お花見は宴会なし、謝恩会、歓送迎会もなし」と呼びかけた。 5月の大型連休見据え、協議続ける  ただ、宣言解除による「気の緩み」に向けた強い対策は打ち出さなかった。ある都幹部は「感染拡大防止に向けたメッセージとしては弱かった」と会見の印象を語った。  都内では2月25日ごろから、… 2種類の会員記事が月300本まで読めるお得なシンプルコースはこちらSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

飲食店への時短営業要請、21日で解除 福岡県が方針

 福岡県は18日、新型コロナウイルスの緊急事態宣言解除後も、県内の飲食店に要請していた時短営業を期限の21日で解除する方針を固めた。関係者への取材でわかった。新規感染者数は下げ止まっているが、高齢者施設などでの感染拡大を一定程度に抑えれば、医療提供体制を維持できると判断。19日のコロナ対策本部会議で正式に決定する。  福岡県は1日に宣言が解除されたが、感染状況が「ステージ2(感染漸増)」相当になるまで対策を続けるよう求める国の方針に沿って、飲食店などに酒の注文は午後8時半まで、営業は午後9時までとする要請を続けてきた。  県内の病床使用率は17日時点で31・9%で、ステージ2相当の20%未満には届いていない。それでも県は、最近の新規感染者は感染経路が判明している割合が高く、高齢者施設や病院の入所者と職員が多いとみる。こうした施設でのクラスター(感染者集団)を施設内で抑え込めば、病床の逼迫(ひっぱく)は避けられると判断した。  ただ、感染の再拡大を防ぐため、県は時短要請の解除後も会食は2時間以内とするよう県民に求める。高齢者施設の職員らが無料で受けられるPCR検査や、感染防止策を指導するアドバイザー派遣事業などの積極的な活用も呼びかける方針だ。(山田佳奈) Source : 社会 - 朝日新聞デジタル