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絵本文化をベトナムへ 美智子さまから紀子さまへつながれたバトン

有料記事ダナン=多田晃子2023年9月24日 17時00分 ベトナムで絵本文化を広めたい――。そんな思いで子どもたちへの読み聞かせなどを続ける日越の女性2人がいる。だが、絵本を読む習慣が根付いていないベトナムでは、思うようにいかないことも。悩んだ時、心の支えになったのは、上皇后美智子さまの「(本は)私に根っこを与え、翼をくれました」という言葉だった。 「懐かしいですね。子どもたちと読みました」 ベトナムを訪問中の秋篠宮妃紀子さまは23日、絵本を見て思わず顔をほころばせた。 そして絵本のページをめくったり、ベトナム語に翻訳したタイトルを読み上げたりしながら、2人から活動内容を熱心に聞き、「ベトナムの子どもたちに絵本を紹介して下さって、絵本づくりをして下さってありがとうございます」と伝えた。 活動をしているのは、勝恵美(めぐみ)さん(47)とベトナム人のレ・ティ・トゥ・ヒエンさん(45)。月に2回ほど絵本の読み聞かせをしていたが、少人数で地道な活動だった。大使館を通じて届いたのは…… 2017年3月、天皇、皇后両陛下としてベトナムを訪れた上皇ご夫妻が出席した駐ベトナム日本大使夫妻主催のレセプションに招かれた。 美智子さまからこう声を掛けられた。 「どんな本を読んでいますか…この記事は有料記事です。残り816文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

四万温泉の英語版マップ 外国人観光客の目線で高校生が作製

 群馬県中之条町にある四万温泉の魅力を外国人観光客にアピールしようと、地元の高校生が英語版のマップをつくった。「四万温泉を訪れる外国人観光客の役に立ってもらえれば」と、温泉街での配布が始まっている。 手がけたのは、県立吾妻中央高校普通科の3年生、町田ひなのさん(17)。「総合的な探究の時間」の授業で取り組んだ。 温泉文化をユネスコの無形文化遺産に登録する運動が始まったことを知り、関心を持ったという町田さん。「それには海外に魅力を発信することが大切」と考え、四万温泉を題材にすることを決めた。 8月初めに四万温泉協会を訪ねると、宮崎博行事務局長から「予算不足で英語版のマップを作れなかった」という話を聞いた。そこで、マップ作りを思い立ったという。 町田さんは同校で外国語指導…この記事は有料記事です。残り722文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

15歳の壁、超えるには 中学卒業の後「家に帰したくない子もいた」

 昨年10月、三日月大造・滋賀県知事と大杉住子副知事が、児童自立支援施設の県立淡海(たんかい)学園(甲賀市)を初めて視察した。知事らは佐伯洸平さん(32)、香菜さん(41)夫妻が運営する甲賀寮で、6人の子どもたちと夕食のカレーライスを囲んだ後、学園職員との意見交換に臨んだ。 岩井健一園長(61)は「学園には『15歳の壁』があります」と口火を切った。「中学卒業後も残れる施設をつくってほしい」 岩井園長には「自分が学園にいる間に道筋をつけたい」との思いがあった。 今春、学園を退所して一人暮らしを始めたセイジ(18)。中学卒業後も働きながら学園で生活する、十数年ぶりの「年長児」だった。 学園の入所対象は原則18歳以下。だが、学園内には小中学校の分教室しかない。高校や勤務先に通うには不便な山あいにある。 これまで、学園の子どもは中学を卒業すると、多くは自宅に戻っていった。だが岩井園長は「中には家に帰せない、帰りたくない子もいた。職員も子どもも、学園を出るしかないと思っていた」。「年長児が暮らせる施設があれば」 学園で規則正しい暮らしを送…この記事は有料記事です。残り948文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこぼれ落ちる子どもたち虐待、貧困、性被害……。大人がつくった支援制度からこぼれ落ち、困難に直面している子どもたちがいます。今の国会では、「こども家庭庁」の設置法案などの審議が始まり、子ども政策の転換点を迎えます。今後、子どもたちに救いの手が届くのでしょうか。リアルな声とともに伝えます。[もっと見る]Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

消したかった「あいつの臭い」 少女のSOS探った「レッド隊長」

 ある日の夜、福岡県内のマクドナルド。高校2年の少女はポテトをテーブルに並べ始めた。 1本、2本、3本……。 「1日最高何人を相手したと思う? それでも、あいつの臭いが消えんやった」 援助交際で補導された少女は、実父から性的虐待を受けていた。 福岡県警少年育成指導官の安永智美さん(60)にそのことを明かしたのは、出会って何カ月も経ってからだった。 いわゆる「非行少女」だった。ネットで援助交際の相手を募集しているのを、警察の「サイバー補導」が把握した。接触した警察官が身分を明かすと、少女はうんざりした顔で「さ・い・あ・く」とつぶやいた。 少女は「お金のため」と言って援助交際を続けていた。警察官が危険を諭しても、「これまでに何百回もしたけど怖い目に遭ったことは一度もない」と、悪びれる様子はなかった。 安永さんは根気強く電話をかけたりメッセージを送ったりして、約3カ月後、月に3回ほどの面談ができるようになった。 約束の時間に来なくても、すっぽかされても怒らない。援助交際の話もしない。 「楽しかったことや嫌なことはあった?」 「心の天気は?」 雑談を続けた。 ある日の夜、少女から初めて「食事に連れて行って」と電話があった。 マクドナルドの店内で、いつものように雑談した。おなかがいっぱいになったころ、少女はポテトを並べながら話し始めた。 「消したい臭いがあるんやね…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

差出人にHTマーク、阪神ファン?から保育所に封筒 その中身は…

 園児が帰り静かになった夕暮れどき、保育所のポストに茶封筒が投函(とうかん)された。送り主の名前はない。裏には油性ペンで「西成区」の文字と、阪神タイガースのチームロゴとみられる「HTマーク」が書かれている。封を切ってみると――。 封筒が届いたのは大阪市西成区にある市立山王保育所。19日のことだ。 ななめになった縦書きで「山王保育所 園長様」と書かれている。 「嫌がらせとちゃうやろうな」。武藤英嗣朗(えいじろう)園長(43)がおそるおそる中を開けた。週刊誌が入っていて、粘着テープで雑に留められていた。 粘着テープを切ってページを開くと、ぎょっとした。 ページの真ん中が1万円札の…この記事は有料記事です。残り587文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

【都立国際高校③】生徒も親も熱い、ハイブリッドで最先端の文化祭

 海外帰国生と在京外国人生徒が、全生徒の3分の1以上を占める都立国際高。その独特の文化は、秋の「桜陽(おうよう)祭」にも色濃く表れている。海外と日本のいいとこ取りの「ハイブリッド文化祭」を取材した。【連載】高校ポートレート魅力ある東京都内の高校を訪ね、多彩な学びやスクールライフに迫る連載。今シリーズは、都立国際高校です。 「本日はご来場ありがとうございます。公演中、会場内での飲食は……」。公演前の体育館。日本語での放送後、すぐに“Thank you for coming to……”と英語でのアナウンスが続く。桜陽祭では、校内放送も校内掲示も2カ国語対応が基本だ。 ステージに1番手で登場したのは「ジャパニーズスタイル部」。琴、三味線、横笛で、映画主題歌としてヒットした「打上花火」(DAOKO×米津玄師)などを奏でる。続いて、法被を着た和太鼓隊が、力強い演奏を披露した。 「日本の学校に通うんだから、和に触れたいと思っていた。それに日本の文化祭を思いっきりやってみたかった」と、和太鼓を演奏した山内里桜(りお)さん(2年)。桜陽祭実行委員会の幹部メンバーでもある。 小中学時代の5年間、中国に住んでいた。通っていたインターナショナルスクールでも「スクールフェスティバル」はあったが、生徒は「招かれる側」だった。塾の先生に「日本の文化祭は、生徒自身で作る。招く側なんだよ」と聞き、憧れていた。入試の面接でも、「桜陽祭に中心メンバーとして参加したい」とアピールしたという。 実際、桜陽祭は企画も運営も生徒が担う。ジャパニーズスタイル部でも、大人の外部講師ではなく、上級生に一から演奏を教わっている。「想像以上の達成感です」と充実の表情を見せた。国際高に「時代が追いついてきた」 ステージだけでなく、出店や展示も「国際高カラー」が強い。 「国際協力ボランティア同好会」は毎年、フェアトレードの商品を販売している。バングラデシュで女性たちが織った布製品は1300円、食品パッケージを再利用したビーチバッグは2700円だ。 「そんなにボランティアに関心があったわけではない」と、販売担当の及川祥花さん(2年)は明かす。小学生の頃に英国で暮らし、都立国際高を選んだのは「英語に強そうな学校」というだけの理由だった。 ところが、1年の必修授業「…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

卵を隠して死んだジョロウグモ、自身を重ねた 10年追い映像作品に

 岡山市の写真家、難波由城雄さん(75)はジョロウグモの一生を10年がかりで追った映像作品で今春、第64回科学技術映像祭の文部科学大臣賞を受けた。小学校や公民館などを回って受賞作の上映をし、子どもたちに前向きな思考の大切さと、「共感」が人生を切り開いた経験を伝えている。 岡山県新見市の農家に、8人きょうだいの7番目として生まれた。小学校入学直後の身体測定で左目の視力がないことを知った。生まれつきだった。「みんなが持たない秘密を持ったようで、わくわくした」と笑う。 大阪の大学を卒業し、衣料問屋に勤めて2年たったころ、婿養子の話が舞い込んだ。相手は、岡山後楽園の外苑(がいえん)で御庭焼の窯元と土産物店を兼ねていた「残夢軒」の経営者の次女、康子さん(74)。ひかれ合って結ばれ、実家の小林姓から難波姓に変わった。産着でくるむように、再び糸を その翌年、1973年に長女を授かり、子育てに追われた。 晩秋、店の中庭のモミジの木に巣を張っていたジョロウグモがお尻から糸を出し始めたのを見つけた。数時間たった深夜には、粘液に包まれた赤い卵を産み始めた。 「糸で作ったふわふわのシー…この記事は有料記事です。残り735文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

太宰の愛した跨線橋、12月撤去へ 階段の一部を東京・三鷹市が保存

 東京都三鷹市で暮らした作家・太宰治が好んで訪れた三鷹駅近くの跨線橋(こせんきょう)が、12月ごろに撤去されることになった。 市は、太宰の写真に残る橋の階段の一部を現地に保存したり、VR(仮想現実)映像で、風景が見られたりする仕組みも考えている。橋との別れを惜しむイベントも計画中だ。 撤去されるのは、三鷹―武蔵境駅間にある「三鷹跨線人道橋」。JR東日本八王子支社が21日に発表した。完了までは2年程度かかる見込み。往来には、約200メートル離れた地下道が使える。太宰の愛した跨線橋、VRでも保存 市が保存するのは、橋の南東側の階段の一部。マント姿の太宰が階段を下りる有名な写真の撮影場所だ。橋桁の一部とともに、同社から市が譲り受ける。また、同社と協力して昨年度から3D計測している記録をいかし、スマートフォンでQRコードを読み込むと橋の風景を再現できる仕組みを検討している。 市主催の「渡り納めイベント…この記事は有料記事です。残り225文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

「らんまん」発表5日後に 劇作家・長田育恵さん「信じてくれた母」

 NHK連続テレビ小説「らんまん」の脚本を書くことが発表された日の5日後、母は亡くなりました。 「らんまん」の主人公は、将来を信じる周囲のまなざしを受けて成長していきます。私も母に、私の進む未来を信じてもらっていました。とても感謝しています。 幼い頃の私は体が弱く、外で遊んだ記憶がほぼありません。家や病院で、母はたくさんの絵本を読み聞かせてくれました。思い出の1冊が言えないほどの冊数。物語が大好きになり、自分でも空想して母に聞かせていました。学校でも図書室の物語作品は全て読みたくなりました。 小学2年から学校を休みがちになりました。人が大勢いる空間や女の子のグループ内での友だち関係が苦手で。 ある時、学校で50問のかけ…この記事は有料記事です。残り719文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

「ノー」と言って消えた英国人捕虜 形見の半纏手に娘が足跡たどる

 一着の古びた半纏(はんてん)が9月の半ば、78年ぶりに山深い長野県天龍村へ返ってきた。戦争中に村で労働を強いられた英国人捕虜が持っていたものだ。遺品となった半纏を携えて英国から来日した娘が、父の足跡を追った。 着込まれた紺色の半纏をキャロライン・タイナーさん(74)が、原田馨さん(63)=同県阿南町=に着せかけ、2人は満面の笑みで抱き合った。天龍村で14日に開かれた半纏の「返還式」。馨さんの祖父、原田源燈(げんとう)さん(1900~70年)が45年、終戦で帰国する英国人元捕虜のチャールズ・ウィリアムズさん(18~94年)に贈ったものだ。 娘のキャロラインさんは「戦争は悲惨な傷ばかり残したが、この半纏は思いやりや友情という真実の証し。お返しすることで人間の善意を末永く伝え、新たな世代の友情につなげたい」と話した。 村には戦時中、東京俘虜(ふりょ)収容所第三分所(後に第二派遣所、第十二分所へ改称)、通称・満島収容所があった。村によると英米を中心に延べ約300人の捕虜を収容、56人が病気などで死亡した。戦後、関係者はBC級戦犯を扱った「横浜裁判」にかけられ、軍属として捕虜を監視した村民1人が死刑を執行された。 ウィリアムズさんら捕虜は天…この記事は有料記事です。残り2111文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル