朝日新聞が全国の道府県庁所在地と東京23区に、双子など多胎児を持つ家庭への特別な育児支援策の有無を尋ねたところ、約25%の市区で「特化した支援はない」ことがわかった。多胎児は低体重で生まれるなど、家庭の育児負担が重くなりがちだ。愛知県豊田市では昨年、三つ子の母親が生後11カ月の次男を死なせる事件が起き、積極的な支援の必要性を指摘する声もある。 調査は9月、全国の計69市区に実施した。多胎育児に特化した支援策が「ない」と答えたのは、青森、千葉、静岡、岡山、熊本など16市と、東京都中央区の計17市区。いずれも「単胎児を含めた子育て支援策で対応」と答えた。 「支援策がある」とした52市区に複数回答で内容を尋ねたところ、「多胎家庭向けの育児教室や父母の交流会などを開催」が最多の42市区だった。さらに踏み込んだ支援は、前橋市など20市区で導入している「育児ヘルパー派遣の支援上乗せ」で、単胎児の家庭より利用期間や時間を優遇している。 また、支援事業があると答えた52市区には、2019年度の予算額も尋ねた。25市区は「単胎児向けと区別していない」「公的施設で職員が講師」などとして「ゼロ」や「回答不能」とした。金額を答えた27市区でも、数十万円程度の予算が多く、最高は「ヘルパー派遣事業の上乗せ」(京都市、240万円)で、最低は「(イベントの)案内状など郵送料」(高松市、数千円)だった。費用面で市区の負担は少なく、事業を実施していることが分かった。 一方で、多胎育児への支援事業があっても、行政として支援が十分に行き届いていないと認識する自治体もあった。津市は「祖父母がいても大変。支援者を確保する政策が必要」、東京都港区も「施策が追いついていない」。佐賀市は多胎育児の経験者を家庭に派遣する事業を実施するが、17年度に生まれた子どものうち、多胎の子は26人。「小規模自治体ではさらに難しい」とし、実際、佐賀県が17年末から1家庭2万円までのタクシー券の配布を始めている。また「多胎児数減で育児サークルの維持困難」(仙台市)という回答もあった。(編集委員・伊藤智章、大野晴香) 岐阜市、多胎支援策を初の予算化 岐阜市は今年度、多胎児家庭への支援策を初めて予算化した。多胎育児の経験者(ピア)による家庭訪問や乳幼児健診の際のサポートをする。健診を含め、1家庭に4回の利用を想定し、全体で61万1200円を予算計上した。ヘルパー派遣では、利用者の一部負担を求める自治体がほとんどだが、同市は自己負担ゼロで利用できるようにした。 岐阜県多治見市のNPO法人・ぎふ多胎ネットの取り組みを参考にした。同NPOは2006年から、研修を受けた多胎育児の経験者を県内各地に派遣する取り組みをしている。 経験者の訪問は母親たちに安心感を与える。岐阜市健康増進課の片桐真由美係長によると、「双子が同時に泣いても、1人しかだっこできなかった」といった経験談を交えて話すと、共感が得られやすいという。 岐阜市の場合、17年の出生数2914人のうち、多胎妊娠の母親は37人。核家族化や近所付き合いが少ない中で、同市でも多胎児家庭の虐待リスクが問題になっているという。 NPO法人「ぎふ多胎ネット」の糸井川誠子理事長の話 愛知県豊田市の事件の後でも、多胎児家庭向けの施策がない自治体があること自体、残念だ。有料のヘルパー派遣では効果があるかどうか疑問。無料にしないと母親が遠慮して使わない。多胎児は人数も少なく、支援が必要な時期もせいぜい3歳まで。巨額な費用はかからないので、支援をぜひ広げてほしい。 特色ある多胎育児支援をする主な自治体 仙台市 育児サークルへの支援 津市 双子育児経験者の母子保健推進員の赤ちゃん訪問…
5 ans Il y a