社会

小学校受験する理由、「公立不信」は減少 増えているのは…

 「世間から『○○小の子どもは育ちがいい』と言われるだけでは魅力を感じない。費用と内容のバランスを見て、『コスパ』がいい方を選びたい」 今秋、長女(5)の小学校受験を控える30代女性は、志望校選びの基準をそう話す。 女性は東京都内の銀行勤務。平日はフルタイムで働き、週末は幼児教室に付きそう。今のところ第1志望は国立。抽選もあり、「入れたらラッキーだけど、落ちたら公立小に通えばいい」とのスタンスだ。 少し繊細な長女の性格を考え、公立以外を考えて小学校受験を意識したのは約1年前。比較的近所にある国立小の評判を聞き、新しい教育方法を採り入れる校風にひかれた。せっかくならと、私立も調べ始めた。 首都圏を中心に、子どもに小学校受験をさせる共働き家庭が増えています。なぜ小学校からの受験なのか。どう仕事と両立しているのか。記事後半では、変化する幼児教室や、大学教授らの分析も紹介します。 重視するのは、教育内容に加…この記事は有料会員記事です。残り3392文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

これ菜の花? 「ワースト」外来種と知った高校生は駆除に向かった

 時季外れの菜の花? いいえ、よく似た外来植物です――。そんなやりとりを見聞きした高校講師が始めた授業がきっかけとなり、生徒と行政がともに外来植物を防除する取り組みが始まった。堤防一面に咲く黄色い花 5月下旬、長野県北部にある飯山市を流れる樽川の堤防沿い。下高井農林高校(同県木島平村)の2、3年生27人と同市の職員3人が一面に咲く黄色い花を摘んでいた。 この日は、同校で地域資源の活用を学ぶ「グリーンデザイン科」の生徒の呼びかけで集まった生徒と市職員が、朝から2時間半かけて樽川沿い約2キロに咲く菜の花によく似た植物を駆除した。生徒と市職員がともに行う防除活動は今回が初めて。重さにすると、約350キロを駆除した。 駆除活動に参加した3年の藤沢りりかさん(17)は「外来種がこんなに身近にあるということを授業で知って驚きだった。菜の花とちゃんと区別してもらいたい」と話した。市の市民環境課の担当者は「生態系を維持し、本来の菜の花の美しさを守るためにも、活動を周知しながら取り組みを進めていく」と活動の重要性を強調する。その名は「ハルザキヤマガラシ」 駆除された花はヨーロッパ原…この記事は有料会員記事です。残り859文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「諦めるのは早い」と海に潜る 妻の手がかり探し、一から習った潜水

 東日本大震災の津波で、妻の祐子さん(当時47)が行方不明になった高松康雄さん(65)=宮城県女川町=は毎月、深さ30メートルの海底に潜る。「家族が諦めるにはまだ早いよ」。11日で震災から11年3カ月。妻の手がかりを捜し続ける。 約30年前、祐子さんとお見合いで出会った。最初のデートは松島町の水族館。優しい笑顔にひかれ、話も合った。「いいなあ」。結婚し、2人の子どもに恵まれた。「おっかあ」「おっとう」と呼び合った。 2010年冬、康雄さんは長年勤めた航空自衛隊を定年退職し、翌春からはバス運転手の仕事が決まっていた。それまでは女川の自宅でゆっくり過ごそう。近くの七十七銀行女川支店で働く祐子さんを毎日、車で送った。 あの日。地震の後も高台にある自宅は無事だった。約30分後、職場の祐子さんからメールが届いた。 「大丈夫?帰りたい」。文面を見て、祐子さんも高台に避難できていると安心した。翌日、高台の病院に避難していると思い、迎えにいった。しかし、見つからなかった。 知人から「支店の屋上から津波に流される行員を見た」と聞いた。康雄さんは崩れ落ちそうになった。海での捜索活動「自分も潜れないか」 支店近くのがれきを捜し回り、12年には銀行の安全配慮義務違反を問う裁判をほかの家族と起こした。 「家族の捜索の要望に応じる」という新聞記事を読み、13年、宮城海上保安部に捜索を依頼した。海での捜索活動を見ていて思った。「自分も潜れないか」 インターネットで近くのダイビングショップを検索し、ボランティアで捜索を続けるダイバーの高橋正祥さんと知り合った。一から潜水を教わった。 約1年間の訓練を経て、少しずつ深く潜れるようになった。今、集中的に捜すのは海底30メートルの暗闇の世界。水中ライトの明かりを頼りに車や建築資材などがれきの周りに目をこらす。 一度で潜れるのは20分程度。沈んだ車のナンバープレートも読めないほど腐食が進み、がれきにはフジツボが増え始めた。11年分の泥もたまり、捜索は難しさを増す。「お金が何億円もあって、がれきを全て陸にあげたら見つけてあげられるのに」と考えてしまう。 今年1月、福島県大熊町で女児の遺骨を父親が見つけたというニュースを聞き、意を強くした。 「がれきの下にいるのか。もっと沖合にいるのか。分からないけど、自分にできることは捜し続けること以外にない」     ◇ 屋上に避難し、行員ら12人が犠牲になった七十七銀行女川支店の4家族がつくった町内の慰霊碑が、周りの区画整理事業が終わったため、約150メートル離れた場所に移転され、11日にお披露目の式典があった。 碑には「命を守るには高台へ行かねばならぬ」と刻まれ、毎年3月11日には多くの人が集まる。康雄さんは「まだ8人が行方不明のまま。『早く帰ってきてほしい』とこれからも祈る場所です」と話した。(福岡龍一郎)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

海に落ちてもボタン一つでSOS 漁師の祖父を亡くした起業家が考案

 北海道・知床半島沖で観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で、迅速な救助の重要性が再認識された。そんな中、漁船転覆事故で祖父を亡くした男性が開発した相互海難救助サービスへの関心が高まっている。 福岡市でベンチャー企業「nanoFreaks」を経営する千葉佳祐さん(27)は、漁業が盛んな北海道紋別市出身。 漁師の祖父が47年前、乗っていた漁船が転覆して帰らぬ人となった。働き手を失って生活は困窮し、祖母は苦労して母を育てた、と聞かされた。まわりに海難事故で家族を亡くした人は珍しくなかった。 山形大学を卒業して2018年、九州大大学院に進んだ。元々起業に興味があり、福岡市で起業関連の情報に触れるうち意欲が高まった。祖母や母のように悲しむ人を減らしたいという気持ちから、漁業者向けの相互海難救助サービスを思いついた。 海上保安庁によると、船舶事故を除いた漁船から海中への転落者数は20年、74人だった。そのうち死者・行方不明者は49人で約7割を占める。 沿岸漁業では1人で漁を行う場合が多いうえ、救難要請を発信する手段に乏しく、転落事故が認知されるまで2時間を超す例が約4割に上る。千葉さんは「異常をすぐに知らせることができれば救助の確率は高まる」と考え、休学して開発に取り組んだ。 完成したのが「yobimo…この記事は有料会員記事です。残り722文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「食事を我慢しない」低糖質パンが人気 糖尿病の祖母きっかけで開発

 血糖値が高い人やダイエット中の人でも糖分を気にせずパンを食べたい――。そんな願いをかなえる「低糖質パン」が人気だ。パンづくり未経験の男性が開発した。「病気の祖母にもおなかいっぱいパンを食べてほしい」との思いがきっかけで生まれた。 「糖質75%カット」 「こんな方におすすめ ダイエット中でもおいしいものを食べたい 血糖値が気になる」 名古屋市東区の桜通り沿いにあるパン屋「Nucca車道店」。全面ガラス張りの店頭には、こんな宣伝文句が並ぶ。 小麦粉の代わりに糖分の少ない「ふすま粉」を使ったパンが看板商品だ。糖分量が通常の4分の1程度で、血糖値の上昇を緩やかにおさえることができる。 1日500個以上売れることがある食パンのほか、ベーグルやピザなど種類は豊富だ。店主の竹田圭佑さん(44)は「糖分を気にせず食べてほしい」と話す。 竹田さんが低糖質パンの開発…この記事は有料会員記事です。残り781文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「水、ありがとね」妻思いの高橋さん、温かな言葉最期まで

向日葵クリニック院長 中村明澄さん 今回取り上げる方は、高橋正孝さん(享年77)です。奥さんや息子さん一家と農家を営んでいる方でした。前立腺がんを患い、余命2カ月と宣告されていました。 最初に訪問したのは2020年9月14日。歩けなくなって、食事がとれなくなっていました。ステロイドの飲み薬の効果が出て、9月末には、食欲が出て、見違えるように元気になりました。 訪問すると、1時間ほどお話ししてくださることもありました。「『襟裳岬』をかけると、よく寝られるんだよ」「いまは何だって食えるし、畑にも、ちっと行けるようになったよ」。とてもうれしそうに、高橋さんが書きためてきた野菜の育て方のノートを見せながら、野菜について語ってくださいました。 実は高橋さん宅は、コロッケ…この記事は有料会員記事です。残り916文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

恐れ、遠ざけてきた母 病床で手渡された小銭 作家・小川糸さん

かあさんのせなか 「食堂かたつむり」や「ライオンのおやつ」など数々の小説を生み出してきた作家の小川糸さんは、「母を遠ざけてきた時間がすごく長かった」といいます。ただ、そんな母の死を通して、変化した思いがあったそうです。小川さんからみた「かあさんのせなか」を聞きました。(聞き手・塩入彩)「お金さえあれば」 母の言葉に抱いた疑問 母との思い出って何かなと思ったとき、ふと思い出したのが、小学校の夏休みの自由研究。母の提案で、タンポポの根っこを採取することにしたんです。 ただ、タンポポの根っこって下まですごく長く深くて、掘るのはとても大変で。途中でやめたら、母に「最後までやりなさい」と怒られました。泣きながら、母と一緒に掘り出したのを思い出します。 途中で諦めることを許してくれない人でした。いま思うと、花という目に見えている部分はごく一部で、根っこはこんなにも地中深くに広がっているということを、間接的に教えてくれたようにも思います。ただ、当時はとにかく母が怖かったし、母が自分のためにやっているようにしか思えなかった。違う見方ができるようになったのは、それこそ母が亡くなってからです。 生前、母との関係はあまりよくなかったんです。母を遠ざけてきた時間がすごく長かった。 母は福祉系の公務員で、仕事にとても責任感を持っていました。家族に対しても「経済的に支えなきゃ」という意識が強く、オブラートに包んで言えば「教育熱心」。幼稚園の頃から、小学校の算数や漢字のドリルを与えられ、間違えると、たたかれました。それがすごく怖くて、嫌で、本当に泣き叫びながら逃げていました。 時代の影響もありますが、「いい学校や大学に入れれば、経済的にも豊かになる」という価値観を持っていて、「お金さえあれば生きていける」ともよく言っていました。私は子どもながらに、そんな母に疑問を持っていました。 母は、常に満たされない思いを抱えていました。母自身は長女だったのですが、「親は妹ばかりを可愛がっている」と感じていたようです。 大人になってからも、よく言えば責任感が強い一方、自分の努力が認められないと、すごく混乱する。「なんでこんなに自分は頑張っているのに、それを認めてくれないんだ」と。だからこそ、私がちょっとしたことで母を褒めると、すごく喜んで。子どものような面がありました。 私が作家としてデビューした頃、母自身が大きな問題を抱えてしまい、母に向き合うほど、私も消耗しました。このままでは、自分も巻き込まれ、健康的な生活を送れなくなる。そう思い、母とは連絡を絶ちました。記事後半では、母親との関係性の変化について小川さんが語っています。 転機はその数年後、母からの…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「PTA非加入5年で9倍」に向き合う 負担減へ三つのダイエット法

 さいたま市立の小中学校で、PTAに入っていない家庭が2017年度からの5年間で約9倍に増えた。背景には、保護者にとって会合や行事の手伝いなどの負担が大きいこともあるとみられる。改革を進めているPTAの例から、持続的な活動ができるヒントを探った。(小林未来) 市内のPTA非加入家庭は、市教育委員会によると21年度は470家庭。全体の0・55%だが、17年度の54家庭から増えた。背景には、「PTAは任意加入で入会には意思確認が必要」と市教委が18年度に通知を出したことや、活動の負担が重いと感じる人が増えたことがあるとみられる。改革①「PTAダイエット」で委員会スリム化 一方、2年前に「PTAダイエット」を始めた大谷場東小学校(南区)のPTAでは、積極的に活動に参加する人が多くなった。 最初に改革に着手したのは、「委員会」だった。 「広報」「文化」「選考」の各委員会(10~15人)と、「地区委員会」(約20人)があった。福戸美帆会長によると、子ども1人につき1回は委員をやるノルマがあり義務感での立候補が多かったという。 そこで「広報紙の発行は年1…この記事は有料会員記事です。残り1575文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

豪雨被災の家屋廃材活用した移動販売車 被災地巡り癒やしの香りと味

 2020年の熊本豪雨で被災した家屋の廃材を活用したコーヒーの移動販売車が、被災地を巡っている。コロナ禍で人と人とのつながりが薄れたことを憂えたビジネスマンと、民家の貴重な「古材」が災害ごみになることを悲しんだ被災者の思いがつながった。挽(ひ)きたての香りと味が被災者を癒やして回る。 車の名前は「移動焙煎(ばいせん)車」。サントリーホールディングスが手がける。5日に熊本県八代市坂本町でお披露目した後、8日に球磨村、9日に錦町、10日に人吉市と豪雨の被災地を巡り、無料でコーヒーを振る舞った。挽きたてのコーヒーに、被災者からは「うまかね」「ありがたか」と感謝の声が上がった。 きっかけは20年のコロナ禍だった。 デジタルマーケティング部(東京)に勤務する杉谷憲一さん(56)は、取引先の飲食店が打撃を受ける中、「単に売り上げが減っているだけでなく、良質なコミュニケーションが失われているのでは」と危機感を強めた。 同社が扱っている素材の中で、消費者に直接届けて喜ばれるものとして「コーヒー豆」を思いつき、焙煎機を備えた移動販売車を整備して、外に打って出た。 東京で1号車が順調に稼働しはじめた昨年、釣り好きの杉谷さんがたまたま訪れた八代市坂本町で、溝口隼平さん(40)に出会った。 球磨川の氾濫(はんらん)で…この記事は有料会員記事です。残り516文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

農業塾でプロの現場体感 大阪の農家有志が開講、2期生募集

 新たに農業を始めたい人に農作業や農業経営を伝授する農業塾を、大阪府富田林市の農家の有志が始めた。研修期間は約1年間。ダイコンやタマネギなど様々な野菜の栽培を基礎から教え、就農に向けて現役農家ならではの助言もする。高齢化に直面した地域の農業を守るために、農家自らが立ち上がった。今夏に開講する2期生を募集中だ。 富田林市ではナスやキュウリ、エビイモといった都市近郊農業が盛んだが、担い手の高齢化や後継者不足に悩まされてきた。 こうした課題を解決して市の農業を発展させようと、農家有志で2015年に「富田林市の農業を創造する会」を結成。府などの事業に協力し、新規就農希望の研修生を受け入れてきた。さらに、自分たちで次世代の農の担い手となる人材を育てようと、クラウドファンディングも利用して資金を集め、昨夏に「きらめき農業塾」を開講した。 現在は1期生として、地元の南河内地域や大阪市などから20代~50代の17人が受講している。受講生ごとに農場の区画を割り当て、先輩農家の指導をうけ、トマトやナス、キュウリ、ジャガイモなどを栽培。収穫した農産物をマルシェで販売する体験もした。後半では、農業塾第1期生の感想や、第2期の詳細を紹介します。 プロの現場を体感してもらう…この記事は有料会員記事です。残り875文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル