社会

学生支援機構は「悪意の受益者」 奨学金返済めぐり、高裁が返金命令

 奨学金の返済をめぐり、日本学生支援機構が半額の支払い義務しかない保証人に全額を請求したのは違法だとして、北海道内の保証人ら2人が過払い分の返金と損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が19日、札幌高裁であった。大竹優子裁判長は「機構は、過払い分が不当利得と認識しながら支払いを受けた『悪意の受益者』というべきだ」と指摘。過払い分に利子を加えた計約200万円を支払うよう機構に命じた。損害賠償請求は一審に続いて退けた。 昨年5月の一審・札幌地裁判決は、保証人が複数いる場合に各保証人が返済義務を等分に負うとされる民法上の「分別の利益」を理由に、半額を超える請求分を機構の不当利得だとして計約139万円の返金を命じた。一方、損害賠償請求については「直ちに不法行為に当たるとはいえない」として退けた。機構側が控訴し、原告側も付帯控訴していた。 原告は、教え子の保証人だった北海道小樽市の元高校教諭の男性(76)と、夫(故人)がおいの保証人だった札幌市の女性(69)。一審判決によると、男性は約94万円を請求され、約65万円を支払った。女性の夫は生前、請求された約242万円を全額支払った。いずれも借りた本人の父が連帯保証人だったが、支払い能力がなかった。 一審判決は、分別の利益は保…この記事は有料会員記事です。残り435文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「男尊女卑わかっていれば受けなかった」医学部不正入試、戻らぬ時間

 順天堂大医学部の入試を受けた女性13人が、「性別を理由に差別された」として賠償を求めた訴訟。東京地裁は19日、13人に計約805万円を支払うよう、順大に命じた。 「法の裁きによって不法行為と認められたことはよかったですが、それでも時間は戻ってきません」。原告の女性の1人は判決後、朝日新聞の取材にそう答えた。 女性は高校1年の頃から片道1時間半かけて医学部受験向けの東京都内の予備校に通ったという。出題傾向が大学ごとに異なるため、順大の対策講座を受け、赤本も10年分以上買って勉強した。浪人時代はアルバイトをしながら受験勉強をしたという。 「入試対策に要した時間、授業料や受験料、それらのお金をまかなうために勉強時間を削ってアルバイトした時間や労力。合計すると(判決で認められた)慰謝料の金額の何十倍にもなります」 女性は「私立の中で学費捻出が可能な大学」として順大を受験したといい、「初めから男尊女卑の大学とわかっていれば、絶対に受験校から除外していた」と断言する。 裁判の原告になったのも「わかっていれば受けない入試に向けて多大な労力を割き、大事な10代、20代の時間とお金を無駄にした」ことへの憤りからだった。■順天堂大、19年度入試の合…この記事は有料会員記事です。残り877文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「女性差別」入試、順大に805万円賠償命令 計13人に 東京地裁

田中恭太2022年5月19日 11時13分(2022年5月19日 15時37分更新) 順天堂大医学部の入試を2011~18年度に受験した女性13人が「性別を理由に差別された」として、慰謝料など計約5500万円の損害賠償を求めた集団訴訟で、東京地裁(加本牧子裁判長)は19日、13人に計約805万円を支払うよう順大に命じる判決を言い渡した。 医学部入試では18年、複数の大学で女性を不利に扱うなどする判定基準を設けていたことが発覚し、訴訟も相次いだ。今回の弁護団が担当する3件の集団訴訟では初の判決だという。 判決は、性差別を禁じる憲法について「私大も趣旨を尊重する義務を負う」と指摘。女性を一律に不利に扱う基準は「医師としての素質とは直接関わりがなく、不合理で差別的だ」と非難した。基準が隠されていたことで「順大を受験するか否かの意思決定の自由を侵害した」とも述べた。 慰謝料の金額については、順大が問題発覚後は対応を改善したことなどを踏まえ、受験1回あたり30万円と算定し、受験費用に加えて支払うよう命じた。 順大は「コメントは差し控える」としている。 順大に対しては、被害者に代わって訴訟を起こせる国認定のNPO法人「消費者機構日本」(東京)が受験料の返還義務の確認を求めて提訴し、勝訴判決が確定している。今回はこの制度では対象外の慰謝料を含めた支払いを求める訴訟で、東京医科大、聖マリアンナ医科大に対する集団訴訟なども続いている。大学側が解決金を支払う和解が成立した例もある。(田中恭太)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

崩落した水管橋が一部復旧 昨秋以来、送水はじまる 和歌山

下地毅2022年5月19日 12時00分 和歌山市の紀の川にかかる六十谷(むそた)水管橋(547メートル)の中央部の60メートルが昨年10月に崩落した問題で、水管2本のうち1本が復旧したとして、市は19日午前10時に送水を始めた。 水管橋は、東西に流れる紀の川の南にある浄水場から北の市域に水を送る唯一の水路のため、崩落によって川以北の6万世帯(13万8千人)が1週間にわたって断水した。市は、水管橋の隣の六十谷橋(県道)にうかい水路をつくってしのいでいた。 崩落部を紀の川から撤去したり中央部をつなげ直したりする復旧工事は昨年12月に始めた。2本の水管を使って送水する完全復旧は、6月中旬を予定している。(下地毅)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「軽井沢」の言葉で胃がきりきり、手放せぬ薬 息子を失った母の悲痛

 「『軽井沢』という言葉を聞くだけで胃がきりきりする」 「歩道を歩いても不安」。 2016年に長野県軽井沢町でスキーツアーバスが転落し、乗員や大学生15人が死亡した事故の公判が5月17日と18日、長野地裁(大野洋裁判長)であった。事故の遺族やけがを負った被害者計35人分の調書が読み上げられ、事故から時間がたっても心身ともに癒えない傷を負い続けていることが示された。 事故は16年1月15日午前1時50分ごろ、軽井沢町の国道18号で大学生らのスキー客を乗せたバスが崖下に転落。大学生13人、運転手2人が死亡し、26人が重軽傷を負った。公判では、バス運行会社イーエスピー(東京都)社長の高橋美作被告(60)と、運行管理者だった同社の元社員、荒井強被告(53)が業務上過失致死傷罪に問われている。宝物だった娘 2日間の公判で、検察側は、事故で亡くなった乗客13人の遺族(15人)と、けがをした20人分の供述調書を読み上げた。 大学4年の娘を亡くした父親…この記事は有料会員記事です。残り1081文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「真相解明へ全力」警察庁長官 山梨・道志村での女児死亡事案で

2022年5月19日 12時19分 山梨県道志村で見つかった人の骨が、行方不明になっていた千葉県成田市の小学生小倉美咲さん(不明当時7)のものと判明したことについて、警察庁の中村格長官は19日の記者会見で、「県警が捜索活動を継続しており、引き続き事件、事故の両面から事案の真相解明にむけ全力をあげて取り組んでいく」と述べた。 美咲さんは2019年9月、家族らと訪れていた道志村のキャンプ場で、ほかの子どもたちを追いかけて広場を離れたあと行方不明になった。 当時の捜索で発見できなかったが、今年4月以降、キャンプ場から約600メートル離れた山中で人の骨や子ども用の靴、衣類などが相次いで見つかった。そのうち肩甲骨のDNA型鑑定の結果、美咲さんと一致し、県警は美咲さんが死亡したと判断した。 中村長官は「ご冥福をお祈り申し上げ、ご遺族の方々にお悔やみを申し上げる」と述べた。その上で、「美咲さんが行方不明になった当時、県警は消防団やボランティア、自衛隊などの協力を得て、地形などを勘案しながら必要な捜索を実施した」と説明した。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

きゃりーぱみゅぱみゅさん、銚子電鉄を応援「問題ないと楽しくない」

 「問題だらけ」と自ら発信する銚子電鉄(千葉県銚子市)が、歌手きゃりーぱみゅぱみゅさんの地方創生企画とのコラボレーションで、観音駅をパステルカラーにリニューアルした。 18日に開いた記念イベントには、きゃりーさんも登場。「問題を乗り越えた先に次のステージが待っている。人生、問題がないと楽しくない。銚子電鉄さんも楽しいことばかりではないと思いますが、全力で応援します」とエールを送った。 きゃりーさんはメジャーデビュー10周年を記念する全国ツアーに合わせて、「地方から日本を元気に」をテーマに地方創生企画「ローカル パワー ジャパン プロジェクト」を展開。コロナ禍からの復活に取り組む各地の企業などと連携し、きゃりーさんの世界観を取り入れた商品などを発売、発信している。 銚子電鉄は、きゃりーさんのヒット曲「もんだいガール」の世界観とコラボ。「銚子電鉄はもんだいガール(がある)」などと書かれたTシャツや、1日乗車券を販売し、大型連休からは、車内をバルーンやぬいぐるみで飾った「問題だらけの”もんだいがある”きゃりー電車」も運行している。 老朽化した観音駅のリニュー…この記事は有料会員記事です。残り251文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

的中率は4分の1、発表後どうすれば? 線状降水帯予測、6月から

 集中豪雨をもたらす「線状降水帯」の予測情報の発表が6月に始まるのを前に、気象庁は18日、情報の詳細を公表した。予測は全国を11地方に分けた広域で、線状降水帯による大雨の可能性が高まった場合、その半日ほど前から伝える。現状、予測した地方で発生する的中率は4分の1程度というが、同庁は豪雨災害への危機感を少しでも早く高めてもらうため活用を呼びかけている。 線状降水帯は、水蒸気を大量にふくんだ空気が狭い範囲に流れ込んで同じ場所で積乱雲が次々と発生し、線のように連なることで、短時間で集中的な豪雨をもたらす。 同庁は6月から、実際に線状降水帯が発生した場合に出す「顕著な大雨に関する情報」の発表基準を満たすような雨量や雨域が発生する可能性が高まった場合、発生の半日前から6時間前に予測情報を出す。 気象庁は警報や注意報に先立って警戒を呼びかけるためにホームページなどで発表している「気象情報」で示す。これを受け、住民は、テレビやネットで伝えられる報道機関のニュースで情報が出たことを知ることができ、少し先の避難行動などを考えることができる。自治体は、早めに避難所の開設準備などを進めることが期待されている。 予測情報が出るのは早い段階のため、その時点の気象状況はケースによって異なるとみられる。このため同庁は、予測情報は「大雨災害への心構えを早めに高めてもらう」ものと位置づけている。長谷川直之長官は同日の会見で、「線状降水帯がひとたび発生すれば災害に結びつくおそれがある。発表されれば危機感を高めていただきたい」と述べ、避難所や避難経路の確認などを求めた。 こうした予測情報を出すことになった背景には、近年、線状降水帯の発生に伴い大きな被害が出る豪雨災害が相次いでいることがある。2015年9月、鬼怒川が決壊し茨城県常総市で大規模な浸水被害をもたらした関東・東北豪雨や、18年7月の西日本豪雨、熊本・球磨川が氾濫(はんらん)した20年7月の豪雨などでも発生している。 線状降水帯の予測には空気中の水蒸気量のデータが必要だが、観測機器が少ないなどの理由で予測は難しかった。同庁は観測網を整備し、スーパーコンピューター「富岳」も活用して予測を可能にしたが、精度は発展途上にある。 現状では「九州北部」「中国」といった広域での予測にとどまるほか、予測を出しても発生しない「空振り」や、発生を予測できない「見逃し」も想定される。同庁が19~21年に「顕著な大雨に関する情報」の発表基準に達した事例で検証したところ、予想した地方で発生を的中できたケースは4回に1回程度。「見逃し率」は、3分の2程度だったという。 同庁では今後も予測精度の向上に取り組み、来年には発生30分前での予測を目指す。29年には、市町村単位での危険度を半日前から地図上でみられるようにする構想だ。(吉沢英将)Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

被服支廠、全棟保存へ 国所有分も耐震化方針 広島最大級の被爆建物

 広島最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(広島市南区)をめぐり、現存する全4棟が事実上、保存される見通しになった。広島県が所有する3棟に続き、国所有の1棟の耐震工事の実施が固まった。一時は解体論も出ていたが、被爆者の高齢化が進むなかで建物の価値を再考する機運が高まったことが異例の方針転換につながった。 原爆の爆心地から南東2・7キロにある被服支廠は、1913年につくられた国内最古級の鉄筋コンクリート建物。旧陸軍の軍服の製造拠点で、原爆投下直後は臨時救護所にもなった。 築100年を超えて建物の劣化が急速に進む一方、近年になって文化庁や有識者などが「建築史的な価値がある」「国の重要文化財級の価値がある」との見解を相次いで表明。県は昨年に1~3号棟の耐震化方針を国に先んじる形で決め、国所有の4号棟の存廃が残る課題とされてきた。 こうしたなか、4号棟を管理する財務省中国財務局が、県と足並みをそろえる形で事実上の建物保存を行う方針を新たに決めた。 関係者によると、中国財務局は昨年度に劣化状態の調査を実施。建物全体の強度は十分あり、崩壊の危険性は低いとの結論を出した。柱や梁(はり)も、現代のコンクリートと比べて、遜色ない強度だったという。 ただ、耐震性能を示す指標は最も低い場所で、震度6~7程度の地震に耐えられる値を下回り、最低限の耐震補強が必要になったという。ほかに屋根瓦や鉄扉の腐食が見つかったため、瓦は全面的なふき替え、鉄扉は台風に備えた脱落対策も行う必要があるという。 このため、関係者によると…この記事は有料会員記事です。残り513文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

中高生の英語力、最高は福井 文科省調査、50ポイント差の県も

 全国の公立中学・高校生で昨年度、政府がめざす英語力の水準に達した中3生は47・0%、高3生は46・1%で、いずれも「50%以上」とする目標を下回った。文部科学省が18日に「英語教育実施状況調査」を公表した。ただ、前回調査からは3ポイントほど向上。発音の学習などでICT(情報通信技術)を採り入れている学校も増えている。 調査は、コロナ禍の2020年度を除いて13年度から毎年実施。政府は中3で「英検3級相当以上」、高3で「準2級相当以上」の生徒を50%以上とする目標を掲げる。英検などを受けていない生徒については、力が指標に達しているかを教員が判断しており、前回調査から中3は3・0ポイント、高3は2・5ポイント上昇した。 都道府県別でみると、福井県が中3で85・8%、高3で59・6%と、ともに最高だった。最も低いのは中3が佐賀県(31・9%)、高3が福島県(36・3%)だった。 1人1台の情報端末を配るGIGA(ギガ)スクール構想が始まり、ICTの活用状況も調べた。端末を使って発表や会話をしたという中学は86・2%(前回比42・2ポイント増)、高校は69・7%(同22・3ポイント増)。発話や発音を録音・録画する活動をした中学は66・5%(同29・9ポイント増)、高校は49・7%(同15・5ポイント増)で、大きく伸びた。 ただ、オンライン会議システムなどで遠隔地の生徒らと英語で交流する活動は中学7・7%(同4・5ポイント増)、高校15・9%(同10・0ポイント増)にとどまった。担当者は「1人1台の環境を生かし、活用に取り組んでほしい」と話している。 都道府県別の調査結果は次の通り。(桑原紀彦)■都道府県別の中3、高3の英…この記事は有料会員記事です。残り773文字有料会員になると続きをお読みいただけます。Source : 社会 - 朝日新聞デジタル