第1日程が終わった初めての大学入学共通テストで、英語の出題傾向の変化が話題になっている。「聞く・話す・読む・書く」の4技能を測る民間試験の活用が見送られた一方で、実用英語やリスニングの重視が鮮明になった。文法・訳読が中心だった英語教育の時代は、これで終わるのか。 「英語は予想以上に大量で読み切れなかった」。首都圏の私立高校3年の男子生徒は、そう話す。埼玉県の公立高の女子生徒は「リスニングが難しすぎ。4人で会話する問題は、誰が話しているかもわからなかった」と戸惑う。 共通テストの英語は、昨年の大学入試センター試験から大きく変わった。 配点は、4技能の民間試験の活用が見送られたことで、リーディングは昨年の200点から半減し、リスニングは50点から倍増して、どちらも100点になった。 リスニングに英国や日系の話者が登場 出題内容も変わった。リーディングは発音やアクセントの単独問題はなく、全体で6ページ増えた。SNSやホームページなど現代の多様なデジタル情報から読み取ったり、複数の資料を元に考えたりする実用的な出題が目立ち、英文の内容をストレートに問うような出題は減った。 リスニングは、前回までは音声が2回流れたが、今回は6問中4問が1回のみに。聞いた内容を元にワークシートを完成させたり、発言内容に適したグラフを選ばせたり、聞き取った内容を元に考えさせる出題が目立った。また、米国に加え、英国、日系など発音が異なる国の話者が登場した。 平均点(中間集計)はリーディング、リスニングともに、昨年のセンター試験(確定結果)並みだった。 駿台予備学校の英語科講師、増田悟さんは「読む量も圧倒的に多く、必要な情報を取得して処理する力を問うような出題が目立った。共通テストの試行調査で予測されてはいたが、実践練習が不足していた生徒は苦戦したのではないか」という。一方で「英文そのものや設問は比較的素直なものが多かったので、処理にかかる時間が短縮され、平均点は例年並みに落ち着いたのでは」と分析する。 河合塾の英語科講師、小森清久さんはリスニングについて「世界で多様な英語が話されていることを意識させる狙いの出題だ。今後の受験生は、英BBC、米CNNなど様々なメディアで英語を聞き、論文発表などいろんな場面で生きる英語を、楽しく学ぶ必要がある」と語る。 学習指導要領では、思考力・判断力・表現力を伸ばすことをめざし、「聞く・話す・読む・書く」の英語4技能を活用した、使える英語を意識させている。共通テストの変化は、高校の授業にどう影響するのか。 「今回の共通テストは、高校に授業改善を求める強いメッセージになるだろう」というのは太田光春・名古屋外国語大教授(英語教育)だ。「プレゼンテーション資料を完成させる出題などは、授業でのプレゼン経験の有無で差が出る。英国の場面設定も多く、英国独特の単語のつづりなども使われた。旧態依然の文法・訳読の授業では対応できない。多様な教材や言語使用の場面を採り入れた授業が求められる」 東京都立日比谷高校の英語科教員、中村隆道・主幹教諭は、高1から米CBSのニュースを見て、生徒同士で議論する授業を数年前から行っている。「最初は生徒も周りの教員も受験勉強につながるのかという雰囲気があったが、今回の共通テストで、必要性がより明確になった。実用的な英語を使う授業の方が、生徒も生き生きと学ぶ。4技能をバランスよく教えれば、全体の英語力は確実に上がる」と話す。 実用性を懸念する声も 一方、英語の問題の様変わりを懸念する声もある。…
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