社会

BBQから帰ると警察官が…やまぬ飲酒運転、検挙された男性の言い訳

有料記事鈴木優香 太田悠斗2023年9月10日 12時00分 飲酒運転がなくならない。2006年、飲酒運転の車に追突され3児が死亡した福岡市の事故を受けた厳罰化などで、検挙数は減少してきたが、底を打ち増える気配だ。飲酒運転対策に取り組む福岡県警は今年8月、検挙された人たちの講習を朝日新聞に公開した。そこでは「飲酒運転をした理由」が赤裸々に語られていた。 「帰りたかったんでしょうね。気づいたら家に着いてました」 同県飯塚市の筑豊自動車運転免許試験場。20代男性が促され、検挙の経緯を淡々と語り出した。 重度の酒気帯び(呼気1リットルあたりアルコール0・25ミリグラム以上)で検挙されれば、免許取り消しとなる。最低2年は免許を再取得できず、再取得するにも今回のような「飲酒取消処分者講習」の受講が全国で必須だ。 男性は「検挙当日は、バーベキュー会場に車で向かい、友人と酒を飲んだ」と明かした。酔っていて記憶はないが、自宅に車で戻ったところ、警察官が待っていたという。「会場で通報されて、車のナンバーで自宅を割り出されたのかも。車に乗る前に止めてくれればいいのに」検挙者の中には「海の中道大橋飲酒事故」の地元の先輩も 飲んで運転したら事故を起こすかも――講習を受けた男性3人の中で、そんな不安を語った人はいなかった。 46歳の電気工事業の男性は…この記事は有料記事です。残り1739文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

自衛隊「違憲」の長沼判決50年 原告側弁護士「司法の独立守った」

上保晃平2023年9月10日 13時00分 自衛隊を違憲とした唯一の判決である「長沼ナイキ基地訴訟」の札幌地裁判決から50年を迎えたのを記念して9日、札幌市で集会があり、約230人が参加した。登壇した当時の原告側弁護士は「戦争する国づくりを危惧する国民の力で判決を勝ち取った」と振り返った。 訴訟では、国が北海道長沼町でミサイル基地(現・航空自衛隊長沼分屯基地)の建設を計画し、予定地の保安林指定を解除したのに対し、地元住民がその違法性や自衛隊の違憲性を争った。 1973年9月7日の地裁判決は、自衛隊を憲法9条に違反する「戦力」と認定し、保安林指定の解除も違法とした。その後の上級審は自衛隊の憲法判断を避け、原告の訴えも退けた。 原告弁護団の一人だった内藤功弁護士は集会で、「裁判長や世論が裁判干渉と戦い、司法の独立を守った。地裁判決は軍備を拡張しようとする動きに深刻な影響を与え、封じ込めてきた」と述べ、訴訟や判決の意義を語った。地裁判決を示した福島重雄元裁判長も姿を見せた。(上保晃平)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

大震災伝える100年前の週刊朝日、「末代保存」と記した祖父の思い

 死者・行方不明者10万5千人以上を出した100年前の関東大震災の直後に、惨状を収めた多数の写真とともに報じた写真グラフ誌や週刊朝日が、石川県加賀市の民家に保存されていた。冊子の末尾には、祖父の名前などとともに、「末代(まで)保存」と記されていた。 朝日新聞社史編修センターによると、見つかった写真グラフ誌は、大阪朝日新聞社が1923(大正12)年9月25日に発行した「大震災寫眞(しゃしん)画報 第二輯(しゅう)」(B4判相当、32ページ)と、同年9月9日発行の「週刊朝日」(28ページ)。画報は表紙や裏表紙が欠落していた。 画報には、火災で煙を上げる横浜や東京・本所付近の空撮写真のほか、焼け野原になった上野や浅草などの写真が多数掲載されている。週刊朝日は「死屍(しし)累々生(いき)地獄の如(ごと)し」などの見出しが見える大阪朝日の第2号外を表紙にあしらい、中面には「足柄山中街道の亀裂」と記された地割れの写真や、刻々と届く惨状を記した記事や、「本邦は世界の地震国」と題した解説記事などが並ぶ。 二つの冊子は、加賀市の建設業、前田利彦さん(67)が、母方の叔父の遺品として3年前に譲り受けた。古雑誌の束の中に入っていたという。関東大震災から100年の節目を報じるテレビ番組の映像を見て、同じような写真があると朝日新聞金沢総局に連絡を寄せた。 週刊朝日の裏表紙には、利彦さんの母方の祖父・高木正男さんの名前と金沢市の住所とともに、「末代保存」と記されていた。戦艦三笠の乗員だった祖父が残した資料 利彦さんによると、冊子を購…この記事は有料記事です。残り393文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

島根は人口860万人以上?ただし「神様含む」…自虐カレンダー発売

大村治郎2023年9月10日 10時15分 島根への自虐と愛を込めたアニメ「秘密結社 鷹(たか)の爪」の作者、FROGMANさんが島根県庁を訪れ、2024年版「鷹の爪×島根自虐カレンダー」の発売を丸山達也知事に報告した。 自虐カレンダーは11年に発売を開始。地元だけでなく、全国規模で人気がある。これまで「日本で47番目に有名な県。」「定休日じゃないです。人がいないだけです。」などの自虐ネタで島根をPRしてきた。 FROGMANさんは、錦織良成監督の映画「白い船」(02年公開)の制作スタッフとして来県したことなどをきっかけに島根に好感を持つようになり、県のふるさと親善大使「遣島使(けんとうし)」も務めている。 今回は八百万(やおよろず)の神が出雲に集まるとされる旧暦10月の「神在月(かみありづき)」を念頭にした「人口860万人以上(神様含む)」や、人口の少なさを逆手に取った「実は海がすっごくキレイ!…人がいないから」などの自虐コピーで島根を楽しく紹介している。 FROGMANさんは今回のカレンダーについて「若い人も楽しめるように、かわいいデザインにした。ぜひ手に取ってほしい。自虐ネタは尽きない」と話す。カレンダーは卓上版で、税込み1320円。県内の書店や道の駅のほか、ネット通販のAmazonなどで購入できる。(大村治郎)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

古墳だった法隆寺の植え込み 専門家も当初「半信半疑」 現地説明会

阪田隼人2023年9月10日 10時15分 世界遺産・法隆寺(奈良県斑鳩町)の参道脇の観光バス駐車場にある円形の植え込みから、横穴式石室や副葬品が確認され、9日、発掘成果を一般の人に公開する現地説明会が開かれた。植え込みが実は古墳だったと判明した意外性が話題を呼び、約700人もの参加者でにぎわった。 古墳は以前、樹木に覆われ、裾は石垣で囲まれていて、一見すると普通の植え込みにしか見えなかった一方、地元には「クスノキの舟」が出土したとの言い伝えがあった。「舟塚古墳」と呼んでいた町教育委員会は木棺が埋葬されている可能性があると考え、奈良大とともに昨春、発掘調査を開始。横穴式石室が見つかり、床からは鉄刀2本や矢じり、馬具、琥珀(こはく)玉、須恵器など多数の副葬品が出土した。 意外性のある調査結果が広く報道されたためか、この日の説明会には、町教委の想定以上の人々が足を運び、用意していた資料が足りなくなって急きょ印刷する事態になった。 参加者らを前に、奈良大文化財学科の豊島直博教授(考古学)は「最初の発掘調査の時は正直、古墳かどうかよくわからず、乗り気ではなかった」と半信半疑だったことを明かした。 出土した土器の年代から6世紀後半の古墳で、刀の配置などから「埋葬されているのは2人で、小豪族と推定している」と説明。今後について「石室の構造を詳しく調べ、この古墳から藤ノ木古墳(国史跡)や法隆寺にどのように歴史がつながっているのか、解明していきたい」と語った。 SNSで知り、訪れたという大阪府茨木市の山田めぐみさん(46)は「当初は専門家でも半信半疑だったが、伝承と実態が一致するという歴史のロマンを感じました」と話していた。(阪田隼人)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

花屋の店主がコミュニティーFM開局 被災地とつながり「わが町も」

 滋賀県甲賀市で初となるコミュニティーFM局が10日、放送を始める。「エフエム花」(周波数77・5メガヘルツ)。町の花屋の店主が、不思議な縁で東日本大震災の被災地とつながった。そこで流れるラジオにひかれ、「わが町にも」と踏み出した。 運営するのは、花屋「かずろう王国」の店主、中村一弘さん(57)。「かずろう」は、高校時代からのあだ名だ。店は水口城跡の近くで、江戸時代からある古民家にある。そこで中村さんは育った。 花屋の前の空き地に貨物コンテナを置き、機材を入れ、「エフエム花」のロゴが入ったパネルを掲げた。ラジオで流す音楽は、一部をレコードでかける。「音が全然違いますから」。そんなこだわりがある。 というのも、高校からバンド活動をしている音楽好き。「かずろうバンド」のリーダーで、ボーカル兼ギターとして活動してきた。 開局にたどりついたきっかけは、東日本大震災だった。甚大な被害を知り、何か支援がしたいと考えたときに「あ、おれバンドマンやったわ」。市内のホールなどでチャリティーコンサートを開き、義援金を20万円ほどためた。 どこに寄贈しようかと考えていた時、店に1本の電話が入った。 「音響の仕事をしてくれませ…この記事は有料記事です。残り816文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

東京の子どもの学力、本当に上がった? 平均上回る無回答率の背景は

データで読む東京都の教育⑦ 7月に結果が公表された、今春実施の全国学力調査。東京都は小6の国語と算数、中3の国語と数学と英語の全5教科で、全国平均を上回りました。この結果や課題について、阿部昇・秋田大名誉教授(教育方法学)に聞きました。   ◇ 率直に言ってよく健闘していると思います。設問別の正答率を見ても、算数や数学で改善が見られます。記述式の問題も良くできていて、都全体で授業が改善していると感じます。 正答率だけではなく、生活や学習状況について子どもや学校に尋ねる質問の結果からも、よい傾向がうかがえます。 子ども向けの「授業で自分の考えを発表する機会で、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組み立てなどを工夫して発表していたか」という質問では、「発表していた」は小6で29・9%、中3で27・4%で、全国平均より5~6ポイントほど高かった。 また、学校への質問でも「教員が授業で問題を抱えている場合、率先して話し合ったか」との質問に関して、最も頻度の高い「週1回程度かそれ以上」の割合が、小学校では48・8%で、全国平均より10・8ポイントも高かった。先生たちのつながりが強く、相談しやすい職場なのだと思います。 テストの点数が良いだけでは、好調な結果が一時的である可能性もありますが、こうした様々な面から見て、都全体で授業が改善されてきているのだと感じます。記事後半では、阿部さんから見た東京都の課題や改善策、保護者へのアドバイスなどもご紹介します 課題は、無回答率の高さです…この記事は有料記事です。残り1313文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

漱石に絵を教えた画家の市立美術館 存続求めてブドウ畑の地元が動く

 桃やブドウの産地として知られる甲府盆地の東部、山梨県笛吹市に2階建ての個性的な建物がある。美術団体「二科会」創立者の一人で、夏目漱石とも親しく交わった津田青楓(せいふう、1880~1978)の作品を集めた美術館だ。約半世紀前から続くこの館を閉じる構想を市が打ち出し、地元住民らが存続を求める署名運動を始めた。 「青楓美術館」は、青楓と親交のあった故・小池唯則氏が私財を投じ、1974(昭和49)年に開館した。青楓の洋画や日本画、書など700点以上を収蔵、公開している。開館時は200点ほどだったが、愛好家からの寄贈により、青楓の長年にわたる作品がそろう。 84年に小池氏の遺族側から建物と敷地、収蔵作品が旧一宮町に寄贈されて町立美術館となり、「平成の大合併」を経て現在は笛吹市の美術館となっている。ブドウ畑に囲まれたおしゃれなたたずまいが印象的だ。田園地帯に送り込んだ芸術文化の風 鉄筋コンクリート造り2階建…この記事は有料記事です。残り1414文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル

リアルの場の力を 宇野常寛さんが考える「遅いインターネット」の次

 ネット空間における言論のファスト化が進み、特にSNSでは分断や排外主義が加速している――。評論家で編集者の宇野常寛さんは、そんな問題意識で近年、じっくり思索する「遅いインターネット」の必要性を説いてきました。この春からは、ネットを飛び出して街に居場所を作ろうという「庭プロジェクト」を立ち上げています。狙いは?と聞くと、「イーロン・マスク問題への応答ですね」。そのココロは。なにかとタイパが求められるファスト社会で、「スロー」を重視する動きが相次いでいます。ときには立ち止まって、じっくり、深く……スローをめぐる価値、思考の意味を問い直すインタビューシリーズです。 ――「遅いインターネット」を提唱されて久しいですが、実現できていますか? 全くできていないですね。問題提起にとどまっています。 「遅いインターネット」は、一つは、紙の文芸誌や論壇誌に匹敵するような重厚で超長い原稿を定期的に無料で公開していくこと。これは1990年代のインターネット黎明(れいめい)期の理想でもあると思っていて、チャレンジしてきましたが、広がってはいません。 ――なぜ無料で公開を? 僕はSNS以前の初期のインターネットが好きなんですよ。ネットサーフィンという言葉がまだ現役だった頃、検索していったら誰かの書いた長文が出てきてそれがすごく面白いみたいな経験をしたことって少なからずあるでしょう? 今はグーグルで検索すると、アフィリエート目的の広告サイトや自動生成広告ばかり出てくるけれど、当時は、発表する場のない思いをひたすらつづったものとかがいっぱいひっかかってきた。ああいった時代のインターネットの良さをどう現代にアップデートするか。僕なりに試行錯誤し、必ずしもうまくいかなくてもやってみよう、と。「考えないための言葉」の流通に危機感 今のインターネットは速すぎて、人間を考えさせない装置になっている。世界中がそれに侵食されつつあるからこそ、長い記事をゆっくり読んでほしいという考え方ですね。 もう一つが、ワークショップ。世の中に一言ものを申したいけれど、スキルが足りなくてできずにいる人たちに、自分の考えをある程度体系的に発信し、ちゃんと残るものになっていくスキルを共有しようという講座です。もう足掛け4年くらいやっていて、最近はこちらに力を入れています。若い学生から50代まで参加していて、好評です。 「遅いインターネット」を言い始めたのは、2017年ごろから。米国でトランプ大統領が誕生し、英国の欧州連合(EU)離脱交渉が始まった時期です。まさにその言葉を冠した著書を出したのが、コロナショックが世界を襲った20年2月。世界的な混乱や、検索しても出てこない未知のものへの恐れ・不安につけ込む形で、敵対している人や団体をおとしめようという流れにコロナ禍は最大限に活用された。最たるものが前代未聞の米連邦議会襲撃事件だったと思います。アテンションエコノミーに拍車がかかり、インターネットはますます速くなってしまいました。 だから、忸怩(じくじ)たる思いを抱えながらやってきました。 ――「遅いインターネット」という問題提起のきっかけは? 僕が国内の言論やジャーナリズムにコミットしていく中で、閉塞(へいそく)や居場所のなさを感じ始めたためです。民主主義の前提となる世論形成のメカニズムが揺らぎ始めているという危機感もありました。 僕よりちょっと上の世代で、かつては是々非々で物事を語っていた中道的な人たちが、左傾化もしくは右傾化していったんですよ。 例えば選挙のたびに「だからリベラルはだめなんだ」と、後出しジャンケンで弱い方にだめ出しをすることで、自分たちを賢く見せるようなパフォーマンスでお金を集め、誰かをおとしめる快楽を読者に提供するようになりました。 そこまでひどくなくても、単純に今のSNSでは、ある政治勢力をおとしめるようなことをちょっとユーモラスに、できる限り汚い言葉や、読んだ相手が傷つくような表現で、適切なハッシュタグをつけて投稿する。するとその敵対勢力の人たちが、瞬く間に何十もの「いいね」をつけてくれます。 一時的にでもいいから誰かに認められたいと思った人が簡単に承認を獲得する方法が、政治的に過激な発言になっているわけです。そうして「ものを考えるための言葉」ではなく、「考えないための言葉」の方が流通していきました。国内言論の後退だと思います。その状況にすごくうんざりしました。 プラットフォーマーの人たちと話をすると、冗談混じりに「宇野さんももっとリベラルを批判すれば客がつきますよ」みたいなことを言われたりするんですよね。実際にそういった肌感覚があるのでしょう。ただ、僕はそっちには一切手を染めなかった。それがたぶん、数は多くないかもしれないけど、一部の読者の信頼を獲得してきたのだと思います。 我々は、戦時下で人が人を手にかけた20世紀や、1960年代の「政治の季節」への反省から、時に左翼的であることを恐れてはいけない、しかし左翼的であることが目的であってはいけないという、吉本隆明氏的なテーゼを前提としていたはずなのに、その前提が壊れつつある。自分たちが敵を殴る快楽を手にするためなら、半世紀以上前の教えを忘れてもいいんだと思っている人たちが少なくありません。 僕が批評や言論に興味を持ち始めたのは小学校高学年~中学生の頃でした。戦後民主主義を批判する新保守派が、朝日・岩波の戦後民主主義的な建前を笑い、その芸が1987年に始まったテレビ朝日系の「朝まで生テレビ!」でも展開されていました。あれはあれで問題提起的な側面が確かにあったと思いますが、役割はすでに終えた。なのに、初期の「朝生」で使い古された言説が今、コピー・アンド・ペーストして再現され、ネット課金につながっている。非常に貧しい状態になってしまっている。 とはいえ、うんざりして引きこもって半ば引退してしまうには僕はまだ早いので、世の中に一石を投じてみようと思った。日常の情報との付き合い方に問題提起をすることで世の中を変えていこうというのが、「遅いインターネット」だったんです。 考える量が少ない人の方が、速いインターネットに身を任せてしまう。情報の内容ではなく、タイムラインを追うだけだとイエスかノーかだけなので、思考もわずかで済んでしまう。だから僕はむしろ、思考の速度や量を維持するために、拙速な反応は控えなきゃいけないということですね。今春始動の「庭プロジェクト」とは ――最近はさらに、「庭プロジェクト」に取り組み始めたそうですね。どのようなものでしょう? こういったアテンションエコノミーと承認の交換のゲームが作用しづらい環境を都市の実空間に埋め込もうというプロジェクトで、今年4月に始めました。まだ議論の最中ですが、実空間に居場所を作ることで、SNSでの承認の交換という快楽への依存を相対化する都市開発のコンセプトを作っていくイメージです。 ――もはやインターネットから飛び出していく試みですね。 僕はコロナ禍以降、街づくりプロジェクトの外部ブレーンをやったり、空間について考えたりすることがすごく多かったんですよ。そこで知り合った官民の仲間たちや研究者がたくさんいて、問題提起的なプロジェクトをしっかりやりたいという話になったんです。学生も参加して議論しています。 街づくりにかかわって思ったのが、常時接続の端末をみんなが持っている現在、空間の性質がかなり変わってしまっている。なのに対応した空間設計や都市開発の議論がなされていません。例えば観光地の絶景スポットにつけられたハッシュタグを目的に歩いている人たちって、そこで目にするものや手に触れるものに関心をあまり払わないわけですよね。「インスタ映え」という言葉が象徴するように、サイバースペースの支配下に実空間があるわけです。 そうではなく、実空間の力を相対的に強くすることによって、今のプラットフォームの支配に一石を投じることができるんじゃないかと。 スマートシティー化の波は日本にもやってくるでしょう。必ずしも順調な社会実験ではないのに、あまり知られていません。先行する米国ではむしろ、批判的な検証も多くなされています。例えば米アルファベット(グーグルの親会社)の子会社がスマートシティー化に乗り出し、住民の個人情報流出リスクが大問題になりました。日本が無邪気にフェイスブックやツイッターを重視してきたことを考えると、同じようなことが日本でも起こり得るのではないか、という危機意識も芽生えました。 ――プラットフォームに対抗する空間をつくる先に、何を見据えているのでしょう。 超具体的に言うと、「イーロン・マスク問題への応答」なんですよ。 彼がツイッター社を買収して…Source : 社会 - 朝日新聞デジタル

「女性もトランスジェンダーも共に」 ウーマンズパレード、大阪市で

花房吾早子2023年9月9日 18時00分 「夫婦別姓を認めろ」「男性にも性教育を」――。ジェンダー平等を求めて声を上げる「ウーマンズパレード」が8日夜、大阪市であった。新阿波座公園(西区)で集会を開いた後、難波駅近くまで約30人が練り歩いた。 集会では、社会福祉士や原発避難民、音楽家など様々な立場の女性たちがマイクを握った。 男性として生まれ、女性として生きる弁護士の仲岡しゅんさん(38)は、自身も含めたトランスジェンダーがヘイトクライムにさらされている現状を訴えた。「今の社会は、シスジェンダー(生まれた時と現在の性別が一致している)で異性愛の男性を基準につくられている」として、「女性もLGBT(性的少数者)も抑圧されている存在として連帯したい。共に闘いましょう」と呼びかけた。 大阪市東住吉区の岡崎あきらさん(42)は、パレードの先頭を歩いた。男性として生まれ、女性として生きるトランスジェンダー。大阪府富田林市でマイノリティーの居場所を作っている。「気持ちよく歩くことができた。人権が守られる社会を実現したい」(花房吾早子)有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんSource : 社会 - 朝日新聞デジタル