「『救済新法』は誇大表示」 消費者法の第一人者が語る期待と注文

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を踏まえ、悪質な寄付の勧誘を規制する新しい法律が10日、参院本会議で可決、成立しました。消費者法の第一人者で、元国民生活センター理事長の松本恒雄・一橋大名誉教授はこれまで手つかずだった問題に切り込んだ点は評価しつつ、メディアが使う「被害者救済新法」という呼び名には異を唱えます。新法の評価と今後の課題を聞きました。

――まず、内容をどのように評価しますか。

 「従来は野放しだった寄付を法律で規制したのが新法のポイントです。宗教団体に限らず、寄付を集める団体に共通のルールを設けたのは大きな前進です。一方で、懸案だったマインドコントロール下の寄付が救済対象になるかは不透明なままであるなど、被害の回復に役立つかどうかは疑問が残りました。全体の評価は期待を込めてですが、ぎりぎり及第点の60点です」

――「規制」と「被害救済」の二本柱のうち、救済が弱いのですね。

 「寄付を取り消すことができる禁止行為として定められたのは、霊感商法的な手法などで相手を『困惑』させる類型が消費者契約法から一部コピーされただけです。困惑とは、どうしてよいかわからない状態、精神的に自由な判断ができない状況という意味です。勧誘する者の勧誘行為の結果として困惑させられる場合を念頭においています。すでに困惑している状態につけ込んで寄付をさせるだけで、新たに困惑させるわけではない場合には適用できないので、救済の対象が狭いと感じます」

 「教団の場合も最初に勧誘を受けた時は困惑しているかもしれませんが、どこかの段階で勧誘行為の結果としての困惑状態はなくなってしまう。それどころか自ら進んで寄付をする。こうしたケースが救済できるかは怪しい」

「規制新法」の方が正しい

――高額な寄付によって家計が破綻(はたん)し、家族が困窮する深刻な問題もあらわになりました。政府・与党は、同じ家族といえども本人の自己決定権財産権を侵してはならないという立場から、限定的な救済の制度を設計しました。

 「子どもや配偶者が養育費などを受け取れる範囲で取り戻せる仕組みですが、たとえば両親が信者の未成年の子どもが裁判を起こすのは実際は難しい。また、取り戻せたとしても金額はたいした額ではありません。家族の救済につながるか疑問です」

 「マスコミは『救済新法』と…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment