「そのうそ、ほんと?」 認知症の女性に問われた介護のあり方

 特別養護老人ホーム「よりあいの森」など福岡市内3施設の統括所長を務める村瀬孝生さん(58)は35年以上、介護の現場で働いてきました。いつもお年寄りの言葉に触発され、介護について考えてきたそうです。たとえば、70代の認知症の女性から言われた、こんな言葉――。

 そのうそ、ほんと?

村瀬孝生さんプロフィール

 むらせ・たかお 1964年生まれ。島根県出身。両親の郷里の福岡県筑豊地方で中学・高校時代を過ごす。東北福祉大学を卒業後、飯塚市内の特別養護老人ホームに就職。95年、福岡市の宅老所よりあいに転職した。現在、よりあい、第2宅老所よりあい、特別養護老人ホーム「よりあいの森」の3施設の統括所長を務める。介護支援専門員。著書に「シンクロと自由」「おしっこの放物線」「ぼけてもいいよ」など。

 村瀬さんは、お年寄りがふと口にする言葉から、自分の仕事を見つめ直してきた。

 26年ほど前、認知症の高齢者らの通所介護施設「第2宅老所よりあい」(福岡市南区)の所長になったころ。認知症が進行していた70代の女性がいた。すぐ服を脱ぐなどしてしまい、言葉は「うそ」「ばか」くらいしか出なかった。

 どのように接すればいいのかわからず途方に暮れ、「ご自宅にもうすぐ送りますね」といった、その場しのぎの言葉をかけてしまった。すると「そのうそ、ほんと?」と聞かれた。衝撃だった。

 彼女は全て見抜いていたので…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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