「テロ」と呼ぶべきか 恐怖による過剰反応が破壊する民主主義

 安倍晋三元首相が街頭で銃撃され死亡した事件を「テロ」と呼ぶべきなのか。そして、犯行は民主主義を破壊しようとする行為だったのか。事件の動機や背景がまだよく見えないこともあって、人々の見方は揺れている。「キーワードは恐怖です」と語るテロ研究者の宮坂直史・防衛大学校教授に聞いてみた。

宮坂直史さん(防衛大学校教授)

 ――元首相が銃撃されたという初報に触れた瞬間、多くの人が「テロだ」と思いました。テロを研究してきた立場から、この反応をどう見ますか。

 「有名政治家が公衆の面前で撃たれたという情報に触れた人が『テロだ』と思うのは自然の反応であり、理解できます」

 ――テロリズムの語源は「恐怖」ですよね。そもそも、テロとは何を指すのでしょう。

 「テロとは政治的な目的を持って行われる違法な暴力の行使、または脅しです。たとえば日本の特定秘密保護法でも、テロリズムの定義には「政治上その他の主義主張に基づき……」という文言があります。テロが一般的な犯罪と異なる点としては、動機が政治的目的の追求であることと、パブリックな場で実行されることが挙げられます。テロは、人々に『見せる』形で行われるのです」

 「他方、一般的な犯罪の場合は私利私欲や私怨(しえん)が主な動機になり、プライベートな場で行われます。テロとは逆に、『隠す』形での犯行になります」

テロと一般犯罪、あいまいな境界

 ――今回の銃撃事件をテロとみなすかどうかは意見が割れています。特定宗教への恨みが背景にあるとの見方も浮上し、動機も分かりにくい状態です。

 「ここはテロという概念のや…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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