「ノラは身代わりに」 見つからぬ愛猫、潰れた家で女性は呼び続ける

 能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県珠洲市。発災から2週間以上が過ぎたいまも家族の一員だった愛猫を捜し続けている女性がいる。

 「ノラ、ノラ」。1階部分がぺしゃんこになり屋根だけが残る家屋の前で、中島由起さん(63)が飼い猫の名前を呼んでいた。地震発生後から毎日のように自宅のある同市宝立町鵜飼(うかい)に戻り、ノラがどこからか現れないかと声をかけ続けている。

 地震発生時、中島さんは家の居間で母親(83)とくつろいでいた。大きな揺れが収まると、家の中は崩れ落ちた家具などでぐちゃぐちゃに。どうにか部屋から、はいつくばるように母親と一緒に外へ逃げたが、ノラのいた部屋は完全に破壊されて屋根部分しか残っていなかった。

 ピンク色の首輪をしたメスのノラ。背中が黒色で、おなかは白色。9年ほど前に、野良猫から生まれた子猫をもらい受けたことから、中島さんが「ノラ」と名付けたという。

 長年、家族のように暮らしてきた愛猫について、中島さんは「これだけ家が壊れたのに私たちが生きているのは、もしかしてノラが身代わりになってくれたのかもしれない」と話す。

 それでも、ノラが何食わぬ顔でひょっこり出てきてくれないか期待して、また、名前を呼ぶ。竹花徹朗

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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