「ランドセルバンク」親の願い詰め 専門店が再生し提供

 【奈良】新型コロナウイルスの影響で生活が苦しい家庭の新1年生に、不要になったランドセルを回収して無償提供する「ランドセルバンク」の取り組みを、奈良市のランドセル専門店が始めた。集めたランドセルは店できれいにし、3月から希望者に提供する。

 ランドセルバンクは奈良市古市町の「ランドセルの木ノ下」を営む木下修平さん(41)が今月から始めた。もともと店の売り上げの一部で絵本や子ども服を保育施設に寄付してきたが、ランドセル専門店としてほかにできることを模索していた。

 転機は昨夏の九州豪雨。福井県で制服店を営む知人が、泥水につかってランドセルが使えなくなった子どもに、県内で古いランドセルを集めて寄付していると知った。木下さんは所属する奈良市の地域交流会「桜クラブ」にランドセルバンクの設立を相談。多くが賛同してくれた。

 今月8日、母校の奈良市立飛鳥中学校で初めてランドセルを回収した。約40個が寄せられ、次に使う人に向けたメッセージが貼られたものもあった。木下さんは「ランドセルには使っていた人や家族の幸せな思いが詰まっている。その思いを引き継ぎたい」と話す。

 集まったランドセルは専用の洗剤で皮脂汚れや黒ずみを拭き取り、糸のほつれも補修する。へたりが出やすい肩ベルトはスチームアイロンで元の形に戻す。1個あたり30分~1時間かかるといい、仕事の合間や定休日に、桜クラブのボランティアにも手伝ってもらいながら作業する。

 ランドセルは3月末まで計100個募る。カビや汚れなど大きな破損がないものに限り、店頭で受け付ける。提供は今年4月に小学校の新1年生になる人が対象で3月1日から。希望者は来店して気に入ったものを選べるほか、送料を負担すれば遠隔地でも配送される。

 店で取り扱うランドセルは1個4万~9万円ほど。「ランドセルは高い買い物だが、気に入ったランドセルで学校に通って欲しいのが親の願い」と木下さん。「店頭で受け取れば買ったか、もらったかはわからない。遠慮せず取りに来てほしい」

 ランドセルの寄付や提供希望の問い合わせは、奈良市古市町1369の10のランドセルの木ノ下(0742・31・6997)へ。火曜、水曜定休。(渡辺元史)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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