「体力気力とも尽きた」九州豪雨3カ月、見えぬ再興

 7月の記録的豪雨は、地域の生業にも深刻な被害をもたらした。被災地では多くの店舗が営業を再開できず、再起を断念した事業者もいる。被災から3カ月。コロナ禍も追い打ちをかけるなか、いまだ影響の広がりは見通せていない。

 割れたショーウィンドー。路上に積まれた廃材。球磨(くま)川の氾濫(はんらん)で一面が水につかった熊本県人吉市中心部の商店街は、今も被災の爪痕が生々しい。日が傾いても店の明かりはともらず、暗闇に包まれる。

 「一瞬のうちに全てがなくなりました」。ここで約20年間、居酒屋を営んできた男性(64)はつぶやく。浸水して泥にまみれた食材や酒、機材が散乱する店を見た時、涙がこぼれた。

 再建を考えたが、被災事業者を対象にした補助金を使っても数百万円の自己資金が必要と分かった。約1200万円の借金を抱えて開いた店。返済に十数年かかり、借金の苦労は身にしみている。「この年で借金しても、コロナ禍の不景気の中で返せるか分からない」。断念した。

 リーマン・ショックなど幾度の不景気も乗り越えてきた。新型コロナの影響で売り上げが激減したが、6月ごろから少しずつ回復。店が水につかった7月4日は、今年最多の予約が入った日だった。

 数カ月前に改装したばかりの自宅も浸水し、公費による解体が決まった。以前は好きだった球磨川のせせらぎを聞くだけで憂鬱(ゆううつ)になる。預金を切り崩す日々に不安は募る。「まさかこんなことになるとは……。一日で人生が180度変わってしまった」

 商店街近くの「小代(しょうだい)酒店」は9月1日、営業を再開した。店は床上5メートル近く浸水し、商品や店の機材は水没。店舗2階の住居もつかり、3代目店主の小代真資(まさすけ)さん(59)は一時、市内の妻の実家に避難した。

 被災後、地元の焼酎の蔵元や取引業者、従業員ら多くの人が片付けの手伝いに駆けつけてくれた。「皆さんの思いに報いたい」。店の再開へ背中を押された。近所の人らからもらった机やイス、洗浄した棚など、営業に必要なものを仮店舗にした倉庫に並べた。

 店本体の復旧工事費用の見積もりはまだ出ておらず、補助金の申請もこれからだ。得意客の飲食店などの多くが休業中で、販売先も限られている。収入は減り、先行きの不安は拭えない。小代さんは自身を奮い立たせるように言う。「みんな何とかしようとがんばっている。長い時間をかけても街を再興したい」

 人吉商工会議所(人吉市)によると、市内の約1900事業者のうち約900事業者が被災。同商工会議所は1日までに豪雨災害による3件の廃業を確認した。担当者は「まだ増える可能性があり、補助金を活用して、なるべく再建を支援したい」と話す。

 熊本県によると、中小企業などの復旧費用を支援する「なりわい再建支援補助金」の第1次公募(8月末~9月18日)の申請は17件にとどまった。小規模事業者や老舗店、高齢化した経営者の被災が多く、人吉市の担当者は「複雑な申請手続きに苦労したり、再建計画をなかなか打ち出せなかったりする事業者もいる」と話す。

 施工業者の不足も課題だ。市中心部の人吉東九日町商店街振興組合の岡本光雄理事長(74)は「工務店が足りず、どこも工事は順番待ち。人件費とともに解体費用も上がっている」。(小瀬康太郎)

助成金は12月まで「時間の余裕、ない」

 7月7日から2回にわたる玖珠(くす)川の氾濫(はんらん)で、壊滅的な被害を受けた大分県日田市の天ケ瀬温泉街。川沿いの約10軒の旅館やホテルはいずれも閉まったままだ。壁や窓が破れた商店や家屋も目立ち、人通りはほとんどない。

 ホテル成天閣は、宴会場などがある1階が水没し、2階まで浸水。浄化槽やエレベーターが壊れた。創業者が架けたというつり橋も踏み板が流され、ワイヤが垂れ下がっている。

 休業中も冷蔵庫のリース代などで毎月100万円以上が消え、社員6人の暮らしを支える雇用調整助成金も12月で切れる。古賀信寿社長(43)は「もう時間の余裕はない」と話す。

 昨年は日韓関係の悪化で韓国からの団体旅行客が激減。借金をして川を一望できる風呂を新たに造り、個人客の取り込みに力を入れていた。やっと軌道に乗り始めた今年はコロナ禍に見舞われ4~6月はほぼ休業した。ようやく営業を再開した7月に水害が襲った。

 「再び浸水する可能性を考えると移転したいが、金も時間もかかる。再開がこれ以上遅れたらつぶれてしまう」。悩んだ末、修復による再建を決めた。費用は約5億円。保険金と「なりわい再建支援補助金」を当て込むが、支給額はまだわからない。融資も受けて来春の再開を目指すが、「コロナ禍でお客さんが来てくれるかどうか」。不安は尽きない。

 天ケ瀬温泉旅館組合の組合長で、旅館「丸山荘」を経営する阿部信明さん(60)は、旅館の再開を断念した。露天を含む3種の風呂が自慢だったが、風呂も大広間も、高さ約2メートルの濁流にのまれた。「再建してもコロナ禍で客が来る希望もない。体力、気力とも尽きた」

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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