「傷を受けて悲しく、悔しい」 旧法下の不妊手術、女性が手話で訴え

安井健悟

 旧優生保護法のもとで不妊手術を強いられ、憲法が保障する自己決定権を侵害されたなどとして、聴覚障害がある大阪府の70代の夫妻が国に2200万円の賠償を求めた訴訟は16日、大阪地裁で結審した。妻が意見陳述を手話で行い、「傷を受けたことはとても悲しくて悔しい。国は反省してほしい」と訴えた。判決の言い渡しは9月22日の予定。

 訴状によると、妻は1974年、病院で長男を出産した3日後、医師らの説明がないまま不妊手術を受けさせられた。夫妻は複数の子どもの誕生を望んでいたとし「障害者を劣っているとみなし、生殖能力の喪失という重大な結果をもたらす手術を強制した。憲政史上類を見ない人権侵害だ」と訴えている。

 その上で、国会には救済法を制定する義務があったと主張。2004年3月に厚生労働相が旧優生保護法の被害の重大性に言及していたことを踏まえ、国家賠償責任があるとしている。

 一方、国側は、不妊手術の明確な記録が残っていないとして、実施していない可能性にも言及。仮に手術が行われたとしても、不法行為から20年が過ぎると賠償請求権が消える民法の「除斥期間」が適用されると主張し、請求の棄却を求めている。

 原告側代理人の辻川圭乃(たまの)弁護士は結審後に記者会見し、「被害者が裁判をできなかったのは、司法にアクセスするのも困難だったからだ。裁判所には最後のとりでとして役割を果たしてほしい」と述べた。

 同種の訴訟は各地で起こされ、今年2~3月の大阪、東京の両高裁判決は旧優生保護法を違憲と認定。さらに事案の重大性から、除斥期間の適用を制限できるとして国に賠償を命じる原告勝訴の判決とした。国側がいずれも上告した。(安井健悟)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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