「北の国から」の聖地、布部駅と歩んだ88歳 廃駅で気づけたものは

 テレビドラマ「北の国から」の「聖地」となったJR布部駅(北海道富良野市)。移住を決めた黒板五郎と純、蛍の兄妹が降り立った駅だ。初回のシーンから使われ、駅前には「北の国 此処(ここ)に始(はじま)る 倉本聰」の看板が立つ。「それも一つの思い出……」。廃駅を目前に駅前商店の店主坂口道郎さん(88)は駅と歩んできた人生を見つめる。

 布部駅の開業は1927(昭和2)年12月、富良野駅と山部駅の間に新設開業した。南東に広がる東京帝国大学(現東京大学)の北海道演習林や、ドラマの舞台となる麓郷(ろくごう)地区の森林資源開発などを目的に誕生した請願駅だ。

木箱に入って戻った父

 坂口さんは1936(昭和11)年3月2日、4人きょうだいの長男として生まれた。父は終戦2年前の秋に出征し、ニューギニア戦線で戦死した。劣悪な環境下での病死だった。家業の「坂口商店」は食品やたばこ、化粧品などを扱う雑貨店で、母は父の出征後も店を続け、子どもたちを育てた。

 終戦から3年たった1948(昭和23)年秋、父の戦死公報が届いた。母と一緒に布部駅を発ち、富良野か旭川で白い布にくるまれた木箱を受け取った。それを抱えて布部駅に降りると、近所の人たちが国旗玉を黒く塗った日の丸を手に迎えてくれた。

 木箱には父の爪や髪の毛が入…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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