「大阪梅田を安全安心のシリコンバレーに」 動き始めた大学発の試み

 いつか来る大災害。備えの大切さはわかっていても、誰もが実行に移せるわけではない。どうすれば、もっと被害を減らせるか。これまでの「防災」の枠にとらわれず、日常生活や企業の価値を高めながら、災害に強い社会をつくろうという、大学発の試みが走り始めた。

マーケティング視点でアプローチ

 今月1日、大阪駅近くのビルにある関西大学梅田キャンパス。集まった企業や行政の担当者を前に、商学部の学生たちが「防災の市場化」についての研究成果を発表した。

 「マーケティングの観点で顧客層を分類し、細かなアプローチをしていく」「防災することが当たり前となれば、これまで取り組んでこなかった人にもきっかけが生まれる」

 すべての人に向けた従来型の防災啓発では、なかなか人は動かない。そこで商品を売るときのように「顧客層」を分類。身近な情報を発信する「生活インフルエンサー主婦」「防災したいけどできない高齢者」など人物像ごとに手段を考え、全体を底上げしていくことを提案した。

 別のグループからは、防災が「裏テーマ」の謎解きイベントのアイデアも。スマホで答えを求めながら街歩きをすると、最後に津波の避難先になるビルにたどりつく。楽しみつつ、気付けば災害時のことも体感しているしかけだ。近くに勤める人が参加すれば、避難の先導者になってくれるかもしれない。

 出席者からは、まずターゲットにするなら「関心があり行動を起こしていない層」との意見が出た。身近な相手に防災の話をする人が増えれば「友達から聞いたから」と広まっていく、との発言もあった。

 この集まりは、仮称「うめだ南(なん)トラ研究会」。想定される南海トラフ巨大地震を見据え、関大の呼びかけで今年から始まった。不動産会社から菓子メーカーまで、様々な企業と各学部の教員らが顔をそろえる。

 大阪・梅田は鉄道ターミナルが集結し、多数の人が行き交う。巨大な地下街が広がり、再開発で高層のオフィスビルや商業施設も増えている。南海トラフ地震では震度6弱の揺れと津波で2メートルの浸水が見込まれ、避難誘導や帰宅困難者などの課題を抱える。

 研究会は、防災分野だけでない幅広い知恵を生かして解決策を探り、梅田地区にとどまらず社会全体にも広めることを目指す。

「北風」に限界 「太陽」のアイデアを

 「大阪は新しいこと、面白い…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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