「天声人語 2019年8月12日」(朝日新聞デジタル)

 何にでも値がつくのが市場経済であるならば、とくに驚くことではないかもしれない。フリーマーケットアプリのメルカリで、セミの抜け殻が出品されていた。90体で1100円などの品は、自由研究にでも使われるのだろうか▼抜け殻と言うと物質そのものだが、「空蝉(うつせみ)」と言い直すと、命の名残があるような気がする。近所を歩いていて、コンクリートの擁壁にしがみつく空蝉をいくつも見た。旅立ちの場所は樹木でなくとも構わない、そんなたくましさがある▼空蝉に生命の力を見て取り、詠まれた句は少なくない。〈空蝉のいづれも力抜かずゐる〉阿部みどり女。…… 本文:610文字 この記事の続きをお読みいただくには、朝日新聞デジタルselect on Yahoo!ニュースの購入が必要です。

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