「平和の島、今なお…」沖縄知事が国民へ訴え 復帰50周年記念式典

 沖縄の日本復帰から50年となった15日、「沖縄復帰50周年記念式典」が沖縄県宜野湾市東京都の2会場をつないで開かれた。岸田文雄首相は、沖縄の基地負担軽減のために全力で取り組んでいくことを強調。玉城デニー知事は、過重な基地負担が50年経っても続く現状と経済的な課題を訴え、復帰の意義について国民全体での認識の共有を求めた。

 式典は、県と政府の共催で、沖縄と東京の会場が中継でつながれた。沖縄の会場に岸田首相や玉城知事、全国知事会平井伸治会長(鳥取県知事)らが出席。天皇、皇后両陛下がオンラインで出席し、衆参両院の議長やラーム・エマニュエル駐日米国大使らが東京の会場で登壇した。

 沖縄は、国土面積の0・6%に全国の米軍専用施設の約7割が集中し、米軍機の騒音や米軍人らの事件事故、環境汚染などが課題となっている。

 岸田首相は式辞で、戦後27年にわたって米軍統治下に置かれた沖縄の復帰について「戦争によって失われた領土を外交交渉で回復したことは史上まれで、日米両国の友好と信頼によって可能になったもの」と振り返った。「沖縄の歩んだ歴史に改めて思いをいたし、県民のひたむきな努力に深甚なる敬意を表したい」と語った。

 沖縄の基地負担に関しては「重く受け止め、基地負担軽減に全力で取り組む」と強調。米海兵隊キャンプ瑞慶覧(北中城村など)の一部地区について返還に先立って県民が利用できるようにすると述べた。

 続いて登壇した玉城知事は、復帰時の「沖縄を平和の島とする」という目標が「復帰から50年経ってなお達成されていない」と訴えた。

 復帰から10年ごとに更新される沖縄振興計画などで「本土との格差は縮小され、社会経済は着実に進展した」と述べた一方で、1人当たりの県民所得が全国平均に達していないことを挙げて「自立型経済の構築はなお道半ば」と指摘。子どもの貧困など「依然として克服すべき多くの課題が残されている」と語った。政府に対し、復帰の意義と恒久平和の重要性について国民全体での認識の共有を図り、平和で豊かな沖縄の実現に向けて取り組むよう求めた。

 天皇陛下は「沖縄には、今なお様々な課題が残されています」とし「広く国民の沖縄に対する理解が更に深まることを希望する」などと述べた。

 沖縄県民代表として、戦時中に撃沈された学童疎開船「対馬丸」に乗っていた一人で、対馬丸記念会の高良政勝理事長があいさつした。式典後はレセプションが開かれ、琉球舞踊や空手の演武などがあった。(光墨祥吾、高橋杏璃)

県民ら800人が招待、それぞれの思い

 沖縄での記念式典の会場となった沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)では、対馬丸記念会代表理事の高良政勝さん(82)が県民代表として登壇した。岸田文雄首相らを前に「私たちが望んだ沖縄県は、まだ道半ばの感があります」と強い口調で訴えた。

 太平洋戦争中の1944年に…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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