「当事者の存在可視化」 名古屋レインボープライド、10年のわだち

 「名古屋レインボープライド」が、6月3日に名古屋市中心部のオアシス21で開かれる。2012年から始まった「虹色どまんなかパレード」が前身で、性的指向や性自認、人種や障害の有無に関わらず、誰もが生きやすい社会を目指す運動だ。この10年で自治体の後援や企業の協賛も広がっている。

 「いつかではない。今、世の中が変わらないといけない」。レインボープライドの共同代表を務める樹梨杏(じゅりあん)さん(37)はそう話す。

 初恋は中学2年生のとき、相手は同級生の女の子。自分の気持ちを周囲に打ち明けられず、「認めたくなかった」と振り返る。大学進学後、その女性と再会して交際を始め、自分たちがレズビアンだと気づいたという。

 社会人になってからは戸籍上が女性で、男性として生きる人を好きになった。今は好きになる人の性別を問わないパンセクシュアルを自認する。

 10年ほど前からはレズビアンを中心としたアイドルグループで活動を始めた。数年後、親にカミングアウトした。すぐには受け入れてもらえず、一時は関係が疎遠になった。

 メディアの取材を受け始めると、当時高校生の弟がいじめられた。「LGBTQは伝染すると言われていたみたい。活動をやめようと思った」

 それでも当事者やその家族といったファンの支えがあった。当事者の小学生の子は、「お姉さんたちを見ると元気が出ます」とファンレターをくれた。解散までの10年間、アイドルの活動を続けた。

 今は会社員として働きながら、LGBTQの理解を深めてもらう出張授業を小中高校でしている。ある小学校で自身の経験を話すと、児童が「昔は気持ち悪いと言われたかもしれないけど、今はそんな時代じゃないんだよ」と、頭をなでてくれた。

 「子どもたちは、当事者の存在を当たり前だと思っている。ちょっとずつ変わってきているのかな」

 5月30日には、名古屋地裁同性婚を認めないことは憲法違反とする国内2例目の判決が出た。傍聴席で判決を聞き、涙があふれた。「結婚式をやるなら絶対に家族に見てもらいたい」。その夢に一歩近づいた気がした。弟からは「生きてるうちに夢が叶うといいね」と連絡が来た。

 一方、首相秘書官による差別発言があり、SNSには差別投稿が相次ぐ。樹梨杏さんは「レインボープライドを通して当事者の存在を可視化したい。沿道にいるかもしれない当事者に、ここに味方がいるよと伝えたい」。

 レインボープライド事務局長の後藤彩仁(あやひと)さん(33)は、自らを男性でも女性でもないと考えるXジェンダーの当事者だ。

 中学1年生で女の子を好きになったときは、周囲に同じ立場の当事者はおらず、孤独だった。「性同一性障害なのか、レズビアンなのか、自分が何者なのか分からなかった」

 ライフプランを考える家庭科の授業で、「結婚」の文字が重くのしかかった。同性婚が認められていない現実に、明るい将来を描けなかった。

 大学に入学し、名古屋・栄の…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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