「極端な意見」が分断を深める…架け橋になる発信は

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デジタル機動報道部・水野梓

メディア空間考 水野梓(withnews副編集長)

 車いすユーザーが無人駅を利用した際の不便さを訴えたブログに対し、ネット上で大きな「炎上」が起きた。SNSには、女性を支持するハッシュタグができる一方、「駅員だって大変なのに」「書き方がおかしい」といった批判が集まり、誹謗(ひぼう)中傷は1カ月以上たつ今も続く。発言が極端なものばかりになっていき、議論が深まらない。これはネットの限界なのだろうか。

 ブログは、電動車いすを使うコラムニストの伊是名夏子さんが4月に電車の無人駅を訪問した際、階段を移動するときのサポートを鉄道会社に願い出たが、適切な支援を得られなかった、と訴えたものだ。

 移動の自由の権利は認められるべきなのに、現状はまだまだ対応が不十分だ、という一例として書いたものだったが、ブログは大きく炎上した。

 「感謝の気持ちを持つべきではないか」「配慮した書き方があったのでは」という批判だけでなく、伊是名さん個人や、過去の行動への誹謗中傷も起きた。

 今「健常者」とされる人でも、けがをしたり、年をとったりして車いすを使うこともあるかもしれない。そのときに自由に移動できる社会であってほしい。それは、多くの人が共有している気持ちだろう。一方で、無人駅が増える現場の深刻な人手不足というのも、多くの人が共有している現実だ。

■ネットには極端な意見しかない

 それなら、それぞれの事情を共有しながら接点を探れればいいのだろうが、ネットの議論によってその溝が埋まっていくようには感じられない。なぜなのか。

 『ネット炎上の研究』などの著作がある国際大グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一さんに尋ねると、「ネットには能動的な発信しかない。強い思いを持って『言いたい』人、極端な意見の人が発信する。『双方の意見も分かる』という中庸の人はなかなか書き込まないでしょう?」

 特にSNSは自分と同じ意見…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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