「気づいてほしい」 奈良のトンカツ店長、背中で語った思いとは

 金子友則さん(45)はこらえきれなくなった。奈良市神殿(こどの)町のトンカツ店「まるかつ」の店長だ。10月末、自分の背中に1枚の紙を貼り、調理場に立った。

 「厚切りロースかつがさらに分厚くなったような気がするのは店長だけでしょうか?」

 約1週間前、もともと180グラムあった「厚切りロースかつ」の豚肉を、ひそかに30グラム増やした。

 「お客さんが喜んでくれたら」

 ドキドキしながら反応を待ったが、誰も気づいてくれない。

 それならば……。思いついたのが、背中の貼り紙だった。

 2018年、金子さんは「まるかつ無料食堂」として、お金がなくて困っている人に無料で食事をふるまうサービスを始めた。

 がんを患い、働けなくなったという男性が、妻と幼い3人の子どもを伴い、「おなかいっぱい食べさせたい」と来店したことがあった。

 「久しぶりの外食で、おいしそうにご飯を食べている子どもたちの顔を見られて本当にうれしかった」

 そのときの男性の言葉を、金子さんは忘れない。しばらくしてから、男性が闘病の末に亡くなったと聞いた。

 新型コロナウイルスの感染が広がり、生活に困窮するお客さんはさらに増えていった。

 「会社が倒産し、父が何日も…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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