「永井路子記念館なんて恥ずかしい」 故郷・古河の文学館への思い

西崎啓太朗

 歴史小説を数多く書き、1月に97歳で亡くなった直木賞作家の永井路子さんは、3歳からの約20年間を茨城県古河市で過ごした。

 1998年に開館した同市の古河文学館には、永井さんを紹介する常設のコーナーがある。生前に寄贈した自筆原稿や書簡など約3万点も保存されている。

 開館からずっと学芸員を務める秋沢正之さん(50)によると、当初は「永井路子記念館」とする予定だったという。

 だが、永井さんが「記念館なんて恥ずかしい。古河の文学全般を保存・継承してほしい。施設をつくって終わりではなく、文化活動の場になればいい」と語ったため、名前を冠するのは取りやめたという。

 秋沢さんは新人の頃、「出身地はどこなの」と優しく聞かれたことが印象に残っている。「先生は、人を肩書で判断せず、偉ぶらない方でした」と振り返った。

 永井さんは、同市で新たな文化的交流も生み出した。

 室町時代に古河城を本格的に整備した初代古河公方の足利成氏(しげうじ)は、永井さんの小説に度々登場する鎌倉から移ってきた。永井さんは、この経緯を踏まえ、鎌倉と古河の郷土史の研究会同士の交流を取り持つ役割を果たしたという。

 2003年には古河市名誉市民にも選ばれた。市は10日から12月下旬まで、古河文学館に追悼コーナーを設け、永井さんへのメッセージを募る。(西崎啓太朗)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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