「簡単に判断できない」パワハラ線引き、なお難しく(西日本新聞)

6月に規制法施行

 大企業にパワハラやセクハラ防止対策を義務付けた「女性活躍・ハラスメント規制法」が6月に施行された。国は企業に相談窓口の設置や社員への啓発を求め、パワハラに当たる行為を指針で示したが、問題となる言動と業務上必要なやりとりを線引きするのは難しい。本人が心身の傷を訴えられるかも個人差があり、専門家は被害の芽を摘む細やかな対応を求めている。 【画像】パワハラの6類型  規制法はパワハラを(1)優越的な関係を背景にした言動で、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるもの-と定義した。厚生労働省は指針で6類型の例を示した。  それによると、「物を投げつける」「大声で叱責(しっせき)を繰り返す」などはパワハラ。該当しない例では、「業務内容に照らして重大な問題行動をした労働者を、一定程度強く注意」「育成のため少し高いレベルの業務を任せる」などを挙げた。

 定義や指針について、働く人が個人で加入できる労働組合「連合福岡ユニオン」(福岡市)の寺山早苗書記長(54)は「業務上必要な範囲、との定義はあいまい。該当しない例を示したのも加害者に言い訳の材料を与える」と懸念する。  被害者の多くは心身に大きな傷を負っている。大手企業の福岡支社で働いた40代男性は、上司の暴言に1カ月ほど苦しめられた。

 取引先から契約を打ち切られたのが始まり。損失を穴埋めするため「毎日100人と会え」と命じられ、同僚の前で「ばか」「何もできない」と責められた。  入院すると「そんな体になりやがって最低」。それでも仕事を休んだのを負い目に感じ、相談は控えた。  業務上の失敗がパワハラの発端になることは多い。加害者は相手の落ち度を理由に挙げ、被害者は自分にも非があると考えがちだが、寺山書記長は「ミスや成績不振があっても、正当化はされない」と強調する。

      *  6類型に当てはまるか微妙な行為でも、労働者が苦痛に感じることはある。  福岡県内の社会福祉施設に勤める50代女性は、施設管理者との意見の食い違いで、身に覚えのない注意や離職を勧める言葉を掛けられるようになった。「いつも注意力がありません」「他に働きやすい所を探しては」「ここにいると、つぶれちゃいますよ」。  言葉遣いは丁寧で、強制や業務の妨害をされたわけではない。それでも体調を崩し、うつ病で休職した。  復職を望んで改善を求めたが、施設側は「協調性を欠くあなたに問題がある」と取り合ってくれなかった。休職期間の満了までに体調が回復しないことを理由に、解雇を告げられた。  規制法は、パワハラを申告した人を解雇するなど、本人に不利益な取り扱いをすることを禁じている。これを示すと取り下げられたが、女性は退職を選んだ。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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