「観戦自粛」の都心でパラマラソン 「密」でも見たいその思いとは

 東京パラリンピック最終日の5日朝、東京都心でマラソン競技があった。新型コロナウイルス対策で観戦自粛が呼びかけられる中、沿道には多くの人が集まった。自粛を求められてもなぜ「生」で見たくなるのか。そこには、様々な思いで選手たちを見つめる人たちがいた。

 国立競技場を発着し、浅草や銀座などの都内の名所を巡るコースで、まず男子車いすの選手たちが午前6時半にスタート。競技場最寄りのJR千駄ケ谷駅周辺は傘をさした観客が歩道を埋めた。

 小学2年生の女児(7)はタチアナ・マクファーデン選手(米国)を応援するため、前日に作った「GO! TATYANA!! ガンバレ」と書いた横断幕を携えて駆けつけた。

 夏休み日本科学未来館東京都江東区)の企画展「超人たちの人体」を訪れ、マクファーデン選手のことを知った。孤児院で育ち、幼い頃は車いすがなくて逆立ちで生活していたことに関心を持ったという。競技用車いすも体験。「なかなか進まなかった。泳ぐよりも難しかった」

 大会期間中、弟(6)と一緒にテレビで競泳や陸上をたくさん見た。ただ、この日は沿道で見ることを選んだ。マクファーデン選手はあっという間に通り過ぎた。「速くてすごかった」。母(50)は「最後に見せてあげられてよかった」と話した。

 都内の女性(61)は「日本代表の道下美里選手や西島美保子選手を見たくて」と沿道に立った。自身もランナーだった。子宮筋腫の手術を経て、父の介護を終えた2017年に体力作りのためにウォーキングを始め、知人の勧めで走るようになった。19年にはホノルルマラソンを5時間50分かけて完走。20年3月に予定された東京マラソンの抽選にも当たっていた。

 だが、大会は新型コロナの影響で一般ランナーの部が中止に。その直後、自身も網膜の病気が見つかり、走れなくなった。治療で回復しつつあるが、いまも運動すると目がかすむため本調子ではない。

 パラの期間中、様々な競技をテレビで見た。「いろいろあっても生きてさえいればこうしてがんばれる。元気をもらいました」

 走れなかった昨年の東京マラソンの出場権は23年に持ち越せることになっている。「その時には自分も世の中も走れる状況になっていてほしい」

 大阪府の女性(61)は「どうしても一目見たい」と夜行バスで上京し、この日の朝6時に新宿駅に着いた。観客らを案内する都市ボランティアの現場リーダーを務めるはずだったが、無観客になった影響で活動日はリモートでの1日だけ。「それでも雰囲気は味わえました」

 調剤薬局で事務の仕事をして…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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