「農地に見えない」ので固定資産税70倍 残土被害の土地、市が判断

 「ただで土を入れてあげる」。そんな甘言にだまされ、農地に高さ10メートルもの建設残土の山を築かれた愛知県弥富市の所有者の住民。撤去のため5年にわたって、あらゆる手を打ったが変わらなかった。追い打ちをかけるように、今度は市が前年度の約70倍もの固定資産税の支払いを求めてきたという。

 所有者の女性らによると、この土地は、もとは深さ数十センチの金魚の養殖池で、広さは約5100平方メートル。2017年に不動産ブローカーから、「池を埋めて農地にしてあげる」と持ちかけられ、ダンプカーが繰り返し土砂を運び入れた。あまりにも多く、中止を再三、求めたが搬入は約9カ月間続いた。

 約束では、埋めるのは隣接する道路下30センチまでだったが、高さ10メートル、推定2万立方メートル以上の土が放置された。

 所有者は、搬入した三重県桑名市の業者に撤去などを求めて提訴。勝訴したものの、撤去されないまま業者の男性は21年に死亡した。残土には、市の新庁舎建設に伴うものも含まれていることが分かり、処分を請け負った大手ゼネコンと市を相手取り訴訟を起こした。昨年9月に和解が成立した。

課税額が8744円→60万5952円

 間もなく市から所有者に課税地目を「田」から「雑種地」に見直す旨の電話があった。後日届いた今年度の納税通知書を見て、驚いた。地目は「雑種地」に、固定資産税の課税額は前年度の8744円から、60万5952円になっていた。

 「客観的に農地には見えない。現在の土地の状況をみて判断した」というのは、市税務課の岩田繁樹課長。「(過去の経緯は)理解しているが、税の仕組みの中では救済する手段がない」と説明する。

 所有者が以前、残土の撤去費用を見積もってもらったところ、8千万円近い金額を示されている。「(自分が)被害者であることは明らかなのに、今になって何の利用方法もなく、収入もない土地を駐車場などと同じ雑種地の扱いにするのは理解できない」と疲れた様子で語った。

 今回の変更を不服として、地目認定取り消しを求める審査請求書を市に出したが却下された。今後、訴訟も検討している。

他市は残土あっても「農地」扱い

 弥富市の所有者の代理人として審査請求書を送った村田正人弁護士によると、残土を持ち込んだ業者らは、愛知や岐阜、三重県内の計約10カ所で同様の問題を起こしている。ただ、弥富市のように地目認定を変更して固定資産税を増額させた自治体は確認されていない。

 三重県桑名市多度町にも、高さ約8メートルの残土の山がある。知人2人と計2400平方メートルの水田を共同所有する50代男性によると、17年、知人宅に不動産ブローカーが現れた。「ただで土を入れてあげる」。ちょうど畑へ変えたいと考えていた矢先だった。

 間もなく業者がダンプカーで…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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