「長かった」奪われた孫…遺族の涙枯れぬ16年 一家4人殺害で死刑執行(西日本新聞)

 友達思いの小学6年の男の子と、笑顔がかわいい小学3年の女の子。2人の孫の成長が生きがいだった祖父ら遺族の時間は、ほんの少し動きだした。福岡市東区の一家殺害事件で、中国人元専門学校生の魏巍死刑囚(40)の刑が26日、執行された。事件から16年半。「長かった」。犠牲となった松本真二郎さん=当時(41)=の長男海君=同(11)=と長女ひなさん=同(8)=の遺族は涙を拭った。外国人留学生との交流事業に汗を流す遺族もいる。苦しみと悲しみとともに、それぞれがよわいを重ねた。

 海君とひなさんの祖父梅津亮七さん(93)=同市博多区=は、共働きの夫婦に代わり2人の送迎が日課だった。いじめっ子にも立ちはだかる「ヒーロー」だった海君。お兄ちゃんが大好きで、笑顔を絶やさなかったひなさん。自慢の孫を奪われ、福岡地裁の公判では「極刑にしてもあまりある罪」と訴えた。

 3年半前に妻を亡くし、現在は集合住宅に1人暮らし。耳は遠くなり、記憶がおぼろげになることが増えた。足腰も弱った。変わらないのは、家の中に孫の写真があふれていること。プレゼントされた「ひな」と書かれた小石は今も宝物だ。

 近くに住む親族の男性(74)が今朝、死刑執行のニュース速報を見て、梅津さん宅に駆け付けた。最初は死刑執行の意味が伝わらなかったが、孫の思い出話をするうちに記憶が鮮明に。「何年か。長かったなぁ」とつぶやくと、うるんだ左目を押さえた。「海はえらかった。ひなはかわいくてね」と懐かしんだ。

 2人を忘れないで-。梅津さんと男性は2003年11月、2人が通った福岡海星女子学院付属小(同市南区)と福岡雙葉小(同市中央区)に桜の苗木を植えた。「海桜」「ひな桜」と名付けられ、成長を続ける。

 遺体が遺棄された博多湾や事件現場となった東区馬出の松本さんの自宅跡を通るたび、男性は今も胸が痛む。「死刑になっても誰も戻らない。悔しい」と声を震わせた。

 「死刑執行は遅すぎた」と語る松本さんの伯父等さん(83)は、馬出校区自治協議会長を務め、国際交流事業に力を注ぐ。住民と留学生の交流会を開き、運動会には留学生も参加する。

 「留学生は一人一人違う。月日も経過し、どこかで気持ちの踏ん切りをつけて交流を深めてきた」。今後も、交流を後押しするのが役目だと言い聞かせる。

 「あの日」さえなければ、2人は20代を謳歌(おうか)しているはずだった。梅津さんは言った。「100歳まで生きる、いや120歳までや」。海君とひなさんの分まで。 (久保田かおり、上野洋光)

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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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