【詳報】渡辺三冠が勝利 終盤、激しく揺れた形勢の針

 第78期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)の第1局は11日、挑戦者の渡辺明三冠(36)が豊島将之名人(30)=竜王とあわせ二冠=に144手で勝ち、1勝目を挙げた。

拡大する第1局を制し、感想戦を前に対局を振り返る渡辺明三冠=2020年6月11日午後9時1分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

 1日目の10日に豊島名人が要所に角を据え、これに対して渡辺挑戦者が56手目を封じた。再開後は、午後0時30分から1時間の昼食休憩、午後6時から30分の休憩をはさんで午後8時55分に終局した。(村上耕司)

【第78期将棋名人戦第1局】#杉本副立会人に聞きたい~2日目終局までの局面解説~

両対局者の一問一答

経験を生かして来週も

――まずは渡辺三冠に。1日目の進行についてどう感じていましたか。

渡辺 予定の進行ではあったんですけど、焦点が難しい将棋になるので、2日目の進行はまたその場で考えようかなと思っていました。

――2日目に入ったあたりでは。

渡辺 千日手にはすぐになりやすい形ではあるんですけれど、打開できるなら打開しようかなという感じで、△4五銀と取っていったあたりではそんなに成算があったわけじゃない。打開するならそれしかなくなった。あとは進んでみて考えようかなという感じでした。

――△7四角を打ったあたりの手応えは。

渡辺 角打ち自体は感触はいいかなと思ったんですけど、と金を作られる格好なので、局面がかなり複雑。形勢はちょっと分からないという感じでやっていました。

――夕方の休憩、△3五桂と打ったあたりは。

渡辺 ▲3四桂と打たれた時に△3三玉が予定だった。△1二玉では、ちょっとどうだったかと思ってやっていた。△3三玉の変化が成算持てなくて△1二玉は予定変更だった。しばらく手を入れなくてはいけない展開になったので、もう分からないと思ってやっていました。

――最後、▲1四歩と取り込んでかなり迫られていた。そのあたりは。

渡辺 ちょっともう分からなかった。手としては▲4三金に△4六歩と打っていくしかないなと思った。こっちが詰む詰まないの変化になるので、分からなかったけど、それしかないので、やってみようという感じでした。

――勝利を意識したのはどのあたりでしょうか。

渡辺 △6三金合して、▲5五桂が打てないなら残しているんじゃないかと、そういう気がした。

――1勝挙げた感想を。

渡辺 持ち時間とか初めてだったので、2日目の夕休も初めての経験だった。そのあたり1回やってみて、またそれを生かして来週臨みたいなと思います。

――月曜日も戦って大変だったのでは。

渡辺 それまではしばらく開いていたので、開いていた分、体力的には問題なかった。これから詰まってきたときにそのへんはより気をつけなきゃいけないかなと思います。

――次に豊島名人に。序盤の手応えはいかがだったでしょうか。

豊島 △9二香と上がられて、その後の構想がよくなかったかもしれない。△9二香はあまり考えてなかったので、その後、封じ手のあたりは失敗したかなと思った。ちょっと工夫しなければいけなかった。

拡大する第1局で渡辺明三冠(手前)に敗れ、感想戦で対局を振り返る豊島将之名人=2020年6月11日午後9時50分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

――封じ手あたりで攻めていくような手はなかったか。

豊島 △3五歩とか△7七桂をやると、かえって悪くなるかなと思った。ちょっと失敗したので千日手は受け入れようかなと。

――△7四角を打たれたあたりの手応えは。

豊島 ▲5五歩と取ったところはいろんな攻め方があるので、ちょっとまずいだろうという気はしていました。でも基本的にずっと苦しい感じで、夕休明けてちょっと進むくらいまではまずいかなと。最後の方は何かあったかもしれませんが、時間がなくて分からなかった。端を成り捨てずに同じようにやれば、王様が広かったので。そういう手とか。ほかにもあったかもしれません。

――開幕戦黒星については。

豊島 久しぶりに対局をしたので、少しずつ調子を上げていけたらと思います。(村上耕司)

終了図以降は…

眠っていた角が働く

 終了図から▲4八玉は△5八金▲4七玉△5六角まで、▲4七玉は△3七金▲5七玉△5六飛までで、最後に眠っていた7四の角が働いて詰む。

20:55

渡辺三冠が勝利

 渡辺挑戦者が豊島名人に144手で勝ち、1勝目を挙げた。

 持ち時間各9時間のうち残り時間は豊島名人が1分、渡辺挑戦者が24分。第2局は18、19の両日、山形県天童市の天童ホテルで指される。

20:43

終局間近か

 形勢の針が大きく揺れ動いているようだ。杉本八段は「渡辺三冠の勝ちになったと思います」。終局間近か。

20:10

名人が盛り返す

 渡辺三冠が好調に攻めているように見えたが、豊島名人が盛り返している。▲1四歩(111手目)が厳しい攻めだ。渡辺三冠は考え込んでいる。副立会人の杉本八段は「豊島名人が追いつき、追い越したかもしれません」と分析する。

 ただ、名人は残り時間が3分しかない。挑戦者は40分近くある。この差も勝敗のカギを握るかもしれない。(村瀬信也

19:42

アクリル板を立てる

 渡辺三冠が△1二玉に26分使い、持ち時間が残り58分になった。豊島名人は次の▲1五歩に8分を投入。こちらは残り9分になった。

 秒読みの開始に伴い、記録係の高田明浩三段(17)が顔の前にアクリル板を立てた。新型コロナウイルスの感染拡大防止のための配慮だ。(村瀬信也

19:30

局面は終盤に

局面は終盤に差しかかってきた。渡辺はここで手を止めている。玉をどこにかわすか悩ましいところだ。豊島はフェイシャルペーパーで顔を拭う。(日本将棋連盟の棋譜中継から)

18:30

対局再開

 対局が再開した。この後は休憩は無く、終局まで一直線だ。

 豊島名人は約5分前に、渡辺挑戦者は約3分前に、対局室に戻ってきて、「戦闘モード」だった。

 現時点での残り時間は、豊島名人が38分、渡辺挑戦者が1時間38分。ちょうど1時間多く渡辺挑戦者が残している。

 再開直後、豊島名人は▲3五同銀と桂を取り、渡辺挑戦者は△同歩と銀を取った。(佐藤圭司)

18:00

休憩せずに考える名人

 休憩に入った後も、豊島名人は席を立たずに盤面を見つめ続けた。右手の人さし指を細かく動かし、前のめりになりながら考えていた。約6分後、ようやく席を立って休憩に入った。

 豊島名人は苦しんでいるのか。対局再開後は、副立会人の杉本昌隆八段が「今局で一番驚いた」という手も渡辺挑戦者から飛び出した。勝敗の行方を杉本八段に尋ねた。

【第78期将棋名人戦第1局】#杉本副立会人に聞きたい~2日目夕方の局面解説~=高津祐典撮影

18:00

30分の休憩

拡大する豊島将之名人が注文した夕方の軽食はミックスサンドイッチ=2020年6月11日午後5時37分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

 30分間の休憩に入った。両対局者には軽食が提供される。

 豊島名人には「ミックスサンドイッチ(卵、ハム、野菜)」と「オレンジジュース」。渡辺挑戦者には「ホワイトチョコレートのムース フルーツ添え(アメリカンチェリー、パイナップル、レッドグローブ、ブルーベリー)」と「アイスコーヒー」。(佐藤圭司)

拡大する渡辺明三冠は「ホワイトチョコレートのムース、フルーツ添え」を注文=2020年6月11日午後5時38分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

17:35

流れ決定づける「名角」か

 検討室で示されていた△7四角が盤上に放たれた。「角筋は止めにくい」という言葉の通り、先手陣に脅威を与えている。渡辺がリードしているようだ。

 今回の対局場である「戸田家」での名人戦が6回目であることは1日目の記事で触れたが、中でもよく知られているのが森内俊之名人に羽生善治四冠が挑戦した2005年の第63期名人戦第3局。終盤の競り合いの中、森内が相手の攻めを遅らせる妙手「▲4八金」で勝利をつかんだ。本局の△7四角も、勝負の流れを決定づける名角となるかもしれない。

 94手目△3五桂の局面の残り時間は、豊島名人が1時間16分、渡辺三冠が1時間38分。渡辺三冠が腰を落として考え、接近している。(村瀬信也

16:10

「有利になったんじゃ…」

 16時10分すぎ。豊島名人が▲5五歩と歩を取り、85手目まで進んだ。ここ数手の展開をみていた杉本昌隆八段は「少し指しやすかった渡辺挑戦者が有利になったんじゃないかな」とつぶやいた。

 次の候補手は△7五歩や△3三桂といった手が挙げられるという。△7五歩は先手の弱点の桂頭を攻める手だ。△7五歩と突いた形は、次に△7四角が絶品の味となる。△3三桂も手堅い手。仮に▲3四銀なら△5六角の金銀両取りがある。▲5五歩時点の消費時間は、豊島名人7時間38分、渡辺挑戦者6時間20分で、時間でも渡辺挑戦者が優勢だ。(丸山玄則)

15:50

「やや渡辺三冠が指しやすい」

 先手が▲4五銀打としたところで、渡辺挑戦者が長考した。駒割は金と桂の交換で先手の豊島名人の駒得だが、歩を2枚損しているので、微妙なところだ。杉本八段は「ちょっと豊島名人が苦労している感じ。少なくとも形勢がいいと思っていないでしょう。駒の働きは後手がいい。先手は6八角が働いていない。やや渡辺三冠が指しやすい」と話す。

 ▲4五銀打については「攻め合いで勝つというよりは長期戦を意識した手にみえます。後手からは△7五歩の桂頭攻めがある。渡辺三冠はここはチャンスとみているはずです」。

 この直後、渡辺挑戦者は△5五歩と指した。(村上耕司)

15:00

フルーツVSアイスコーヒー

拡大する豊島将之名人は3時のおやつに、フルーツ盛り合わせとガムシロップ多めのアイスレモンティーを注文した=2020年6月11日午後2時34分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

 対局室の両対局者を映し出す映像からは緊迫感が伝わってくる。

 豊島名人のおやつは、午前に引き続き、「フルーツ盛り合わせ」。三重県産

の甘夏、松阪産のビワ、メロン、ルビーグレープフルーツ、アメリカンチェリーという組み合わせだ。飲み物は「アイスティー(レモン)」。いずれも、対局室ではなく、自室に運ばれたという。

 渡辺挑戦者は、飲み物の注文だけで、「アイスコーヒー」。こちらは対局室に運ばれた。(佐藤圭司)

拡大する渡辺明三冠はアイスコーヒー=2020年6月11日午後2時38分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

2日目昼の局面解説

「個性が出る局面」#杉本副立会人に聞きたい

 名人戦は2日目午後の対局が進む。解説役の副立会人、杉本昌隆八段は「個性が出る局面」と評し、「名人が調子よく攻めているように見えるが、ほとんど差がない」とみる。その理由とは。

【第78期将棋名人戦第1局】#杉本副立会人に聞きたい~2日目昼の局面解説~=高津祐典撮影

13:45

攻める名人、受ける渡辺三冠

 対局が再開してすぐに渡辺挑戦者は△2四同銀と、銀で歩を取った。豊島名人は読み筋通りとばかりに約3分で▲5五銀。挑戦者も2分で△5四金とぶつけた。この進行について杉本昌隆八段は「非常に複雑なやりとりが続いています。しばらくは豊島名人の攻め、渡辺三冠の受けという展開が続きそうです。三冠は持ち駒を蓄えて一気の反撃を狙いたい。一方、名人は攻めが細くなるのが心配です。特に持ち歩が少ないのが気になります」と話した。(村上耕司)

拡大する〈途中図〉74手目△5四金まで

13:30

対局再開

 対局が再開した。4分ほど前に渡辺挑戦者が入室。すぐに盤の前に正座し、前傾姿勢をとって盤面に集中してみえる。定刻になり、副立会人の杉本昌隆八段(51)が「時間になりました」と告げたころ、豊島名人が戻ってきた。まもなく、渡辺挑戦者が△2四同銀を着手した。

 対局場の「戸田家」の別階に設けられた取材部屋では、時おり、「ヒューッ」という強い風の音が聞こえてくる。外は、雨が降ったり、やんだり。鳥羽湾に遠く浮かぶ島々も、かすんで見える。(佐藤圭司)

拡大する三重県鳥羽市の戸田家で開かれた名人戦第1局、両対局者はマスクを着用。対局前には検温も=絵・桑高克直

12:30

渡辺三冠が長考

 豊島名人が71手目▲2四歩を指したのが午前11時31分。そこから渡辺挑戦者が考え続け、そのまま昼食休憩に入った。挑戦者はこの1手に58分考えている。合計の消費時間は名人が6時間7分、挑戦者は5時間19分となった。(村上耕司)

拡大する第1局2日目、昼食休憩後の対局にのぞむ渡辺明三冠=2020年6月11日午後1時31分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

12:30

お肉とお寿司

拡大する豊島将之名人は、松阪牛丼をメーンにしたセレクト料理=2020年6月11日午後0時41分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

 昼食休憩に入った。

 注文は、豊島名人が「牛丼」で、サラダも頼んだ。渡辺挑戦者は「寿司会席」(サビ抜き)。

 「牛丼」は、ただの牛丼ではなかった。お品書きによると、「ブランド松阪牛丼(松阪牛バラ肉 新たまねぎ)」だ。「小鉢(小柱と松茸白和え クコの実)」「サラダ(低硝酸野菜 二見ケ浦の天然塩)」「吸物(玉吸 三つ葉)」「香の物(三種盛り)」「果物(枇杷ゼリー)」。

 「寿司会席」のお品書きも充実している。「小鉢(うすい豆腐 クコの実 山葵 美味出汁)」「握り寿司(才巻海老 鰺 鮪 烏賊 わらさ 帆立 穴子 戻し鮑 細巻き 戸田家玉子)」「揚物(鱧唐揚げ 薬味 割り出汁)」「煮麺(かしわ 焼板 葱)」「果物(枇杷ゼリー)」。(佐藤圭司)

拡大する2日目、渡辺明三冠のお昼は「寿司会席」=2020年6月11日午後0時34分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

昼食、対局者の気持ちは…

 タイトル戦において、盤上の戦いと共に注目を集める対局者の昼食。同じものを味わうと、対局者の気分に近づけるかもしれない――。渡辺三冠が注文した「寿司会席」を記者が実食した。

 「寿司会席」の主役はもちろん握りずしだ。「才巻海老、アジ、マグロ、イカ、ワラサ、ホタテ、アナゴ、戻しアワビ、細巻き、玉子」。新鮮な海鮮が並ぶ。ハモのから揚げなども添えられた。

拡大する記者が食した「戻しアワビ」

 まず、アジを食した。青魚特有の深みのある味わいが口の中に広がる。ホタテは少しあぶってあり、香ばしさが感じられた。渡辺三冠はどのように味わっただろうか。

 最後に残ったのは戻しアワビだ。独特の弾力を口の中で感じているうちに頭に浮かんだのは、2013年に岩手県宮古市で開かれた第71期将棋名人戦七番勝負第3局だ。対局後の食事会でふんだんに供され、好評だった記憶がよみがえった。

 名人戦は毎年、各地を転戦して行われる。開幕延期という異例の事態を経て迎えた本局は、両対局者にとって忘れられないタイトル戦となることだろう。鳥羽の地で味わった食事も、その記憶の片隅に残り続けるのかもしれない。(村瀬信也

拡大する検討する立会人の福崎文吾九段ら=絵・桑高克直

10:51

渡辺三冠、また忍者に

拡大する忍者のような姿になった渡辺明三冠(左)が検討室のモニターに映し出された=11日、三重県鳥羽市

 渡辺三冠がマスクの代わりに紺色の布で鼻と口を覆った。昨日も戦いのさなかに使っていた、「バフ」とみられる新アイテムだ。検討室のモニターには、新型コロナウイルスの感染拡大後ならではのタイトル戦の光景が映し出されている。(村瀬信也

10:35

対局者、繊細なマスクへの対応

拡大する対局開始前の豊島将之名人=11日、三重県鳥羽市

 昨日は渡辺挑戦者の覆面のようなマスク姿が話題になったが、豊島名人も対局開始時と対局中でマスクを取りかえている。写真撮影がある開始時はプリーツのある使い捨てマスクを着用していたが、対局中はプリーツのない布マスクをつけているようだ。(村上耕司)

拡大する対局中の豊島将之名人

千日手?対局者の心理は…

#杉本副立会人に聞きたい

 2日目朝の再開直後に「千日手」の可能性が浮上した名人戦第一局。挑戦者は、千日手に持ち込まずに打開するような手を指した。

 その狙いはどこにあったのか。解説役を務める副立会人の杉本昌隆八段が、千日手と向き合う棋士の心境や思惑を詳しく語った。

【第78期将棋名人戦第1局】#杉本副立会人に聞きたい~千日手?封じ手開封後の解説~=高津祐典撮影

10:04

千日手は回避

 挑戦者の△4二飛に対し、名人が▲3五歩△同歩▲同角と1歩交換した。杉本昌隆八段は「ここまで進んでみるともう千日手にはならないですね」。どうやら千日手は回避されたようだ。

 ここまでの消費時間は名人が5時間20分、挑戦者は3時間44分。挑戦者の方が持ち時間を1時間半以上、多く残している。挑戦者は局面も悪くないと思っているのかもしれない。(村上耕司)

10:00

名人は定跡のフルーツ

拡大する対局2日目、豊島将之名人はフルーツの盛り合わせ=2020年6月11日午前9時38分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

 朝のおやつの時間を迎えた。注文は、豊島名人が「フルーツ盛り合わせ」、渡辺挑戦者が「伊勢抹茶のムースとアイスコーヒー」。

 豊島名人にとって「フルーツ盛り合わせ」は定番中の定番。今朝の皿には、パイナップル、スイカ、レッドグローブ、アメリカンチェリー、三重県尾鷲産の甘夏が盛り込まれた。

 渡辺挑戦者の皿には自家製パウンドケーキも。「伊勢茶を使用した手作りの香り高いパウンドケーキです」とのことだ。

 いずれのお皿にも、地元・三重県の産品が添えられ、両対局者をそっと元気づけようとしているようだ。(佐藤圭司)

拡大する対局2日目、渡辺明三冠のおやつは抹茶のムースと自家製パウンドケーキ=2020年6月11日午前9時38分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

9:36

挑戦者が手を変える

 千日手の可能性が出てきたため、関係者が対局規定を確認。もし千日手が成立した場合、1時間後に残り時間で指し直すことになっている。

 同一手順2巡目に入ったところで、午前9時36分、挑戦者が△4二飛と手を変えた。まだ千日手の可能性は残っているが、検討室には少しほっとした空気が流れた。後手番の挑戦者は指し直しなら先手番を取れるのだが、自ら打開するような手を指した。(村上耕司)

9:18

千日手か…ざわつく検討室

 対局再開後、豊島名人はすぐに4八の金を▲3八金と動かした。これに対し渡辺挑戦者は2二の玉を△3一玉と引く。名人が▲4八金と金の位置を元に戻した。控室では「千日手か」とざわつく。もし挑戦者が△2二玉として名人が▲3八金とすると同一局面に戻る。同一局面が4回現れると千日手が成立し、先手後手を入れ替えて指し直しとなる。

 和服から着替えて戻ってきた福崎立会人にそのことが告げられると、「えっ」。また和服に着替える必要があるのか。(村上耕司)

拡大する戸田家の一角に飾られている色紙。大山康晴十五世名人、羽生善治九段、谷川浩司九段ら名棋士の名前が並ぶ=11日、三重県鳥羽市

9:00

封じ手は△6三金

拡大する対局開始前に開封される封じ手=2020年6月11日午前8時57分、三重県鳥羽市の戸田家、河合真人撮影

 午前8時43分に渡辺挑戦者が入室。その3分後に豊島名人が入室した。駒を並べ終えると立会人の福崎文吾九段が「それでは1日目の指し手を読み上げます」。記録係の高田明浩三段が1日目に進んだ55手目までを読み上げ、両者が再現した。

 同55分に福崎立会人が封じ手を開封。豊島名人の封じ手は△6三金だった。

 対局は午前9時に再開された。

拡大する封じ手の封筒を持つ立会人の福崎文吾九段=絵・桑高克直


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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