あしなが育英会の奨学生急増、遺児家庭を襲うコロナ禍の困窮

 病気や災害などで親を失った子らを支援する「あしなが育英会」(東京都)の奨学生が急増している。今年度は8千人を超えて過去最多となり、資金繰りが悪化しているという。コロナ禍で遺児家庭の生活が厳しくなっていることが背景にある。11日と12日には、学生たちが2年ぶりに街頭に立ち寄付を呼びかける。

 「コロナで仕事が減り、何十万円と収入が減った」

 5年ほど前に夫と死別した東京都の女性(47)は、4日にあしなが育英会が開いた記者会見で苦境を語った。大学1年の長男、高2の次男、小6の長女の3人の子を遺族年金も受けながら養う。塾代のために生活費を節約してきたが、備えてきたお金を取り崩さざるを得ないという。

 高3と高1の息子と暮らす都内の女性(51)は2年前に体調を崩して仕事を辞めた。就労支援施設に通っているが、「こんな状況で仕事が見つかるか不安」と話した。

 高1から大学院生までを対象とする同会の奨学生は5年ほど前までは5千人前後だったが、貸与型に加え給付型も始めた2018年度に増加。コロナで遺児家庭の生活が悪化してさらに増え、21年度には8325人と過去最多になった。

 奨学金の月額は高校生で4万5千~5万円、大学生で7万~8万円。寄付でまかなっているが、奨学金の総額が寄付額を上回る年もある。20年度にコロナ禍でアルバイトができない奨学生のため計25億円の緊急一時金を支出したこともあり、「蓄えが底をつきかけている」(担当者)という。

無収入の遺児家庭27・6% 「自殺しそう」 訴えも

 会によると、遺児家庭はかつてなく困窮している。今年10~11月、奨学金を支給する高校生の保護者3994人にアンケートしたところ、回答した2647人の27・6%が9月に収入がなかったと答えた。18年の同様の調査を7・3ポイント上回った。また、19・5%がコロナを理由に雇い止めとなるなどして離職または転職したと回答。就業中の保護者に限っても、手取り月収は平均14万7千円と一般労働者の平均より10万円ほど低かった。

 自由記述では「弱者は生きていてはいけないんでしょうか」「自殺しそうです」との回答もあったという。玉井義臣会長は4日の会見で「こんな声が出てきたのは初めて。心の底からの叫びだ」と話し、支援を求めた。

11、12日に2年ぶり学生募金

 こうした状況に加え、コロナの感染が落ち着いていることもあり、育英会の大学生らが11日と12日、2年ぶりとなる「あしなが学生募金」を行う。1970年から年に2回ずつ全国の街頭で呼びかけてきたが、コロナ禍のため19年10月以降は行えていなかった。

 実施場所は東京・新宿駅西口や札幌市札幌駅アピアドーム前、名古屋市名古屋駅桜通口、大阪府高槻市の高槻駅南口、京都市の桂駅西口、神戸市の元町駅東口、福岡市の福岡(天神)駅前など全国14カ所。事務局長を務める東北学院大4年の堀川琉さんは「街頭で訴えることで少しでも遺児家庭に関心を持ってもらいたい」と話した。(高浜行人)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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