ある朝、家が跡形なく消えた… 限界集落で起きた「孤独焼死」の背景

 山奥の集落で夕方、一人暮らしの高齢者宅から出火した。

 しかし、だれひとり火事に気づかない。判明したのは翌朝で、焼け跡からは遺体が見つかった……

 そんなショッキングな「孤独死」ならぬ、「孤独焼死」が21世紀の日本で起きた。

高齢者が点在して暮らす山間部の集落。記事後半では、住民の生活を守るために自治体が着目した家庭の〝ある機器〟を使った実証実験について紹介します。

 高知市から車で1時間半。国道から左に折れ、山道をさらに進んだ先に目的地はあった。

 「あんなことがあったなんて今でも信じられない」

 高知県中部の人口約4700人の仁淀川町。その別枝上区(べっしかみ)の道路沿い斜面にぽっかりとあいた「空間」に立ち、大石邦広さん(67)はつぶやいた。

 3年前まで、ここには87歳の男性が一人で暮らしていた。暖かい日中は、縁側から外を眺めるなどして過ごしていたという。

 2021年2月10日朝。買い物に行く途中に車で通りかかった女性が異変に気づいた。

 家がない――。

 そこには、木造平屋の住宅があるはずだった。それが跡形もなく消えていた。

 門扉からスロープを上がると民家の焼けた跡が残っていた。

 消防による実況見分で、前日の午後5時ごろに発生した火災で全焼したことが分かった。一晩かけて完全に焼け落ち、外壁さえも残っていなかったという。

 焼け跡からは住民の男性が遺体で見つかった。

 そのとき、すでに出火から20時間近くがたっていた。近隣に人家はなく、誰も気がつかないまま亡くなったとみられている。

限界集落、きっかけは1970年万博だった

 「民家火災であれば煙が高く…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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