いつになれば改憲手続きに入れるのか 国民投票法改正案に潜む落とし穴(産経新聞)

 第201通常国会が20日に召集される。全世代型社会保障の実現に向けた年金改革法案などが焦点となるが、与野党対決の主な舞台は引き続き、憲法改正議論の場となる衆参両院の憲法審査会となりそうだ。与党は5国会にわたって継続審議になっている国民投票法改正案の成立を最優先課題と位置づけるが、ここには思わぬ落とし穴も潜んでいる。

 「憲法にしっかりと私たちの自衛隊を明記し、憲法論争に終止符を打とう」

 安倍晋三首相(自民党総裁)は国会召集前の16日、自民党本部で開かれた党中央政治大学院の会合で、改憲への意欲を重ねて示した。

 首相は6日の記者会見でも「通常国会では国民投票法の改正はもとより、令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定を加速させたい」とも語っている。

 改憲を「私の手で成し遂げたい」と訴える首相の党総裁の任期は、来年の9月末まで。短い期間を考慮すると、次の国会で改正案が成立しただけでは十分とはいえない。

 憲法改正のための国民投票は、衆参両院の本会議で総議員の3分の2以上の賛成で発議した後、国民への周知期間を経て、60~180日以内に実施される。

 来年9月末までに国民投票を行うには、遅くとも来年の通常国会で改憲の発議までこぎ着ける必要がある。与党内でさえ、改憲原案をまとめる協議は難航が必至とみられるだけに、原案策定に向けた作業時間は限られている。

 自民党としては、一刻も早く作業に着手するためにも、改憲手続きを定める改正案の成立を急ぎたいところだ。だが、改正案には野党が遅滞戦術に効果的に使えるような見えない「欠陥」が潜んでいることは、意外と知られていない。

 現在提出されている改正案は、公職選挙法に合わせて国民投票の利便性を高めるのが目的で、具体的には駅や商業施設への共通投票所設置など、7項目を規定している。

 こうした内容は、平成28年に成立した改正公選法に盛り込まれていたものだ。公選法の内容を憲法改正のための国民投票に反映するため、今回の改正案が平成30年の通常国会に提出された。

 自民党は改正案の内容は野党も反対できないとにらみ、憲法審で行われる審議や採決が改憲議論の呼び水になると見込んでいた。ところが、野党は改正案の成立後に改憲議論が一気に進むことを危惧し、採決に徹底抗戦するようになった。

 この間、公選法は昨年5月に再度改正され、(1)投票立会人の要件緩和(2)災害時に離島から本土への投票箱の移送不要-の2項目が追加された。

 この2項目は現在提出されている改正案に入っていない。自民党幹部は「成立したとしても欠陥法だ」と指摘する。国民投票は公選法に完全に準拠しなくとも実施できるが、後世に正当性を疑問視されないためにも、与党はなるべく足並みをそろえたい考えだ。

 今の状況が続けば、原則的には公選法が改正されるたびに国民投票法も改正しなければならない。そうなれば、新たに提出された改正案が、繰り返し野党が遅延戦術の人質として利用する可能性も出てくる。

 現在審議中の改正案を修正し、2項目を追加する案もあるが、この手続きにも法案の再提出と同じような労力が必要だ。他の委員会と違い、憲法改正に絡む国会審議や法案の採決は、野党も含めた賛成を必要とする慣例があるためだ。

 近く公選法がさらに改正されるとの情報もあるだけに、ある自民党幹部は「国民投票法は『公選法に準じる』といった運用ができないものか」とこぼす。しかし、これまで抵抗戦術に使ってきた野党が簡単に応じるとは思えない。改憲に向けたハードルは、想像以上に幾重にも重なっているのだ。(政治部 大橋拓史)

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

Japonologie:
Leave a Comment