アイヌ民族を「見える化」する思考 自身もルーツの教授が解きほぐす

 「アイヌは先住民族じゃない」「見たことがない」。アイヌ民族がルーツの人たちが心をえぐられる言葉や場面。誤った理解に基づくコミュニケーションをどう解きほぐせばいいのか。自身も同じルーツの北原モコットゥナㇱ・北海道大教授に、歴史的背景や当事者を傷つけない対話のヒントを聞いた。

 1976年、東京都出身。アイヌ民族組織の結成に関わる両親や、北海道に暮らす祖母の影響でアイヌの言葉や文化に関心を持つ。

――アイヌ民族のことはよく分からないので、触れてはいけないと考えている人もいるようです。どう思われますか?

 アイヌは国籍としては日本人で、民族としてはアイヌ。外見からは分からないことが多いでしょう。一方、日本社会のマジョリティー(多数派)は国籍としては日本人で、民族性だけを示す自称がありません。まずこのことを意識してもらう必要があると思います。

 そのうえで、たとえば教育現場では「日本社会にはアイヌがいる」とはっきり民族の名前を出してもらうことが大事かなと。そうでないと、アイヌにルーツがある人は「ここは自分がいていい場所なんだ」という存在承認を感じられなくなってしまいます。名前を出してもらわないとマイノリティー(少数派)は事実上いないことになっちゃうんです。

 もう一つ。「日本人」や「私」とは何かということを客観的に考えてもらってマジョリティーを解体していくことも、アイヌなどマイノリティーを考える手段になります。木村さん(記者)は方言がありますか?

――はい。でも聞きとる分にはいいのですが、ほとんどしゃべれません……

 授業でアイヌ語を使い続ける権利(言語権)は十分でないと話すと、「自分の方言の言語権だって保障されていない」と言われます。そんな時、私は「その通りなので、質問や感想は自分の地域語で書いて」と言います。そうすると、表記法がなくて文字で書けないとか、書けたとしてもイントネーションが分からないとか学生は気付きます。「フォーマルな言葉じゃないから提出物で使えない」という意見も出てきます。でもこれは東京弁以外の地域語に関するスティグマ(偏見による差別)なんですよ。

――自分は多数派だと思っていても、ある枠組みでは少数派になる可能性がある、と?

 そうです。だから、「日本と…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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