アザラシ赤ちゃんに命の危機 24時間見守った1ヶ月間

長富由希子

【動画】水族館「海遊館」で4月に生まれたワモンアザラシの赤ちゃん=大阪市港区、同館提供

 大阪市港区の水族館「海遊館」で、ワモンアザラシのオスの赤ちゃんが、飼育員を親代わりにすくすく育っている。ぐったりした状態で生まれ、一時は命が危ぶまれたが、今は治療で元気に。新型コロナウイルス対策で同館は休館中。「厳しい時代だが、いつか赤ちゃんをみてもらえるよう、大事に育てていく」と飼育員は話す。

 赤ちゃんは4月1日午前2時58分、体長55センチ、体重2・5キロで生まれた。母親は同館の人気者で、姿を模したクッションも販売されている「アラレ」(推定16歳)。父親は「モヤ」(推定13~14歳)だ。

 しかし、出生直後、赤ちゃんはほとんど動かず、ぐったりした様子だった。低体温や低血糖の症状も出た。約10年間、同館のアザラシ担当をしてきた飼育員の竹内慧(さとし)さんは「もしかしたら、助からないかもしれない」と感じた。

 すぐに獣医師や飼育員が治療を始め、24時間つきっきりで見守った。その後、赤ちゃんの体調が安定し、竹内さんは「涙がでるほどうれしかった」という。ただ、回復までに時間がかかったため、親と同じ展示水槽に戻すことが難しくなり、人工哺育に切り替えた。

 赤ちゃんの異変にすぐに対応できるよう、約20人が交代で赤ちゃんを24時間観察している。ワモンアザラシの人工哺育は世界でも珍しく、海遊館でも初めての試みという。竹内さんらは、ゴマフアザラシを人工哺育した同館の過去の記録を調べた。ワモンアザラシの繁殖に成功した他の水族館に、体重の増え方や魚を食べ始めた時期なども教えてもらい、手探りで育ててきた。

 今では、元気いっぱいの赤ちゃん。体重は、出生時の約2倍以上の約5・5キロ(4月30日時点)まで増えた。おなかがすくと「フーン、フーン」と鳴き、海生哺乳類用のミルクをもらって満腹になると、ぐっすり眠る毎日という。

 4月末からは24時間の観察は解除できた。ただ、夜中も含めて3~4時間ごとにミルクをあげる必要があるため、飼育員が泊まり込みで今も世話を続けている。

 赤ちゃんの名前や、一般公開の時期はまだ決まっていない。竹内さんは「ゆくゆくは母のアラレと同じ水槽にいれるのが理想。展示できるようになったら、赤ちゃんにぜひ会いにきてほしい」と話す。(長富由希子)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment