アプリで出会う、光と影 ヘビーユーザーの餅田コシヒカリさんに聞く

 顔はカトパン体はパンパン――。そんなフレーズで始まる自身のユーチューブ番組が、若い女性を中心に人気を集めるお笑い芸人の餅田コシヒカリさん(28)。現在の交際相手とマッチングアプリを通じて出会ったことを、番組で公表しています。7年間で100人以上と出会い、真剣に交際を重ねてきたという餅田さんに、アプリを使った出会いのよい点やハプニングについて聞きました。

 音楽が身近にある家庭に育ちました。父は地元仙台の管弦楽団のトランペット奏者。私も幼い時からピアノを習っていました。高校では合唱の部活一筋で、全国大会にも出場したんです。

 そうした経験から、大好きな舞台に立つ仕事をしたいと、高校卒業後の2013年、都内の俳優専門学校に進みました。朝から晩まで授業を受け、放課後は同級生と劇の稽古。すきま時間には居酒屋のアルバイトを詰め込んでいました。忙しいけれど、いつもそばには同級生やバイト仲間がいて、にぎやかな毎日でした。

「きょうも独りか」

 転機は専門学校を卒業した15年。馬鹿話が好きな私を見てか、専門学校の先生から「芸人が向いているよ」と助言を受けました。その言葉を真に受けて、20歳の時に松竹芸能養成所に入校。当時の相方を見つけ、コンビ活動も始めました。

 それまでと一転し、養成所では週2回程度しか授業がありません。専門学校の時のように大勢でワイワイする機会も少なく、1人の時間が増えました。

 芸人の仕事はほぼゼロで、家賃や生活費を稼ぐため、週6日、アルバイトをしました。それはそれで楽しかったのですが、疲れて帰宅し、ベッドに横たわると、むなしさを感じるんです。「今日も独りか」、と。

 直前に彼氏と別れ、心の支えが欲しかった時期でもありました。といっても出会いは見当たらない。

 ネットでなんとなく「暇つぶし」と検索して見つけたのが、マッチングアプリでした。

 餅田さんはマッチングアプリに可能性を感じながらも、ハプニングも経験したことから、使い方をアドバイスします。

普通の出会いではできないことも

 現在主流の婚活向けではなく、アプリ上で異性とマッチングし電話するだけのもの。最初は不信感もありましたが、次第に色んな人と話せる楽しさも感じました。

 調べると、他にも色んなマッチングアプリがあることを知りました。あるアプリで知り合った同い年の男性とは電話が盛り上がり、後日お会いして交際しました。

 しばらくして別れてしまったのですが、「出会いは探せば見つかる。自分次第」と思えた経験でした。

 それから今の交際相手と出会うまでの約7年間。その時々の彼氏と別れてはアプリを使い、約100人の男性とデートをしてきました。同じ日に朝、昼、晩で別の方と会った時も。その中で約15人と真剣に交際しました。

 元々売れない芸人でしたが、19年ごろからテレビに出演させてもらう機会が徐々に増えてきました。売りは、太っているけど顔がアナウンサーの加藤綾子さん似。その時期もアプリを使っていましたが、「あれ、どこかで見たことあるような」と言われる度、必死にごまかしていました。

 そうした時期を経て、21年春ごろにアプリで出会ったのが現在の彼氏です。アプリ上の顔写真が爽やかで、好印象だったのを覚えています。5~6回のデートを経て告白され、交際することになりました。

 アプリの利点は、そうした顔写真をはじめ、共通の趣味や相手の職業、年収などを確認できることだと思います。私はスタジオジブリの作品が好きなので、同じジブリ好きを中心に探していました。

デート終わりにパチンコ店も

 顔写真の清潔感も大切ですが、年収も重要でした。芸人という仕事柄、安定している方がいい。そうした条件から異性を探すことは、一般的な出会いでは難しいと思います。

 私はユーチューブでもマッチングアプリでの経験を発信しています。反響があるのは20代女性が中心で、関心はあるけれどアプリを始められない人が多いように感じています。

 私と同じく体形が太めだという女性からは「太っているから出会いがない。こんな私でもアプリを使っていいの」という相談が来たこともあります。そうした悩みがある方にこそ勇気を持ってアプリを使って欲しいです。

 アプリ上には数え切れないほどの異性がいます。最低3カ月間でも腰をすえて相手を探すことで、互いに大切に思える方が見つかるはずです。

 もちろん、アプリで出会った男性の中には変わった人もいました。デート終わりにパチンコ屋に連れて行かれて、パチンコを打つ様子をただ見ているように指示してきた男性。タワーマンションに住んでいると言って付いていったのに古アパート住まいだった男性。顔写真が他人のものだった男性――。挙げればキリがありません。

 最新のアプリには通話機能もあります。会うと決める前に、事前に電話するなど、どんな相手か見極めることは大切だと思います。

 私がアプリを使い始めた時期は、今ほど利用者は多くなく、使っていることが恥ずかしいと思われがちでした。私もアプリで出会った交際相手に、「周囲には友人の紹介で出会ったことにしてほしい」と言われたこともあります。

 でも最近はそんな状況も変わってきています。マッチングアプリは、結婚相談所や街コンと同じ、出会う手段の一つに過ぎない。そう思って私も公表を決めました。

 出会い方は人それぞれです。自分に合った方法やペースで素敵な相手と出会って欲しいと思います。

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 もちだ・こしひかり 1994年生まれ。仙台市出身、宮城県内の高校を卒業後に上京。俳優専門学校を経て、松竹芸能タレントスクールへ。松竹芸能所属のお笑いコンビ「駆け抜けて軽トラ」として活動。YouTube上の「駆け抜けて軽トラチャンネル」「餅田コシヒカリチャンネル」で、動画配信をしている。(聞き手・田中紳顕)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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