ウイルスが揺さぶる私たち、変化の契機に 上橋菜穂子氏

 ウイルスは不思議な存在です。

 百年に一度と言われる恐ろしい災厄の只中(ただなか)にある今は厄介なものとしか思えませんが、私たちはウイルスが存在しなければ、この世に生まれてくることすら出来ないのかもしれません。なんと、胎盤形成にウイルスが関与しているそうですから。

 うえはし・なほこ 1962年生まれ。作家、文化人類学者。14年、国際アンデルセン賞作家賞。15年、『鹿の王』で本屋大賞。著書に『精霊の守り人』を始めとする「守り人」シリーズ、『狐笛のかなた』、『獣の奏者』など。

 胎児が父親から受け継ぐ遺伝形質は母体にとっては異物ですから、母親のリンパ球に攻撃されるはずですが、胎盤には特殊な膜があって、胎児に必要な栄養だけを通し、胎児を攻撃するリンパ球の侵入は防ぐ。この膜の形成にヒト内在性レトロウイルス(太古に感染したウイルスが宿主の生殖細胞に入り込み、ゲノムに埋め込まれて子孫に伝わってきたもの)が関わっていると考えられているそうで、だとすれば、私たちはウイルスのお陰で生まれてきたわけです。

 『ウイルスの意味論』というと…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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