クラブ、スナックひしめく中洲の夜 よそものにも優し、もてなし文化

 福岡市の歓楽街の中洲は、午後7時を過ぎると、着飾った女性たちが出勤する。那珂(なか)川と博多川に囲まれた狭い中洲に、クラブやスナック、飲食店約2400軒がひしめく。

 なかでも「ロイヤルボックス」は中洲を代表する高級クラブである。ビル最上階の140坪のワンフロアを借り、約40人のホステスが働く。ママの藤堂和子(76)は19歳のときに母と義姉の店を手伝って以来、この道57年。中洲の良さを「気さく」な点にあるという。

 「銀座は、着ているもんも身につけているもんも違うけん。中洲はそれに比べて田舎っぽかった。でも、そこが良かったんでしょうね」

 高度成長とともに、支店経済の福岡には転勤で単身赴任するサラリーマンが増えた。「お金を払って飲んでもらうのとは別に、心のつながりがありました」。係長や課長で赴任する彼らの家事を手伝い、博多駅で見送る際には早起きしてご飯を炊き、弁当を差し入れる。「『この人、偉くなるな』と思った人は大体偉くなって戻ってきましたよ」

 いまより女性の働く場が多様ではなかった。「親のため、子供のため、きょうだいのため、九州中から働きに来ました」。みな必死だった。

 「ウチにはいまも毎日2~3組は新しいお客様がお見えになります。それをザルからこぼさないよう一生懸命接待するんです」。取材中もひっきりなしに電話がかかる。ゴルフ場を取ってくれ、料理屋を予約して欲しい、ホテルはどこが良いかな……。「私はよろず相談所。まるでJTBのようなことをしてますもの」

 「鞠(まり) 薊(あざみ)」ママの松本鞠絵は「お客様同士をご紹介するのが私たちの仕事のおもしろさ」と言う。「夜の商工会議所」と呼ばれ、名士が集った中洲の高級クラブ「薊」(2004年に閉店)で働いた後、その名を冠した店を開いた。コロナ禍でいったん閉店したが、昨年暮れ再開。「夜の社交場の明かりを消したくなくて」という。

 中洲の接待ビジネスが花開く…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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