コロナ病床「現実はもっと少ないはず」 医師のジレンマ

 新型コロナウイルスの新規感染者数が高止まりを続けている。愛知県では、12月26日夜時点で567人が入院し、うち40人が重症。通常の救急患者への対応ができなくなる状況が迫りつつある。救急治療に携わる大学病院の医師に現場の状況を聞いた。

 「余裕は全くない。現状は逼迫(ひっぱく)していると言わざるを得ない」。名古屋大学病院救急・内科系集中治療部の沼口敦部長はそう言う。

 病院にはベッドだけあればいいのではなく、医療機器がそろい、看護師らがいてようやく患者を診ることができる。昨春以降に業務の整理を進め、感染者に対応できる病床数を増やしてきたが、準備した全ての病床を埋めてしまうわけにはいかないという。

 例えば、進行したがんや、肝臓や心臓の移植など、重い病気の患者らが新型コロナに感染した場合、ほかの病院に治療を任せることができない。「用意した病床をすべて使ってしまうと、対応できなくなる」と沼口さんは言う。

 入院する感染者は軽症から重症まであり、年齢や基礎疾患も様々だ。名古屋市立大学病院救急科の服部友紀教授は「感染者が高齢の場合、看護と介護の両方が必要なケースがある」と話す。

 患者のそばで働く看護師らは、防護服を着て慎重に看護するため、通常の2倍くらいの時間がかかる。さらに、介護などにも時間や人手を割かないといけない。「現場の看護師は明るく振る舞っているが、負担は大きい」と話す。

 「行政機関に『新型コロナ向け』と報告した病床数に比べ、現実的に対応できる病床はどこも少ないはず。『入院患者を受け入れてほしい』という要請や相談を受けても、なかなか応じることができないというジレンマがある」

 感染の拡大防止のため、服部さんは訴える。「年末年始はできるだけ自宅で過ごしてほしい。今、大事なのは一人ひとりが感染しないこと。提供できる医療の量は限られている。さらに拡大すると、通常の救急患者を受け入れられなくなる。看護師の負担もできるだけ減らしてほしい。我々は医療が必要な方に当たり前に医療を提供したい。このままではそれができなくなる」(木村俊介)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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