ズレている国のリスキリング策、日本に必要なスキルは 小島慶子さん

 育休・産休中のリスキリング(学び直し)を「後押しする」とした岸田文雄首相の国会答弁に、多くの批判の声が上がりました。エッセイストの小島慶子さんは「実態と大きく乖離(かいり)している」と指摘しつつ、日本に必要なリスキリングがあると話します。一体どのようなリスキリングでしょうか。

育休中にリスキリング 簡単に言うけれど

 ――岸田首相の答弁は、産休・育休の期間にリスキリングや学位を取ることでキャリアの停滞を最小限にしたり、逆にキャリアアップしたりできるようになる――という自民党の大家敏志議員の質問に対するものでした。このやりとりをどう見ましたか。

 「産休・育休中は暇だろう、という前提に立っているのではないかと感じました。実態からあまりにも乖離していますよね」

 ――ご自身もアナウンサーだった頃、第1子と第2子を出産し、産休と育休を取得されています。

 「第1子を産む前は、積読(つんどく)になっている本を育休中にゆっくり読もうなんて思っていました。でも、甘かった」

 「日中は、赤ちゃんと二人きりで、子どもが寝ている間は家事。でも息子はあまり母乳を飲まず、すぐ起きてしまう。授乳ばかりでほぼ半裸のまま一日を過ごすような状態でした。夜も授乳でろくに眠れません。精神的・肉体的に追い詰められ、産後うつ気味に。この先ずっとこの生命体に振り回されて生きるのかと、絶望を感じました」

 「命に責任を持つ重圧は大きく、親になることへの不安もあった。こんなにも体力を奪われ、精神的にも負荷が高いものだとは思いませんでした」

 ――第2子のときはどうでしたか。

 「産後のホルモンバランスの変化による抑うつ、睡眠不足、仕事復帰の不安に加え、夫との信頼関係にも問題が生じ、不安障害という精神疾患を発症しました。復帰後は、治療と育児と仕事の三つを成り立たせねばならなかった」

 「家族が増えれば、生活のリズムも変わります。産休・育休の間に身体、心、生活の三つの大きな変化に適応しないといけないのです。『休』どころか寝る間もないですよね」

 ――そうした状況への無理解が批判につながったと。

 「多くの親が、子育ての苦労が世の中から顧みられていないというやり切れなさを感じています。世間は子連れに冷たく、公的支援も足りない。だから『育休中にリスキリングできるよね?』なんて簡単に言うなという批判が起きた。たしかにリスキリングの支援は必要ですが、大事なところがずれているのです」

働くのはロボットではなく、人間

 ――どのようなところですか。

 「働く人のことを考えている…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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