タオル姿でスクラム ラグビーW杯合宿地PR

 温泉から上がり、バスタオルを腰に巻いただけの男性が街を走り出す。手にはラグビーボールならぬ湯おけ。いつの間にか同じ姿の仲間が加わり、タックルをかわし、パスをしながら商店街を駆け、駅前でスクラムを組む。ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて大分県別府市が作った動画「NO SIDE」が、じわじわ注目を集めている。

 1月に「YouTube」で配信された2分31秒の動画は、これまで16万回近く視聴された。ラグビーと泉都・別府の魅力を詰め込んだ内容に、「ニヤリと笑える」「相変わらず攻めた内容」「撮るの大変だっただろうな」と様々な反応が寄せられている。

 別府市では一昨年、温泉と本物の遊園地を合体させた「湯(ゆ)~園地(えんち)」計画が、動画から火が付いて実現。今回の仕掛け人の一人で市職員の森修二郎さん(39)は「ネット動画なら必ずいけると確信した」と話す。

 W杯では、大分市でプール予選3試合と準々決勝2試合がある。予選に登場する6チームのうち、別府市は公認キャンプ地として、前回優勝のニュージーランド、準優勝のオーストラリア、ベスト8のウェールズ、カナダなどのチームを迎え入れる。

 現在、市への観光客で最も多いのはアジア圏。W杯を、欧米や豪州からの新たな観光客を増やす好機とみて、別府を世界に発信し、市民のムードも盛り上げようとネット動画に決めた。

 昨年9月からロケ地を探し始め、露天風呂や砂湯、別府駅前など7カ所に絞り込んだ。市W杯推進室では「温泉文化にラグビーを溶かし込む」「裸で温泉街を走り回り、ストーリー性を出す」「ルールやプレーも解説できないか」とアイデアが次々に湧き出た。

 森さんは人集めに走り回り、最終的に高校生の現役選手から70代の男性まで市民200人以上がボランティアで参加。11月下旬の3日間に撮影が行われた。

 大団円を迎えるグラウンドでの撮影は、最終日の朝から6時間以上かかった。最低気温は5度。全員がタオル姿で湯おけを手に踊るクライマックスシーンは、ドローンも使い、撮り直しが15回にも及んだ。

 森さんは「没になったシーンはいくつもあったが、大勢が団結して別府をアピールできたのはすごい」と感無量の表情で振り返る。

 世界最高峰リーグ・スーパーラグビーの日本チーム「サンウルブズ」も、昨年から開幕前の合宿を別府で続ける。グラウンドそばに設けた浴槽に温泉の湯を運び入れ、温水と冷水に交互に入って疲れを取る「交代浴」を準備。細やかな別府ならではの対応と評価された。評判は選手の口コミで広がり、様々なスポーツ合宿先として注目される。

 ラグビーに関わるようになって5年目の森さん。2年前の夏、高さ13メートルのゴールのポールを動かす作業中に胸椎(きょうつい)を圧迫骨折した。強豪チームの選手や多くの観戦客をもてなすW杯本番は「体力勝負」と悟り、以来ジム通いを欠かさない。

 「おもてなしもプレーと同じで、1人でも手を抜けばミスにつながる。選手もお客さんも別府で忘れられない思い出を残せるよう手伝いたい」。ラグビーで大切にされるディシプリン(規律)を重んじる姿は、責任感にあふれている。(加藤勝利)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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