ダム残土置き場に水害の流出土砂 工夫を重ねて挑戦するワインの味は

 長野県田中康夫・元知事による「脱ダム宣言」で建設中止となった後、後任の知事により建設された長野市の浅川ダム。その残土置き場だった場所で、ワイン造りに挑戦している男性がいる。当初はブドウの苗の生育が思わしくなかったが、2019年の千曲川水害の流出土を使い土壌改良を進めたところ、うまくいった。今秋、待ちわびた収穫を迎える。

 「ようやくここまできた」と話すのは、仙台市出身の宋裕光さん(41)。東京のレストランでソムリエとして働いていたが、ワインをつくりたいと09年から2年間オーストラリアに渡り、醸造技術を学んだ。その後、長野県北部や山梨県八ケ岳付近でワイン造りに適した土地を探していた。18年6月ごろ、浅川ダム近くで、ワイン造りをする「地域おこし協力隊員」を募集していると知り、移住を決めた。

 宋さんは、ダム周辺の観光のために長野市が跡地利用を進めていた残土置き場だった土地(約2ヘクタール)でブドウ栽培を開始。19年5月には地域のボランティアら100人と約2万6千本のブドウの苗を植えた。だが生育状況を見て、「この土でおいしいワインはできるのか」と疑問を感じ始めた。

土壌を入れ替える決断

 そのころ、台風19号による千曲川水害が発生した。19年10月13日、大雨で千曲川の堤防が決壊し、同市長沼地区を中心に多くの家や田畑が濁流にのまれた。市は、水害で流れ出た土の活用法を検討、宋さんに「残土置き場に流出土を運び込んで、ブドウづくりに使ってみてはどうか」と提案した。

 千曲川沿いは肥沃(ひよく)…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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