デクノボーになりたかった宮沢賢治 未完の伝記、弟子が見抜いた童心

 「雨ニモマケズ」で始まる宮沢賢治の詩に「ミンナニデクノボートヨバレ」という一節がある。

 「デクノボー」

 漢字をあてると「木偶(でく)の坊」。役に立たない者をののしる時に使う言葉だ。

 この一節の後は、

 ホメラレモセズ

 クニモサレズ

 サウイフモノニ

 ワタシハナリタイ

 賢治から直接教えを受けた山形の農業指導者は、「デクノボー」が師の「人生観」だったとみて、自ら執筆した伝記で指摘している。

 「童心からの延長の先生の人生観でもあったのであろうと推察される」

 この「童心」をめぐって、農業指導者は興味深い賢治の逸話を書いている。

 かいつまむと、こうなる。

「偉い人になぞならなくともいいだも」

 厳格だった賢治の父の政次郎から「お前は大人になったら何になる」と尋ねられたところ、賢治はなかなか答えなかったが、しばらくしてこう笑って言った。

 「うん、夏はそうだなあ。乗…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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