トランス男性が縛られていた「男らしさ」 追い求めた果てに得た自由

 男性――。そう一口で言ってみても、その存在は多様だ。男性として生まれ、親や社会から暗黙のうちに「男らしさ」を求められて育つ。そんなあり方とは異なる人生をたどる人たちもいる。

 杉山文野さん(42)。新宿・歌舞伎町のとんかつ屋の次女として生を受けた。幼稚園の入園式でスカートをはかされて泣いた。七五三の着物にも強く抵抗した。「かわいい娘さんですね」と声をかけられ、思わず「いいえ」と言い返したこともある。

 女子大の付属校に通い、小学校から高校までの12年間、女子の中で過ごした。「元気でボーイッシュな女の子」を演じたが、例えてみれば「女体の着ぐるみ」を着せられ、「女装」を強いられているような苦痛と隣り合わせの毎日だった。

 生理がくる度に、自分が女の体であることを突きつけられる。初めての彼女ができて抱き合ってみても、男性器のない体を恥じる自分がいて、服を脱ぐことができない。自分を殺して生きるか、本当に死んでしまうか。二者択一の人生だと思えて、苦しかった。

 埼玉医科大の倫理委員会が性別適合手術を承認――。1998年、高校2年の時、ニュースで「性同一性障害」のことを知る。生まれて初めて、自分の存在を肯定できるような気がした。早大から院へ進み、ジェンダー論を学んだ。

 2009年、28歳になる年…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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