ハウス浸水…悲痛 栃木で川氾濫(日本農業新聞)

 台風19号で栃木県では永野川や秋山川の堤防が決壊し、周辺地域を濁流が襲った。栃木市ではニラのハウスが完全に破壊され、佐野市ではイチゴハウスが水没。いずれの農家も営農再開の見通しが立たない状況だ。

 栃木市大平町。ハウス40アールでニラを栽培する椎名博さん(54)は13日午前、畑を見て悲しくなった。「辺り一帯が池みたい」。同日夕方に水が引くと、全壊したハウスの骨組みや流木、土砂が散乱しているのがあらわになり、地面にはニラが横倒しの状態だった。

 台風前には、幅5メートル、高さ2メートル余り、長さ50メートルのハウス13棟が建っていた。何度も台風を経験し、水に漬かることもあったが「(13日に)目撃した風景は今まで見たことのないものだった」(椎名さん)。

 肥料を入れ、ほぼ毎年土壌診断して土づくりを進め、ようやく納得いく土壌になりつつあった。ニラは町内の農家らと「大平の元気ニラ」というブランドで生産し、順調に売り上げていただけに、ショックも大きい。椎名さんは「今年の収穫は無理。来年の作付けにも影響が出そうだ」と肩を落とす。

 佐野市船津川町では、水が1日半引かなかった。20アールに12連棟のハウスを建て、イチゴ「とちおとめ」を栽培する岡田憲一さん(63)は18日、後片付けに追われていた。

 ハウスには泥まみれの苗や発泡スチロールの容器が散乱。「間もなく農家仲間が手伝いに駆け付けてくれる予定だが、いつになったら終わるのか分からない」と話す。

いまだ水の中 再開見通せず 宮城県大崎市

 宮城県大崎市鹿島台地区では、台風19号の大雨で付近を流れる吉田川の堤防が決壊した。被災から6日がたつ18日も集落の大部分が水に漬かったままで、片付けに取りかかれていない住民も多い。一部の農機具は高台に避難させ水没を免れたが、営農再開の見通しは立たない。住民は一刻も早い排水を望んでいる。

 排水作業が進む18日現在も100戸以上の住宅が浸水しており、ボートでしか近づけない場所も多い。「ボートに乗って小屋の片付けをしてきた」と話すのは農事組合法人なかしだファームの代表、早坂幸夫さん(62)。自宅や畜舎などが現在でも浸水したままだ。

 米の収穫は終えていたが、約20ヘクタールの大豆の収穫と麦の種まきが残っていた。農地は水没したままで、作業に取りかかれる見通しは立っていない。さらに付近の事業所から重油が流出しており「水が引けても表土を入れ替える必要があるかもしれない」と不安を募らせる。

 現在、吉田川の土手にはトラクターなど約50台の農機具が置かれている。以前の水害の教訓から農家らが前もって避難させていたものだ。一方、乾燥機など水没した農機も多いとみられ、JA新みやぎの齋藤秀政理事は「営農再開には金銭的な負担が大きい。高齢化もあり、このままでは被災を機に離農を意識する人が出そうだ」と話す。

日本農業新聞

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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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