ハッチの摩耗・割れた窓から大量の海水 カズワン沈没までの経緯

有料記事

角詠之 古城博隆、佐野楓 平岡春人

 北海道・知床半島沖で4月、観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没して20人が死亡し、6人が行方不明になった事故で、原因を調査している国の運輸安全委員会が15日、浸水から沈没に至る経緯や航行記録についての報告書を公表した。ふたに不具合があった船首部分のハッチから浸水し、機関室に海水が入ってエンジンが停止。外れたハッチのふたが当たって客室の窓ガラスが割れ、大量の海水が流入して沈没に至ったと推定した。

 船底への出入り口であるカズワンのハッチは約50センチ四方で、ふたの四隅を留め具で密閉する構造だった。運輸安全委の調査で、四つのうち二つの留め具に摩耗が確認され、十分に密閉できていなかった可能性がある。当時、波が高かったことから、密閉されていないハッチが船の揺れで開いたと推定されるという。「隔壁」と呼ばれる船底の3カ所の壁に穴があったことも沈没の要因と判断した。船首区画と倉庫区画、エンジンがある機関室と、かじに関連する機械がある舵機(だき)室を分けていたが、いずれも穴が開いており、ハッチから入った海水が穴を通じて広がったという。

 また、乗客のGPS機能がついた携帯電話の位置情報を解析し、知床岬で折り返した復路で浸水が広がったと認定した。知床岬では波の高さ(推定)は1メートル以上だったが、沈没したカシュニの滝付近では2メートル以上に達していた。船体はもともと波の穏やかな水域での航行を想定しており、「波が1メートルを超えると航行困難になる構造」(運輸安全委の担当者)で、「冷静な判断ができれば、戻れば戻るほど波が大きくなるとわかる。知床岬付近の避難港を使うべきだった」としている。

 報告書では、事故につながった要因として、▽船体構造▽出航の可否判断、運航継続の判断に問題▽運航会社が安全管理規程を順守していなかった▽監査・検査の実効性に問題――などと指摘した。救命設備・通信設備の不備や、捜索・救助態勢に課題があったことについても言及した。

 報告書の公表に合わせ、運輸安全委は国土交通相に対し、小型旅客船のハッチが簡単に開かないか緊急点検することや、避難港の活用法について再確認することを求めた。船底の隔壁を水を通さない構造にするかどうかは航行区域に応じて省令で規定され、カズワンは義務ではなかったが、「小型旅客船の隔壁について水密化の検討」も求めた。

乗客と親族との携帯電話の通話内容も明らかに

 乗客と親族との携帯電話の通…

この記事は有料記事です。残り3021文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment