ハルキストの「聖地」消える? デビュー作の公園のサルのオリは

森直由

 作家・村上春樹さん(73)のデビュー作「風の歌を聴け」に出てくる「猿の檻(おり)のある公園」のモデルとされる打出公園(兵庫県芦屋市)のサルのオリについて、市が撤去を検討している。公園のリニューアルに伴う措置で、工事は来年6月ごろに始まる予定だが、早くも各方面から賛否の声が上がっている。

 公園は阪神打出駅の近くにあり、住民から「おサル公園」と呼ばれてきた。市によると、1959年に芦屋動物愛護協会がタイワンザル7匹とリスなどを寄贈。89年にはクジャクやシマリスなど8種類がいて、動物園に代わる施設として住民らに親しまれてきた。

 だが、7匹いたサルは80年に2匹になり、2003年に最後のサルが死んだ。10年3月末には、すべての動物がいなくなった。

 鳥小屋は撤去されたが、サルのオリ(縦約4メートル、横約5メートル)だけは、「有名な小説の舞台でもあり、町おこしのイベントなどに使いたい」という地元の打出商店会などの要望で残された。10年秋、空っぽだったオリに、サルのイラストパネルを設置。パネルにはブランコに乗ったサルが、村上さんの「海辺のカフカ」を読む絵が描かれている。村上さんの熱烈なファンも訪れる「聖地」になった。

 市は2023年度に公園をリニューアルする方針を決め、昨年11月に地元住民らの意見を聞く会議を開催。「オリを撤去してほしい」という意見が多くを占めたため、検討することにしたという。

 市の担当者は「公園を広く活用するには、中心にあるオリの撤去が必要。フェンスの一部を再利用するなど、記録として残すこともこれから考えたい」などと説明する。公園は23年6~7月ごろに工事のために閉鎖する見通し。24年3月までに終える予定だという。

 打出商店会の元会長で、サルのイラストパネルのお披露目セレモニーであいさつもした金田一(かなだはじめ)さん(70)は「賛否両論あると思うが、公園の将来を考えたらオリの撤去はやむを得ないのではないか」という。

 地域史を調べている西宮芦屋研究所の小西巧治さん(73)は「地元の方々が守ってきたおかげで、オリは国内外に発信され、芦屋にとって貴重な文化遺産になった。撤去されれば、大きな損失になるのではないか」と話している。(森直由)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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